コロナによる厳戒態勢の中尋ねてきた父

コロナの流行によりいろいろな対策が取られた。

面会謝絶。

病室の入り口にはアルコール消毒液。

入院している階内を動く場合はマスクはいらないが出るときはマスクをする。(リハビリ室が2階だったので、行くときは私は布マスクを使った。)

看護師もアルコール消毒液を腰につけて常に消毒しながら世話をするようになった。

病室内も定期的に消毒された。

コロナがどうゆうものかわかっていなかったので、考えられることすべてを行う体制が取られた。


そんな中、父がひょっこり病室に尋ねた来た。手術の日以来会えてなかった。

「え!よく通してくれたね!」と驚く私に、父は「この書類が解らないから見てもらいに来たと言ったら通してくれた」と言って一通の封筒を差し出した。

受け取って確認してみると『特定定額給付金』の申請用紙。そういえば政府が一人

10万円配ると言ってたっけ、その通知なのかと思い中を確認すると、申請書と返信用の封筒が出てきた。申請書を見ながら、「えっと、通帳の口座番号に印鑑いるのね。家に預かってるから娘に預けて申請してもらえばいいか」とぶつぶつ言ってたら、父が「それはそうと体は大丈夫なのか?」と聞く。「うん、トイレは自分で行けるようになったし、歩行器で歩行練習してるよ。痛みもないから大丈夫だよ、リハビリ頑張って絶対歩けるようになるからね」と答えた。

父の心配はもっともなことで、母も75歳超えたころに同じところを骨折して母の場合人工関節が使えずそれ以来家でも伝い歩きか押し車を使用。一人で外出が出来なくなっていたから。

「そうか、それならいい。大事にな」と言って父は病室を出て行った。


父が帰った後、さて、この後どうするか。と私は思った。娘に渡さないといけないし家にうちの分も届いているはずだよね。確か今日は娘が洗濯物を取り換えに来る日か、看護師に頼むしかないか。と、私はコールして看護師に話をした。

看護師は散々渋った。そりゃそうだろうな、でもあきらめるわけにはいかない。

「電話でダメなんですか」と言う看護師に、「見たことの無い新しい書類なので会って説明しないと解らないんです。お願いします」と頼み込んだ。看護師は「仕方ありませんね、入り口のところで少しだけですよ、娘さんが来たら車いすで迎えに来ますから、連絡しておいてください」と渋々折れてくれた。私は「ありがとうございます」とお礼を言って、すぐ娘にメールを打った。


夕方娘が来たからと看護師が迎えに来た。入口で久しぶりに会った。

「久しぶり、元気だった」と娘に話しかけると、「うんなんとかやってるよ」と娘が返事した。

「これなんだけど、うちにも来ていると思う。名前、住所を確認して振込口座を指定しないといけないの。それを書いてだすと、指定口座に振り込まれるそうよ。」と言って、私は書類を娘に渡した。娘は「じいちゃんの通帳はあるし、認印もあったよね。家のも見てみるそっちも書いて出しておくから」と言い「じいちゃん、これわざわざ持ってきたの?」と聞くので「そうなのよビックリした!でも元気そうでよかったわ。なかなか会えないから」と私が言うと「そうね、私もお母さんの顔見て安心した」と娘は言いそろそろと看護師に言葉を掛けられ、「それじゃまたね、メールや電話する」と娘は言い「うん、こちらからもリハビリの進行状況とかメールするよ、元気でね」と言葉を交わし娘は返って行った。


今ならテレビ電話という方法があるのだろうが、その当時は二人ともガラケーだったので、会えてよかったと思う。




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