第29話 ねこ店長の喫茶店
からんからんと扉についているベルが鳴り、須崎は出入り口に目を向けた。
「いらっしゃいませ。おや、みなさんお揃いでお越しとは」
須崎が見つめる先にいたのは、治部良川、竹下、高木、大吉、愛である。
「相変わらず客のいねえ店だな」と治部良川が言い、
「すっかりご無沙汰しておりましてすみません」と竹下が頭を下げ、
「兄貴、久々っす!」と高木がはしゃぎ、
「ここでタバコ吸うと美味いんだよ」と大吉がタバコの箱を取り出し、
「須崎さん、お久しぶりです」と愛が言った。
「お好きなお席へどうぞ」
須崎は笑顔で五人を店の中へと促す。一つのテーブルを囲うように五人で座ると、須崎は水を運んだ。
「ナポリタンくれ。竹下、おめえは?」と治部良川が注文する。
「では私はミックスサンドを。大吉くんいかがしますか」
「冷コー」
「じゃあ俺は、チョコレートパフェ!」
「私はクリームソーダがいいな」
「かしこまりました」
須崎は注文を書き付けると奥へ引っ込んだ。注文された品を運んでいくと、五人は各々のこの一ヶ月何をしていたのか話に花を咲かせているところだった。
「お待たせいたしました」
そう言って須崎が料理をテーブルへと置けば、皆がこちらを振り返る。
「おぉ」
「待ってました」
そんな声を聞きながら、注文した品々に舌鼓を打つ常連客たち。
「やっぱこの店のチョコパフェうめえっすね」
「私はクリームソーダが大好き。あれ、大吉さん、タバコもう吸わないんですか?」
「一日一本にした」
「おや、それはいい心掛けですね。ね、治部良川さん」
「ああ、大吉は吸いすぎだったからな」
「兄貴、俺と一緒に百歳まで生きましょうや!」
「お前と一生一緒にいる気はないで」
「兄貴、冷たい!」
嘘泣きする高木を気に止めるものは誰もいない。
須崎は楽しそうな常連客の様子を見て、目を細める。
ひとしきり盛り上がった後、彼らは示し合わせたかのように立ち上がり、帰り支度を始めた。
会計を済ませた五人を須崎は頭を下げて見送る。
「どうもありがとうございました」
美味かった、また来るよ、など笑顔で一声かけながら五人は店を去って行く。
からんからんと音がして扉が開く。そして閉まる。
店内には静けさが戻り、停滞した空気が漂っていた。
+++
まだ続きます。
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