第44話 挟み撃ち
「巻物を渡してください」
「お前が俺のものになるならな」
お涼はゆっくりと首を横に振った。
鬼八の顔が醜く歪む。
「……お前まであやめ様を見限る気か? お前まで……この俺を否定する気かっ!?」
鬼八が
「あやめ様と同じ顔をして、この俺を否定するなっ!!」
鬼八の鋭い剣筋を、お涼は紙一枚の正確さでかわす。
「お、お涼様っ!」
祠の奥から猿の切羽詰まった声が 聞こえてきた。
「じぃ!」
お涼は正面の鬼八から目を離さずに猿に警告した。
「じぃ! そこから南東に三間、鬼八が居る!」
「なんと! お涼様、こちらも罠ですじゃ!」
祠から飛び出した猿は、声を頼りにお涼に駆け寄った。
狭い祠の入り口から次々と追っ手が沸いて出る。
「憂の国の兵が待ち伏せしておりました。伝令が援軍を連れて来るのも時間の問題!」
猿が早口で告げた。
「巻物は未だ鬼八の手に」
お涼は鬼八に顔を向けたまま、猿に報告する。
「このままでは囲まれてしまいまする、一旦退却を……」
「なりませぬ! この場を離れれば、巻物が憂の国へ渡ってしまう!」
憂の国の兵士たちは、松明を手に辺りを照らした。
炎に照らされた鬼八はまるで亡霊のような佇まいでじっとりとお涼を見据えていた。
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