第10話、家族のアイ

「ふーん、それで女の子になつかれたと?」

 現在、僕はメリーさんから事情聴取をしていた。いや、まあ事情聴取とは言ってもそんな大層な事はいていないけど。要するに女の子の家庭かていの事情が以外と悲惨ひさんだったと知っただけで。

 いや、まあごめんなさい。あやまるからそんな目でにらまないで下さいメリーさん。

「……全く、まあそのとおりだけど。そういう訳だから、私はこの子の家庭の事情を聞いた以上は何とかしたいと思っているんだけど」

「うん、まあそう思う気持きもちは理解出来るけどさ。メリーさんはその程度の責任せきにんは背負う覚悟かくごはあるんだよね?」

「ええ、あるわ」

 僕の言葉に、メリーさんは即答そくとうした。うん、それでこそメリーさんだ。

 だから、僕はメリーさんの腕にしがみいている女の子の霊に向き直った。女の子はびくっと身をふるわせてメリーさんの背にかくれてしまう。うん、分かってはいるけど少しばかり傷付くな。まあ、別に良いけどさ。

 そんな女の子の背中をそっとして、メリーさんが笑みを向ける。女の子はメリーさんに勇気付ゆうきづけられたのか少しだけ前に出た。

「うん、じゃあ今度は君に聞くけどいかな?」

「え、あ……はい」

「君はどうしたいんだ?君の家庭の事情は聞いたけど、君自身はどうしたかった?」

「私、は……お母さんとお父さんにいたい。会って、二人にあやまりたい」

「そう、じゃあ僕が君の両親に会わせてあげるよ」

「……本当ほんとうに?」

「うん、ちょっとした降霊術こうれいじゅつという奴さ」

 そう言うと、女の子はぱあっと表情をあかるくさせた。対するメリーさんは何か考えると僕にこそっと耳打みみうちしてくる。

「……本当に良いの?すでに死んでいる母親はともかく、父親は」

「ああ、うん。その事だけど……此処に来る前に少しだけ調しらべていてね。この女の子の父親は女の子が自殺した少しあとに自殺してるんだよ」

「っ、それは……」

「うん、恐らく娘が自殺した事にえかねたんだろうね」

 そう、だからこそこの悲劇ひげきに幕を下ろすにはこの女の子と両親を直接会わせるしか方法が無いわけだ。そうして、直接女の子と両親が会うしかもう方法は残されていないんだ。その方法こそが、降霊術だ。

「さ、話が決まったらそろそろ行こうか。女の子も早く両親おやと話したいだろうしな」

「うんっ!」

 女の子が元気に返事へんじをする。元気があってよろしい。とはいえ、元気の良い幽霊って何だよという話だけど。其処そこは気にしてはいけない。

 そのまま、僕と女の子とアキさんは儀式の為に自宅じたくに向かうのだった。

 その背中を、メリーさんがじっと見ている事をあえて気付かないふりをして。

 ・・・ ・・・ ・・・

 この降霊術には、一つだけとし穴がある。それは、降霊術によって呼び出される霊が必ずしも善良ぜんりょうな霊とは限らない事だ。

 それ故に、降霊術には細心の注意ちゅういを払う必要があるのだから。其処を、僕は気付かないふりをしていた。いや、意図的に無視むししていたのだ。

 それが、果たしてどのような結末をむかえるのか?

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