第26話 宗兵衛の胸中
時同じくして戸隠の里。
「猿か?」
西日が差し込み、座敷に長い影を伸ばす。
宗兵衛は気配を感じて襖を閉じると静かに声をかけた。
屋根裏から老いた忍が音もなく宗兵衛のそばに降り立った。
「鬼八めに、お涼様の息災が知れてございます」
「……鼻の効く奴よ」
「鬼八は独自に阿ノ国が伊ノ国と同盟を結ぶ証拠を掴もうと、影を放っておったようです。その者に目をつけられました」
「鬼八の影となれば佐吉か。そこつ者なれど、逃げ足は早い」
「左様。阿ノ国城下にて、真田の若衆らに追い詰められてから、姿を見せてはおりませぬ。無事に逃げ仰せ、次の策を講じている恐れもあります」
「鬼八の奴め……どうあっても憂ノ国をけしかけ、戦を扇動するつもりか?」
「ご用心を。巻物が鬼八の手に渡れば、間違いなく戦が起こります。城勤めの五平に付き従えば、お涼様も少なからず巻き込まれましょう」
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