第12話、純粋なアイ

 光につつまれる中、女の子の頭にぽんと手がせられた。女の子が見上げると、其処には困ったような笑顔の男の姿がある。どうやらこれが父親ちちおやの本当の姿らしい。

「お、父さん……」

「ごめんな、こんなふがいないお父さんで。娘を放ってお酒にげるなんて……」

 そんな父親に、女の子は首を横にった。

 涙混じりではあるが、満面のみで父親を見上げる。

「ううん、私こそごめんなさい。お父さんが大変たいへんな時に何も出来できなかった」

「ああ、本当にまない」

「けど、私幽霊になった後だけど友達ともだちが出来たの。私とお父さんやお母さんの事を想ってくれる友達が」

「ああ、そうか……」

 父親の目には、涙がにじんでいた。娘の言葉にしきりにうなずいている。そんな父と娘の頭上から、光がりてくる。その光景に、父と娘だけではなく僕達もはっとした。

 光と共に、やさしげな笑顔の女性が現れた。彼女の姿に、女の子は涙を滲ませて声を掛ける。

「お、母さん……」

「ごめんなさい、私の身体がよわかったばかりに。私が早くにくなったばかりに二人を苦しませてしまって」

 その言葉に、父親は。女性のおっとは涙で滲んだ表情で首を横に振った。

「それはちがう、俺が弱かったのさ。俺がもっと強ければ、こんな事にはならなかったのに。俺が弱かったばかりに」

「せめて、向こうでは一緒に仲良なかよく過ごしましょう。今度こそ、皆で一緒に」

「ああ、そうだな……」

 そう言って、光が一層強くなる間際まぎわ。女の子が一瞬だけメリーさんの方を見た。そんな女の子に、メリーさんは笑顔で手をった。

 また何れ、向こうで合いましょう。そう言って……

 そんなメリーさんに、女の子も笑顔で手を振った。

『ばいばいっ』

 そうして、女の子と両親は……優しい光に包まれて。天へとのぼっていった。

 ・・・ ・・・ ・・・

「っ、そういえばヤマトは大丈夫?怨念の一撃いちげきをモロに食らっていたけど」

 そうして、心配そうに僕に近付ちかづいてくるアキさん。そんな彼女に、僕は苦笑を向けて大丈夫と手を振った。

「少し、身体がちょっとだけしびれるけどもう大丈夫だよ。そろそろうごける」

「そう、無茶むちゃしないでよ?」

「うん、分かっているよ」

 そんな僕に、アキさんは手をし伸べる。手をしてくれるらしい。

 そんな彼女の手を素直すなおに受け取り、僕は……

「えいっ」

「……え?んっ⁉」

 アキさんの手を引っ張り、そのままキスをした。そんな僕達を、メリーさんは目をこれでもかと見開みひらき驚いている。メリーさんの目が、若干驚いたねこのような目になっているのが気になるけど。それはどうでもい。

 僕は、アキさんの口をついばむようにキスした。驚いたアキさんはわずかに抵抗するけど次第にソレがよわくなってきて……

 しばらくキスした後、そっとはなれたらとろんとした目でアキさんが僕の顔をじっと見詰めていた。いや、焦点しょうてんが微妙に合っていない。少しやり過ぎたか?

「……えっと、アキさん?」

「っ、えっとあの……あぅっ」

「うん、やっぱりアキさんは可愛かわいいな」

 そんな彼女に、僕はうっすらと意地いじの悪い笑みを浮かべた。そんな僕に、アキさんは更に顔を真っにする。

 うん、ごめん。悪かったからさ、メリーさんはそんなにらまないで。包丁を仕舞しまってくれないかな?

「えっと、なんで……?」

「アキさんって自分からめる時はぐいぐい来るけど、自分が攻められると途端に弱くなるよね?うん、実は前々からアキさんの事は大好だいすきだったよ?」

「はぅっ……」

 まあ、実の所アキさんの事は前々から好きだった。まあ、かくしていたけどね。

 だからさ、メリーさんはそんな黒い笑みで僕の背中せなかをぐりぐりと包丁で突かないでくれないかな?微妙にいたいんだけど……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る