第17話、忍び寄る魔の手?

「さて、茶番ちゃばんは其処までにしてそろそろ人形の代金だいきんを払って貰おうか?」

「……ああ、そうだったな」

 そう言って、僕はカイ博士にうなずいた。首を傾げるメリーさんとアキさん。まあ二人には話していなかったけど、簡単かんたんな話だ。

 マリーさんの制作の対価たいかを払う。な、簡単だろう?

 しかし、アキさんはよく理解出来ていないのか首を傾げて問い掛けた。

「……えっと、その対価って何?」

「簡単な話だよ。僕の転移能力を科学的に再現さいげんしたいらしくてね。だから今度実験に手伝って欲しいとたのまれていたんだ」

「……それって大丈夫なの?倫理的りんりてきに」

「大丈夫じゃないかな?其処のあたりはわきまえていると思うし。そもそも其処まで非人道的な実験じっけんはしないタイプだったし」

「じゃあ、そろそろ行くぞ」

「うい」

 そう言って、僕はカイ博士はかせに付いていった。

 ・・・ ・・・ ・・・

 ヤマトはそのままカイという名前の博士に付いていった。いかにも胡散臭い感じだったけど、ヤマトが信用しんようするならまあ良いでしょう。私が文句もんくを言えるような立場にはない筈だし。

 しかし、どうしてだろうか?胸のおくがもやもやする感じは。それが、何処となく不快だった。

「……ねえ、貴女は私のいもうとよね?」

「はい、そうですねおねえさま」

 お姉さま。結局私のび方はそれで落ち着いたらしい。けど、其処はまあ突っ込まないでおく事にする。ツッコミすぎて少しばかりつかれた。

 見て見ると、アキの方も何だかもやもやしたような感覚かんかくを感じているようだし。

 其処そこは、やはり自分でも分からない感情なんだと思う。

「まあ、この際私の呼び方についてはれないでおく。貴女を作ったあの博士は本当のところどういう人なの?微妙びみょうに胡散臭いんだけど」

「……あ~、私自身グランドマスターの情報はあまり持ち合わせていないですよ?」

「そうなの?」

「はい、なにせ生まれてからまだ数日のなので」

「……それにしては、ずいぶんと感情豊かだけどね」

「はっはっはっ、其処はまあ私。超高性能なシスターなので!」

「……はぁ」

 思わず、溜息とも相槌あいづちともつかない声を出してしまった。本当に、感情豊かな妹だと私は思う。正直な話、まれて数日程度の人形が此処まで個性を発揮し明確な自我を獲得かくとくするのはおかしな話だ。

 ありえないと言っても良いだろう。其処に、この世界の異常性いじょうせいを見た気がした。

 この世界というより、カイという科学者の異常性というべきか。

 と、その時……マリーが何かを察知したように右斜め後方をり返った。

「……どうやら、まねかれざる客のようですね」

「招かれざる客?」

「はい、ありていに言えば侵入者しんにゅうしゃです」

 そう言って、マリーはその場から駆け出していった。怪訝けげんに思いながらも、私達も一緒に付いてゆく。

 そして、しばらくビルの廊下ろうかを走り回ったその一室。其処そこには……

 一振りのナイフを持ったフードを被った男の姿が。そして、そのそばにはヤマトとカイ博士のたおれている姿があった。

 床にはおびただしい量の血が流れており、一目で致死量ちしりょうだと理解出来た。

 その姿を見た瞬間、私の中で何かがキレたおとがした。

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