第24話、まだ終わりじゃない

 ———まだわりじゃない。

 そう、僕がメリーさんとアキさんにげたのは次の日の午後ごごだった。

 街を焼く火は既に消火しょうかを終え、復興作業ははじまっている。もちろん、僕達もその復興作業の手伝てつだいをしていた。

 まだ、僕とアキさんが高校生だからか復興作業の中でも比較的軽作業をまかされているのだけど。異世界をたびして回った僕と人狼じんろうのアキさんにとってはまあそつなくこなせる程度の作業だった。

 ちなみに、主犯格しゅはんかくである道化師と死神は超重労働をせられている。当然だ。

 まあ、それはともかく。まだ終わりじゃない。そう僕はメリーさんとアキさんに告げた。二人は最初こそきょとんとしていたものの、続いて真剣しんけんな表情になって僕に近付いてきた。

「……終わっていないってどういう事?」

「まだ、何かあるの?」

「いや、事件は昨日終息したんだけど。まだその事でかなきゃいけないところがあるんだ」

 行かなきゃいけない場所、そう言う僕に二人は怪訝けげんな表情をする。

 そう、僕達は……いや、行かなきゃいけない場所ところがまだある。其処に行かなきゃ全てが終わらないから。だから……

 アキさんが少し首をかしげて僕に聞いた。

「えっと、その行かなくちゃいけない場所って何処どこ?」

「……うん、その場所は今まで行ってきた世界よりもずっと特殊とくしゅな世界なんだ。なんというか、言ってしまえば無数に存在する異世界のっことかそんな感じ」

「根っこ?」

「うん、もっと言ってしまえばその世界は全ての世界の起点はじまりなんだって言ってた」

 言ってた。その言葉にメリーさんは小さく首を傾げる。

「言ってたて、それは誰かからいた話なの?」

「うん、実は僕は……何て言うかその方から転移能力をあたえられたんだよ。だから一応はその方に会わなくちゃいけないから」

「能力を……」

「与えた?」

 僕の言葉に、メリーさんだけではなくアキさんも声を揃えておどろいた。

 それはそうだろう、能力ちからを人に与えるとなるとそれはもう人より上位の存在という事になる。そして、だからこそ僕はその方に無闇むやみな態度は取れない訳だけれど。

 メリーさんは、少しかんがえた後で僕に一つの質問しつもんをした。

「……実は、あの戦いの時にヤマトが倒された後で脳裏あたまに一柱の女神の笑顔と言葉が浮かんでいたんだけど。その女神と関係かんけいがあるの?」

「……え?女神?」

 メリーさんの言葉に、アキさんが驚いて目を見開みひらいた。

 ああ、メリーさんもあの女神様に会っていたのか。なら、わざわざ表現をぼかす必要もないね。そう思い、僕はうなずいた。

「うん、その女神様だよ。僕はその女神様から転移能力をさずかってね、だからその件で天界てんかいに行かなきゃいけないから」

「……それって、私達も付いていく事が出来るの?」

「うん、メリーさんもアキさんも決して無関係じゃないから。だから付いてきてくれるとうれしいんだけど……」

 そう言った僕に、メリーさんとアキさんは互いに向き合った後でうなずいた。

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