第22話 監視
「実はこの格好は仮の姿でしてな。私は
侍の名を聞いたお涼は、密かに息を呑む。
(真田の藤二といえば、阿ノ国に三勇士ありと唱われた名忍の一人。しかし忍が自ら名乗るなど……何か腹があるに違いない)
お涼は一年前の逃亡劇を思い出し、身震いした。あそこまで追い詰められたのは生まれて初めてのことだった。
「真田の里は阿ノ国のお抱えでしてな、若手の育成にも力をいれておるのですが、なかなかくノ一が育たず苦慮しておったのです。
奥方のあの身のこなしは一流の動き。是非とも若手らに稽古をつけてやっては貰えますまいか?」
当然、藤二の申し入れは詭弁であった。
佐吉を追っていた藤二らは、暴れ馬の騒動でお涼の活躍をたまたま目にした。
一目でそれと分かる手練れの動きに藤二は目が離せなかった。
(なぜ町人らに紛れてあんな凄腕のくノ一が!?)
藤二は佐吉を早々に諦め、お涼の追跡に任を切り替えた。
そこから密かにお涼を見張っていたが、これといった動きはない。
これ以上待っていても埒があかぬと判断した藤二は、お涼を監視下に置くべく動きを見せた。
忍術指南を依頼するとは形ばかり。断れば怪しまれ捕らえられることは、お涼にも容易に理解できた。
五平に危害の及ばぬよう、お涼は首を縦に振るより他なかった。
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