第18話 鬼八の狙い

 そこまで思い返すと、鬼八はそっと隻眼を開いた。


「あの時、かしらは絶対何か企んでいやがった」

 罠が仕掛けられていると解っていて何もできなかった自分に鬼八は歯軋りしたものだ。


 だが、ここに来てある推測が成り立った。

 お涼は俺たちの目の前で烙印を押され崖から落とされた。

 この目で見てたんだ、そこは間違いねぇ。

 だが、それが狙いだとすれば?

 お涼を里から逃がすため、頭が仕組んだ茶番だとすれば?


 お涼に任務を与え、それがしくじりだと嘘をつき、処罰をしておいてのちにこっそりと助ける。


 なんのため……お涼を里から逃がすため。

 なぜ……お涼が特別であるがゆえ。


 頭がお涼を特別視すると言うことはつまり、お涼が実の娘であると言う噂がまことであると言うこと。


 鬼八はお涼の姿を瞼に浮かべる。


 黒い髪に陶磁のようなあの肌、くノ一としての高い身体能力……その上、あやめ様の娘でありながら、里長直結の血筋だと?


 欲しい。


 なんとしてもお涼を手に入れ、俺が次期里長となり、戸隠の名を全国に轟かせてやる!

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