第5話

 マラソン大会が近づく頃に新しい友達ができた。

 僕が走っていると、一緒に走ろうと言ってきた人がいる。その人は大学生のマラソンの選手だった。

 君のペースでいいよ。と言いながら僕の隣を走ってきた。お互い走ることの楽しさを語り合った。笑いながら走ることの楽しさを知った。

 3日に1度くらいそうやって走った。僕が「両親が格好いい」と言うと、「うらやましい」と、言ってくれた。

 年齢が離れていても、不思議なものですぐに仲良しになった。親友みたいな優しい気持ちになった。

 何度もテレビに映ったことがある人らしいが自慢することは一度もなかった。

 大学生が口にした言葉で好きなものがある。それは「走ることの楽しさは一緒に走ることだよ。競い合うことなんて、くだらないことさ」である。

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