第22話、とびっきり最高な逆転劇

 目をますと、其処にはきそうになっているメリーさんの姿があった。アキさんも僕をじっと見詰め、目から涙をあふれさせている。

 相変わらず街は火の海だ。道化師と死神も、相変わらず嗤っている。

「へえ?あの状況で復活ふっかつするなんて、まるで物語ものがたりのようだね?あははははは」

「ははははは、楽しいな。これだから現実リアルは最高のゲームなんだ」

 二人は嗤っている。心底楽しそうに嗤っている。だが、僕はそれにかまう事はせずそのまま起き上がる。まだ胸の傷がいたむけれど、構うものか。とびっきり最高さいこうな逆転劇というやつを見せてやる。

 心配そうに見ているメリーさんとアキさん。そんな二人にちらりと笑顔を向けて大丈夫だとげる。

 大丈夫だ、もう、自分一人で無茶むちゃはしない。僕は、一人じゃないんだから。

 あらゆる時空や次元をえて―――

「来てくれ、僕の友達なかまたち‼」

 呼びかける。瞬間、空間が―――いや、次元そのものがゆがみ世界を越えてあらゆる世界線のあらゆる者達が召喚しょうかんされ現れた。

 幻想世界より竜王ウロボロスが、科学世界よりカイ博士と機械人形のマリーが。

 そして、その他にも様々な世界からあらゆる可能性かのうせいを越えて僕の友達が召喚され呼び出される。

 地獄世界の獄卒ごくそつである戦鬼ビャクヤ君。神話世界の天使達の統括とうかつをしている天使長ミハイラさん。戦争世界の救世主であり英雄えいゆうライル君。その他にも様々な世界から可能性世界を越えてあらゆる人物や存在が召喚される。

 皆、僕の友達ともだちだ。

 その召喚された友達の数に、道化師と死神は戦意をやすように嗤う。

「へえ?随分とまあかずを集めたじゃないか?それで俺達を倒せるとでも?」

「倒せないとでも?」

 売り言葉に買い言葉。だが、僕の言葉と共に友達からは戦意があふれ出る。それはかつて世界を渡った先で培った友情のあかしだ。皆、僕のために集まってくれた。僕と一緒に戦ってくれる最高の友達だ。

 ———じゃあ、こう。

 そう言って、僕達は皆で進軍しんぐんした。道化師も死神も嗤っている。この物量差にも一切臆する事はしない。むしろ、とてもたのしそうだった。

 まず、指揮が得意な天使長のミハイラさんが全員の指揮に回る。

 そして、この中で最も戦うのに特化した竜王のウロボロスと戦鬼のビャクヤ君と英雄のライル君は死神を相手にする。道化師の相手は僕とマリーさんとカイ博士、そして他数名だ。他の皆は、戦闘の余波から住民達を守るのにてっしてもらう。

 実際の所、道化師は保有する能力ちからが厄介なだけで戦闘力はそれほどではない。

 道化師のかげは『神隠しの影』という。その影に呑まれたら最後、影の中で消化されて道化師の力へと還元かんげんされるらしい。全部、自己申告だが。

 道化師の影がうごめいて、異形の化け物へと形を変える。この影に呑まれたらおしまいだろう。そう思わせる、異形いぎょうの化け物だった。

 そして、影が一瞬で駆け抜けた。瞬間、異形の嵐がれ狂う。

 その嵐に呑まれないよう、僕は自身の異能を全力稼働させる。細かく座標を指定しての詳細かつ連続的なテレポート。もちろん、その瞬間、僕ののうに巨大な負荷が掛かり激しい頭痛ずつうが襲う。

 苦痛に顔をゆがめ、頭を押さえる。だが、それでも僕は異能の行使を止めない。

 此処で止めれば、きっと皆が呑まれてしまうから。だから……

 瞬間、僕の肩をささえてくれる二人の姿が。メリーさんとアキさんの二人だ。

 見ると、二人とも僕を見て笑っている。だったら、僕も頑張がんばるしかないだろう。

 そう思い、僕も気合きあいを入れた。

「ははは、本当に面白いぞ!これほど楽しかったのは本当に記憶きおくにない!」

「ああ、そうか……行くぞ?」

い!」

 そして、決着けっちゃくを付ける為に僕達はけ抜けた。

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