第24話 お涼の本気

「そんなの八方塞がりじゃないですか!」

 一人が悲痛な声をあげた。


 お涼はくノ一らに背を向けると男衆に小声で指示を出した。

「私を本気で倒すつもりで、かかってきてください」


 素早くクナイを構えたお涼の体から突然立ち上る闘気に、男衆は知らず臨戦態勢を整える。

 不意にお涼の体が深く沈んだ。


 次の瞬間、地面すれすれに大きく回されたお涼の足にかけられて二人が体制を崩した。こじ開けられた人垣の隙間から放たれたお涼のクナイは、藤二の喉元に突きつけられていたクナイを弾き飛ばす。


 間を置くことなく、藤二を押さえていた男衆の喉元にお涼のクナイが刺さった。

 お涼めがけて投げられた手裏剣は、高い金属音をたてながら全て弾き返された。

 飛びかかる敵をすんでのところでかわし、お涼はすれ違い様に喉元の板を小刀で割って行く。  

 四人の板が全て割れたのを見て、藤二が声をあげた。

「そこまで!」


「この距離でクナイだけを弾き飛ばすとは……」

 藤二がお涼の腕前に感心していると、お涼はスックと立ち上がり、真田のくノ一たちに向き合った。


「私は、かつて忍を生業としておりました」

 不意に始まったお涼の昔語りに、全員が耳をそばだてる。


「その頃の私は任務をこなし、里のために散るが忍の定めと思い込んでおりました。

 ……ちょうど十になる頃、私は戦で母を亡くしました」

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