第48話 弥助の追跡

慧眼けいがん※の藤二』

『地獄耳の義兵』

と並んで真田三勇士に数えられるこの男、

通り名を『ヒグマの弥助やすけ』と言った。


 その大きな体躯もさることながら、犬よりも鼻の利くクマさながらに弥助は嗅覚が飛び抜けていた。


 一度嗅いだ鬼八の臭いを弥助は決して忘れない。

 真っ暗な森の中、糸をたどるように迷いなく弥助は鬼八を追い詰める。


「ムッ」

 黙々と闇夜の森を駆けていた弥助が何かを察知した。


「この匂い……いかん、炭焼き小屋に火が入っておる!」

 熊のように大きな体からは想像できぬ弥助の速度に、お涼はついていくのがやっとだった。


「遅かったか!!」

 舌打ちする弥助の視線の先には二人の男。


 鬼八は炭焼き小屋に泊まり込んで火の番をしていた老人の喉元に小刀を突きつけながら、弥助とお涼に向き合っていた。



※慧眼=物事の本質や裏面を見抜く、すぐれた眼力。


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