右大腿骨頚部骨折

それから10日ほど経ち、私は家の中で松葉杖をつかず伝い歩きをするようになっていた。ところがある日の夜暗くなった廊下でつまずき尻餅をついてしまった。

バッキ!!ものすごい音がしたと後から娘に聞いた。そして私は全く動けなくなってしまった。

娘に松葉杖を持ってきてもらい手を貸してもらってどうにか起き上がったのだが、右腰にひどい痛みを感じた。娘が「救急車を呼んで病院へ行った方がいいんじゃない」と言ったが、近所に知られたくなかったので、「明日行くよ。痛みもこらえられないほどではないし」と言うと。娘は「解ったよ。一人じゃいけないから明日休み取るから」と言ってくれた。

その夜はどうにか痛みをこらえながら眠り、翌朝朝食の後、娘がパソコンを持ってきた。「介護タクシーがあるからそれを使って病院に行こう。玄関の段差降りれないでしょ」という。私も画面を見たがそれしかないと思い用意をして介護タクシーを呼んだ。

介護タクシーの運転手に玄関が降りられないと言うと、車いすを持ってきて「座ってください」と言った。私は松葉杖を娘に渡して車いすに座った。「シッカリつかまっていてくださいよ」と運転手は言い、無理やり車いすを引いて段差を落りた。

「痛い!!!」車いすが段を降りるたび激痛が走る。声を出さないのが精一杯。ライトバンタイプの車の後部に車いすは載せられ固定されて娘が助手席に乗り出発した。

山下外科の駐車場は地下でそこに降りるときも衝撃がきつくて泣きそうになった。

駐車場に着くと運転手は車いすごと私を降ろしそのままエレベーターで診察室へと向かった。

エレベーターが着いて診察室の方に向かうと「どうされました!!」と慌てて看護師が駆け寄ってきた。娘が「つまづいて尻餅をついて動けないんです。右腰が痛いと言っています」と説明した。

看護師は「とにかくうちの車いすに移動してもらいましょうと」言い、人を呼んだ。車いすを押して数人の看護師がやって来て、私を病院の車いすに移動させた。

医者に状況を説明した看護師が戻ってきて「右腰のレントゲンを撮ります」と言いレントゲン室に車いすで運ばれた。レントゲン室のベットが下げられ数人がかりで私をベットに寝かせレントゲンが数枚撮られた。その後はストレチャーに寝かされて待合室の空いたスペースに寝かされた。

しばらくして娘が診察室に呼ばれた。そして娘と一緒に戻ってきて医者が「右大腿骨頚部骨折みぎだいたいこつけいぶこっせつで手術と入院が必要です。近くの椿ヶ丘総合病院を紹介しますから。手術すれば痛みは止まりますよ」と言った。椿ヶ丘つばきがおか総合病院は父母もお世話になったので安心できると思った。

受付で医者が電話している声がかすかに聞こえた。娘に後で聞いたのだが私は「痛い痛い」と繰り返し呟いていたらしい。娘は治療費の支払や、松葉杖の返却方法を聞くなどいろいろと気を配っていたようだ。


しばらくして救急車が到着。私は救急車のストレチャーに移動させられ、救急車に載せられ、椿ヶ丘総合病院へと向かった。


大腿骨頸部は大腿骨の先端にあって骨盤に接し足を動かす大事な役目をしている股関節と言われている部分です。ここを骨折した場合の治療法はいろいろありますが、私の場合は折れたところを取りのぞき人工関節に置き換える人工骨頭置換術を受けなてはいけないとの診断でした。そこで施設の整った総合病院に搬送されました。

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