第2話

 毎年2月に行なわれるマラソン大会の日。今年は暖かかった。

 小学1年生から6年生まで約500人いる学校だ。5年生は100人以上いた。マラソン大会は各学年ごとに開催された。

 沿道には子供たちの親や親戚の人、それに近所の人が並んで応援している。

 僕の両親は応援に来てくれたことはない。平日の昼間にお店を閉めるわけにもいかないからだ。

 もともと足が遅い僕が両親の応援を受けないのだから、毎年のマラソン大会の順位は後ろの方だった。

 今年もやはり後ろの方の順位だった。

 同級生たちはそれぞれの親に応援されて走り、ゴールしてからは褒められていた。大きな声で「偉いぞ」とか「頑張ったなあ」とか話していた。大人たちは嬉しそうにしていた。

 僕は肉屋を継いで両親を助けることはできないけれど、もしかして上位の順位でマラソンのゴールができたなら、両親を喜ばせることができるのかもしれない。

 不意に歓声が上がった。どうやら6年生のトップ集団がゴールに近づいているらしい。

 トップを競い合うのは3人だった。大人のような背格好をした3人は、顔を歪ませながらゴールテープに飛び込んだ。

 僕はあのように順位を上げるために頑張って走ることなんかできないだろう。ただ両親の喜ぶ顔を見れるなら僕は速く走りたい。

 応援されるから走るんじゃない、応援するために走りたい。

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