千年の縁
『
千年の昔、神無月のある夜、その霊峰は、
千年の後、
長く行方の知れなかった、
その『首』は、ある巫女の一族の身体に、代々封じられていた。10年前、天災により、その一族は、全滅の憂き目を見た。一族最後の巫女、あまねは、死の間際、自らの内に封じた『首』ごと、ある少女へと憑依した。
その時、千年の時を経て、『首』の在りかが追手の術者に感知されたのだった。
見出された、身の内に『首』を封じる少女は、
追手の術者は、どのような手段を用いてでも、ここで
術者は、武人たちの目を盗み、『首』の宿主を、茨木の元へ送り込んだ。茨木が、『首』を開放すれば、解き放たれた酒呑童子の奔放な魂は、必ず隠遁に耐えられずに暴れ出し、彼らの居所はおのずと明らかになるであろう。
しかし、『首』の宿主の意識が眠っている間、その身体は、常にあまねによって守られていた。茨木童子との邂逅の夜、あまねは、酒呑の『首』を茨木童子から隠しきり、やがて宿主の身体は、無傷のまま、帰還した。
結界の力が弱まる新月と満月の夜のたび、術者は宿主の身体を、茨木童子の元へ送り込み続け、無言の攻防が続けられた。
しかしある日、術者のその試みは唐突に終わりを迎える。
禁術は露見し、術者は、
こうして、あまねがシホウへ送られる日々は終わりを告げた。
*
「私が、あなたの正体に気がついたのは、スーパームーンの夜、あなたが2度目の結界破りを行い、それを追手に感知された時のことでした。あの時の私たちは、紙一重で追手の手をかすめ、結界へ戻っていたのです。彼らはその翌日、この身体の持ち主に、彼らの正体と、その使命を明かしました。私はそれを、この身体の中で、聞いていました」
私は、蒼白になり黙り込むクサブキさんを見つめながら、静かに言葉をつなぐ。
「禁術は、露見しました。もう、術により私がここへ送られることは、ありません。今日、私は、これまでとは全く違うやり方で、この場所に来ました。この身体の持ち主の魂を眠らせ、自分の足で歩いて、この場所へ来たのです」
私は、クサブキさんの、美しい瞳を見つめる。
「クサブキさん。私は、あなたにお別れを言うために、今日、あの門をくぐりました。私は、酒呑童子の『首』を封じるためだけに生を受け、そして、滅んでいく存在なのです。……でも、あなたと再び、お逢いした時、その道を選ぶことが、私には、できなかった」
私は、目を閉じる。
「私は、あなたの妻となり、ここに留まり、共に在りたい。けれど、この身体は、私だけのものではありません。もし、私がここに留まり、彼らの元へこの身体を返さなければ、必ず、追手たちは、この身体の足跡を追い、私とあなたを
目を開いた私の前には、平静な表情に戻ったクサブキさんがいた。
私たちは、ただまっすぐに向かい合う。
そして、私は、問いかける。
「それでも、あなたは、私を、あなたの妻にして、くださいますか」
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