3-11

「ではエルキ発生器の方から始めましょう。手伝ってもらってもいいですか」


 シオリカの言葉にゼノがうなずく。


「ああ、もちろんだ。俺たちはそのためにいるんだ。指示してくれ」


「じゃあまず、これを組み立てます」


 そう言ってシオリカがテーブルに持ち上げたのは自分が背負ってきた麻布包みのうちのひとつ。開くと中から複雑な形状をした金属片がいくつもガチャガチャという音とともに姿を現した。


「なんだよ、この舟釘のお化けみたいなのとか。これ全部、鉄でできて……」


 バルタがそのひとつを摘み上げ、首を傾けて呟く。


「……にしては軽いな」


 その指摘にシオリカは満足げにうなずいた。


「鉄によく似てますが違います。この金属はスチレといいます。遺跡から多く出土する古代人が開発した人工の鉱物です。どうやら鉄に煤のような物質を調合しているみたいで、それにより非常に強度が高くなり、錆びにくく、しかも軽いという特徴があります。おそらく古代人は用途に応じて自然鉱石に様々な物質を配合することにより、強度、重量、融点などを……」


「い、いや、もういいわ。あんたが詳しいことはよく分かった。けど、それより早く組み立てようぜ」


 バルタが落ち着けと言わんばかりにシオリカに向けて両手をかざした。

 その後ろでヨシアもうんうんと激しく同意している。

 しまった。

 いつもの悪いくせだ。

 シオリカは途端に恥ずかしくなり、赤くなった顔をうつむかせた。


「そ、そうですね。ではまずこれとこれをテーブルにこう載せて、この角度で動かないように支えててもらえますか」


「ああ、分かった」


 バルタとヨシアがテーブルに押さえつけた部品にはいくつかネジ山が切られていて、シオリカはそこにボルトを差し込み工具で締めていく。

 そして丸い台座部分が出来上がると、さらに部品を次々と取り付け、やはり大小様々なボルトでしっかりと固定した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る