第26話、女神様の登場

 天界てんかい―――それは新雪のような純白の大地に澄み渡る空の青におおわれた世界。

 何処までもひろがる白と青の世界。其処に、僕達は立っていた。

「此処が、天界……?」

 ぽつりとつぶやくメリーさん、どうやらメリーさんもこの天界にちた圧倒的な神気に気圧されているらしい。まあ、それも当然とうぜんだろう。

 此処は天界。数多の神話世界より遥か上位じょういに位置する、本当の意味で唯一無二の原初の世界だ。それはつまり、この世界が膨大に存在そんざいする異世界や異次元の起点である事を意味する。

 僕がこの世界に来たのは、これで二度目だ。最初に来たときは、流石の僕だって気圧されたさ。

 そんな僕達に悠然ゆうぜんと近付く一人の……いや、一柱のかげ

「ようこそ、天界へ。貴方達を歓迎かんげいしましょう」

「……女神様めがみさま

 そう、其処に居たのは一柱の女神様だった。とはいうものの、この世界に住人はこの女神様しか居ない。女神様曰く、元々は二柱居たそうだけど。ワケあって一柱だけになったそうだ。そのワケは、僕はらないけど。

 それにしても、この女神様を見る度にどうしてだろう?かがみを見ているような気分になってくるのは。

「先ずははじめましてですね、私の名は『運命』と言います。この天界に住まう二柱の神の内一柱であり、現在は唯一ゆいいつの神です」

「うん、めい……?」

「はい、そして新藤ヤマトの伯母おばに当たります」

「「「———っ⁉」」」

 衝撃的な発言はつげんだった。僕の伯母?つまり、僕の父さんか母さんの姉?確か、父さんは混じりっ気のない純粋な人間ヒトだと聞いている。だから、母さんの姉か?でも、どうしてそんな……

 混乱する僕達。そんな僕達に、女神様は僅かに微笑ほほえんだ。

「すみません、少し混乱こんらんさせてしまいましたね。私の妹から、この事はギリギリまで伏せておいて欲しいとたのまれていたのです」

「……でも、どうして?」

「貴方を人間としてそだてたかったからだそうですよ」

 人間として、育てたかった?母さんが、そんな事を……

「母さんが……」

「妹は、ずっと人間にあこがれていました。そんな妹をただ一人、神としてではなくヒトリの女性として見てあいしてくれたのが貴方ヤマトの父でした」

「そんな父さんに、母さんがれたのか?」

「はい、その通りです。妹は人間として我が子を育て、人間として平凡なせいを全うする事を望んでいました。ですが、全ておもい通りにならなかったようですが」

「僕の、霊感さいのうの高さですか……」

「はい、貴方はずば抜けた才能がありました。それ故、幼少の頃より孤独こどくを強いられていたようです。それが、妹にとって唯一の不確定要素だったようです」

「……………………」

 今でこそ、コントロール出来るようになった霊感の高さだけど。昔は上手うまく扱えなくてかなり持て余していたのをおぼえている。おばあちゃんが居なければ、きっとそのまま人間不信にでもなっていたのだろう。

 それくらいに、僕はい込まれていた。

「それに、貴方の才能はそれだけにとどまらなかった……」

「……え?」

「貴方の持つ転移能力テレポート、それは私があたえたものではありません。私は貴方の本来潜在させていた能力を覚醒かくせいへと導いただけでした」

「……⁉」

「貴方の才能は、貴方自身が思っている以上に高い素養そようを誇っていました」

 そんな……

 じゃあ、僕は一体。僕、は……

 ふと、其処で僕のかたを抱き寄せる二人の腕があった。メリーさんとアキさんだ。

「メリーさん?アキさん?」

「ヤマトの才能さいのうが高いからどうしたの?その才能を使つかって、今まで友達をたくさん作ってきたのはほかでもないヤマトでしょう?」

「そうよ、それは才能がどうとかは関係かんけいない。ヤマト本人の資質だよ?」

 そう、か。そうだよな。ありがとう……

 そっと、僕も二人の身体へ腕をまわし抱き寄せた。そんな僕達を、女神様は微笑ましそうに見詰みつめている。

「そう、貴方には才能の有無にかかわらず人を惹き付けてきた。才能なんて関係ないと友達をやしてきました。それは、とてもすばらしい資質ししつですよ」

「そう、ですね。はい、そうです……」

 僕は頷いた。うん、そうだ。僕は、才能なんて関係なく友達がおおいんだ。

 ありがとう……

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