第45話 乱戦
「老いぼれは殺しても構わぬ、女は生け捕れ!」
鬼八は憂ノ国の兵に命じた。
下位とはいえ、侍が忍に命令されるなど不思議な光景ではあったが、鬼八の纏う気迫には抗い難いものがあった。
松明を持った兵士がバラバラとお涼と猿を取り囲む。
「雑兵はこの猿めにお任せ下さい。お涼様は巻物を!」
お涼が頷くと同時に猿の姿が消えた。
「戸隠里長宗兵衛が影、見参! いざ尋常に勝負!」
わざわざ名乗りをあげ集団の注意を一身に集める猿の策に乗り、お涼は藪を掻き分け鬼八に迫る。
(接近戦は明らかに不利。遠距離から鬼八の意識を奪い、巻物を奪取するしかない!)
お涼は鬼八の間合いを避け、大木の影に身を潜める。
「お前の浅慮など、お見通しだ」
先ほど投げ捨てた鉤縄を拾い、鬼八はお涼の潜む大木めがけてこれを投じた。
大枝に巻き付いた鉤を支点に鬼八の体が振り子の要領で弧を描く。
お涼が放ったクナイを全て、縄を持っていない左手で弾き落とすと、鬼八はお涼の目の前に降り立った。
「お前の戦い方はあやめ様譲り。あやめ様の動きを全て覚えている俺に、お前は決して敵わぬ」
お涼は退きながら鬼八の急所にクナイを撃ち込む。
鬼八は鎖鎌を翻し、これを弾き落とした。
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