第38話

 ある冬、ウルズの王、コンホヴァルのもとに慌てた様子の使者が訪れる。使者によれば鳥の大群が作物を食い荒らし、国民に被害を与えているという。


 王は戦士たちを率いて鳥を追い払いに出向く。王の馬車の御者は妹のデヒテネが務める。鳥たちは戦士たちの投げる石を避け、二十羽ずつ、九つの群れに分かれて戦士たちを惑わす。


 群れからはぐれた三羽の鳥を追い、王とデヒテネは妖精の丘へと迷い込んだ。鳥を追ううちに日が暮れてしまい、雪も降り始める。


 困窮した王は一夜の宿を林の中の一軒家に求めた。一軒家に住む若い男女は快く王を迎え入れ、豪華な食事でもてなす。


 深夜、王が眠りにつくと、デヒテネはその家の妻に赤ん坊が生まれると知らされ、納屋に手伝いに行く。


 赤ん坊は無事に生まれるが、夜が明けると家も夫妻も消え、赤ん坊だけが残される。デヒテネは赤ん坊を連れ帰り、我が子のように愛し、育てるが、赤ん坊は病気になって死んでしまう。


 哀れなほどに死を嘆くデヒテネに召使いが飲み物を差し出すと、デヒテネが飲む前に小さな虫が入り込む。


 その夜、デヒテネの夢に太陽神が現れる。


「デヒテネよ、お前を妖精の丘に連れ出し、一晩寝かせたのは私だ。お前が愛し、我が子のように育てたのは私の子なのだ。あの子は死に、今またお前の中で新しい命となった。その子にはシェダンタの名を与えよう」


 父親のわからない子を身ごもった妹を心配し、コンホヴァル王はスアルティウと結婚させる。婚礼の前に月が満ち、デヒテネは男の子を産み、太陽神の言葉に従ってシェダンタと名付ける。


 多くの戦士や知恵あるものが男の子の里親になり、知恵と勇気ある若者に育てようと名乗り出る。しかし、王は子供が成長するまでもう一人の妹、フィンクーンに預けると決めた。


 それは王に仕えるドルイドがシェダンタの未来をこう予言したからだ。


「誰もがこの子の強さと美しさを讃えるだろう。この子のなす事はみなが後世に語り継ぐ。あらゆる邪悪を滅ぼし、人々を守り、全ての戦争を終結させるだろう。その短い生涯のうちに」

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