リバース・バース。
透々実生
リバース・バース。
……おや、お客さんですか。
いらっしゃいませ。此処は『リバース・バース』。貴方が44,986人目のお客様です。
……懐かしい響きの言葉だな、と? 何のことかよく分かりませんが、良いでしょう。
それはそうと、此処が何処なのか、まずは説明が必要ですね。
此処は『リバース・バース』。メタバースのダークウェブ、
店のネーミングがそのまま、ですか? 申し訳ございません。私、そう言ったセンスがない者でして。ご容赦願えればと思います。
さて、此処には表の世界に出ていない本――世に出ていない名作も迷作も数多く取り揃えています。まあ、名作と言うのは得てして出版社が発掘して表の世界に持って行ってしまうので、そうした作品は少ないのですが。残念な事です。私も腐っても陳腐な本屋ですから、チープでない名作をわんさか置いて繁盛させたいのです。
でも、言ってはおきましたからね。変な作品に当たっても怒らないで下さいよ。
それで、こんな奇天烈な本屋に貴方がいらしたのは、他でもない貴方が、まだ見ぬ物語を読みたいと願っているからです。そう言う人しか、此の場所に来る事は出来ません。
しかも1日に1人しか来る事は出来ません。だから本日――2023年3月1日については貴方の貸切です。
お代は、一切頂きません。私はそうした社会の摂理から外れた存在ですから……。
……私の正体ですか?
知らない方が良いと思いますよ。
嗚呼。それで思い出しました。名乗っていませんでしたね。
申し遅れました。私は、
下の名前ではあまり呼ばないで欲しいです。嫌いなんですよ、版蔵。
まあまあ。私の退屈な話を聞いても何ですから、どうぞお好きな本をお取り下さい。茶も茶請けも用意できませんが、本だけなら沢山御座いますから。
貴方の気に入るお話が御座いますよう、願っております。
KAC20232のお話に続く。
リバース・バース。 透々実生 @skt_crt
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