第3話

 マラソン大会から帰宅した夜から走り始めた。

 でも暗い道を走ると人の姿は見えず、幽霊が出るんじゃないかと怖くなった。来年のマラソン大会まで1年間走るつもりだけれども、こんなに怖い道は走れないと弱気になった。

 暗闇のマラソンから帰宅して、お風呂の中で思いついたことがある。普段、学校から帰った時は、まだ明るいから、その時にマラソンをしよう。これは名案だった。

 雨や風の日はあったけれど、幽霊よりはマシだからと走り続けた。

 走っている途中で友達に会うこともあった。彼らは近寄って来て一緒に遊ぼうよと誘ってくれたりしたけれど、マラソン優先だからとやんわりと断った。

 冗談好きの友達は僕の腕を掴んだりして走らせないようにしてきたこともあった。僕は対策のために、友達の姿をちらっとでも見たら走るルートを変えて出会わないようにしていたのだ。

「がんばれ!」

 友達に見られまいとルートを変えた瞬間、僕に気付いた友達が言ってきた。

 たぶん、ふざけて言ったんだと思う。マラソン大会の親のように。

 僕は生まれて初めてマラソンを応援された。応援される者の気持ち、初めて知った。

 心の中に見たこともない綺麗な花がたくさん咲いたようだった。

 なんだか少し泣きそうになった。

 涙目がばれないように友達に挨拶の手を上げて、止まらずに走り続けた。



 休日の日は明るい時間がたくさんあるので、走る距離も長く取ることができた。

 走っているときはいつも、お店で働く両親のことを考えていた。両親はいつも格好いいから、楽しくなるし、走る力が湧いてきた。

 何km走ったのか調べたことはない。楽しいからいくらでも走れた。

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