手術当日

朝から絶食と聞いていたので、私は起きてからもぼんやりとしていた。

やることもなく刺激もない。こんなにぼーっとなったのはいつ振りかと後からは思ったが。

係の人が顔を拭きに来てくれた。

そして看護師の説明があった。「昼1時から手術です。全身麻酔で行います。出血によっては輸血もあり得ますが、輸血したことありますか?」と聞かれ、「あります」と私は答えた。「その時具合が悪くなったとかは?」と看護師から聞かれたが「いいえありません」と私は答えた。


それから昼までは何もなく昼過ぎ娘と父がやってきた。

娘が「輸血の承諾書もサインしたから」と言うので、「うん、看護師から説明があった。出血の次第ではするかもしれないって」と私は言い、その後は雑談をしていた。


「そろそろ準備に入りますね」と看護師が来てベットを押して手術室の前まで下りた。そこからストレチャーに移動して・・・・麻酔がかかったので私の記憶はここで途切れた。記憶が戻ったのは手術が終わって病室に帰ってしばらくたってからだった。

目が覚めても麻酔のせいかぼーっとしている。娘が「手術は成功したそうよ。輸血もしなくてよかったって」と言った。「そうなのね」私はぼーっとしたまま答えた。

看護師がやってきて「手術は成功しました。後は療養することになります。」と言った。しばらくすると父が帰り、娘も「必要なものは持ってきたし、何かあったらメールして届けるから」と言い荷物を整理して帰って行った。


看護師が「今日は手術したばかりなので、色々な点滴をしないといけないし、心点図などを取るために体に線をつないでいるから抜かないように注意してください。手術では右太ももを切って人工関節を入れました」と看護師の説明があった。左側には少しは体を傾けられたので、楽飲みを使ってどうにか自分で飲むことはできたが、右には傾けることも出来なかった。


夕食が運ばれてきたが、私は起きることも出来ない。少しベットの頭を上げた係の人が「ちょっと待っててね」と言ってご飯茶碗を持って出て行った。しばらくして戻ってきて「これなら食べれるでしょう。手づかみでいいから少しでも食べてね」と手渡してくれたのはラップおにぎり。私が起きれないのが解って作ってきてくれたらしい。「ありがとうございます」と私は言って受け取った。数日まともに食べていなかった私にとって、そのおにぎりはとても美味しかった。他のものも少しは食べたが起きれない状態での食事は難しい。しばらくすると係の人が膳を下げに来た。


それからは時々看護師が見に来る程度。静かで、私は痛みは無くなったが全く動けない。本当に回復できるんだろうか?不安が募る。電気が消され、薄暗くなると点滴のせいかそのうちに眠ってしまった。





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