第49話 凶弾
「二対一じゃ。もはや観念してその者を解放せい!」
弥助は鬼八に語りかけながら、小声でお涼に告げた。
「火薬の臭いじゃ。用心なされい」
鬼八は老人をグイッと押し出しながら、苦々しげに呟いた。
「けっ、ばれてやがる。使えねぇ奴等だな」
よろけて地べたに手をついた老人の背中に、鬼八は音もなく切りつけた。
血飛沫が夜霧のように飛び散る。
「お、おとう!!」
小屋の影から老人の息子とおぼしき若者が火縄銃を手に飛び出した。
「いかん、戻れ!!」
弥助の忠告もむなしく、鬼八の小刀は若者の喉をも無惨に切り裂いていく。
「鬼八ぃぃ!!」
思わずお涼は怒りに任せて鬼八に飛びかかっていた。
「荒ぶってはいかん!」
弥助がお涼の背中に声を放ったその時、一発の銃声が暗い森を揺るがした。
「グフッ」
腹を押さえ木から落ちる弥助を見てお涼は我に返った。
「弥助殿!?」
老人と若者の血の臭いが、良すぎる弥助の嗅覚を阻害した。
若者の仕込んでいた火縄銃を奪った鬼八は弥助に向けてこれを放った。
鬼八に飛びかからんと距離を詰めていたお涼は、下草の中にすっくと立ち上がる。
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