SF世界編

第14話、色々と不穏な異世界転移前日

「ねえ、今度一緒にあそびに行かない?」

「一緒に、何処どこに?」

 全てのテストが終わり、次の日から連休れんきゅうに入る。学校帰りの道すがら、僕はアキさんと会話をしていた。アキさんと僕の関係はすでにクラスに知れ渡っている。

 ある意味で、僕は学校中の人気者にんきものな訳だけど。そのせいで僕とアキさんの関係は学校中にひかりの如く早急にれ渡る事になった。いや、なんでさ?まあ、別にその程度は構わないけれど……

 そして、現在アキさんは僕に連休を利用りようして何処かに遊びにいかないかと言う。

 いやまあ、何処に?僕の能力なら大概たいがいの場所に行けるけど、流石にパスポートを持たない外国がいこくに行くのは無理だよ?

「いや、もちろん異世界いせかいにだよ?何処か、面白おもしろそうな異世界は無いかな?」

「う~ん?ファンタジーな異世界は少し前にメリーさんと行ったし、じゃあ趣向を変えて今度はSFチックな異世界にしようかな?」

「SFって事は科学かがくが発達した異世界に?」

「うん、確か丁度親友が居る世界にそんな世界があった筈」

 僕の言葉に、アキさんは納得なっとくしたように頷いた。

「ああ、貴方って確か異世界じゅうに知り合いや親友ともだちが居たもんね?」

「うん、いっそ友達百人でも目指めざそうかと本気でかんがえたくらいだよ」

 そう言って、僕達は互いに笑い合った。その時……

 不穏ふおんな風が周囲を流れた。この風は?警戒けいかいした瞬間、目の前に色々な色で着飾った道化風の男が突如現れた。その男の出現しゅつげんに、僕の中のアラートが最大に警報を鳴らし始めた。その男の正体を知っていたが故に。

「……一体、何の用だ?『道化師』」

「ははっ、別に警戒する必要は無いんだぜ?そうカッカするなよ、カルシウム足りてないのか?」

 ほれっと、道化師は俺に小魚こざかなを一袋出して渡す。僕はそれを受け取らなかった。

 この男のペースにのまれては駄目だめだ。こいつのペースに呑まれたら色んな意味で全てが終わる。文字通りの意味いみでだ。

 こいつは、世界をほろぼすだけの力と危険性きけんせいを持っているのだから。

 にもかかわらず、こいつはげたげたと腹をかかえて笑っている。何が面白いんだか?

「それにしても、この前の親子おやこの一件は何も出来なかったようだな?」

「この前の、親子……?っ⁉」

 僕はすぐにその意味を理解した。こいつ、あの女の子の一件に……

 アキさんはよく理解出来ていないようで、不安ふあんそうな視線を僕に向けている。

「理解出来たようで安心あんしんしたよ。そうだ、あの女の子の父親を唆して悪霊化あくりょうかさせたのは俺だ」

「っ⁉」

 その言葉に、ついに道化師の言葉の意味を理解したアキさん。彼女の表情が怒りに染まり道化師をにらむ。

 今にも跳び掛かりそうなアキさんをおさえながら、僕は問う。

「……まずは聞いておこうか、何故なぜそのような事を?」

「ははっ、分かっているくせにそんなツマラナイ事を聞くなよ。俺の趣味しゅみだ」

「自分の趣味の為に、お前はそんな事をしたのか?」

「当然、俺はこの世界を面白く楽しくつくり変えるのが仕事しごとだぜ?」

「ちっ……」

 道化師のセリフに、僕は思わず舌打したうちを返した。

 そうだ、こいつは何時いつもそうだった。こいつは何のわるびれもなく、一切の恥や後悔もなく全てを引っ張り回して自己の快楽かいらくの為に崩壊させる愉快犯だった。

 思い出す。全てが滅びた世界で、火の海の中狂ったように笑う道化師の姿を。

「ま、今日はただの挨拶あいさつだから此処でかえらせてもらうヨ」

 そう言って、道化師は姿すがたを消していった。

 不安そうな表情かおを、僕に向けるアキさん。そんな彼女に、僕は笑みを向けた。

「大丈夫だよ、もうかえろう……」

 そう言って、僕はアキさんの手をにぎった。アキさんの表情は、れなかった。

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