第9話、赤い服の幽霊少女

 ……時は遡り、メリーさんが赤い服の幽霊少女にはなし掛けた辺り。

「ねえ、貴女は其処そこで何をしているの?」

 まさか、声をけられると思っていなかったのか。女の子はびっくりしたような表情で私を見ていた。どうやら、私は人間にんげんだと思われていたらしい。

 まあ、別にかまわないけど。とにかくまずはその勘違かんちがいから正す事にしよう。

「私はメリー、人形にんぎょうのお化けよ。で、貴女は其処で何をしているの?」

「私は、鈴。天衣鈴あまいすず……私は川でおぼれて死んだから行く当てがなくて」

「で、此処ここで一人じっとしているの?」

「……うん」

 なるほど?

 そして、再び女の子は膝をかかえて俯いた。何処か、その表情はさみしそう。

 その寂しげな表情が、どこかむかしの私にそっくりで。てられたばかりの私を思い出すようで。だからだろうか?気付きづけば私は更に話し掛けていた。

「どうして、そんな寂しそうなの?私に話せる?」

「……………………」

「私で良ければ、くわよ?」

 そう言って、私は女の子の傍にこしを下ろした。少し驚いた表情をしたが、女の子は薄く微笑んだあとゆっくりとはなし始めた。

 ……どうやら、女の子は両親と三人でらしていたらしい。だけど、ある日母親が体調を崩してそのままくなったという。

 母が亡くなって以降、父親は酒にひたるようになったとか。父がこわれていく姿を黙って見ている自分。そんな自分がいやになり、そのまま家を飛び出して気付けば川に飛び込んでいたのだとか。

「何も出来できなかった。私、お母さんが死んで……お父さんがこわれていくのを黙って見ているしか出来なかった。それしか出来なかった」

 もはや、女の子は泣いていた。頭を抱え、涙を流していた。

 そう言う女の子の姿が、あまりに寂しそうだったから。だから私は気付けばこう言っていた。

「もし、良ければ私と少しだけあそばない?一緒に遊べば気がいくらか晴れるかも知れないわよ?」

「……お姉ちゃん、私と遊んでくれるの?」

「ええ、これでも私は色んな遊びを知っているわよ?今日は一緒にとことん遊びましょうよ」

 そう言う私に、女の子はどうおもったのか?私には分からなかったけど、それでも恐らく何かは思ったのだろう。にっこりとみを浮かべて……

「うんっ」

 私の手をった。

 ……そして、しばらく女の子の幽霊とあそんでいた私だったのだが。

 気付きづけば、幽霊の女の子は私にとてもなついていた。

 いや、どうしてこうなったのか?分からないけど、流石にこれは予想外よそうがいだった。

 私のうでに頭をこすりけているし。マーキング?

 そんな私を、はなれた場所でヤマトが見ているのが見えた。

 ……ごめん、見ているならたすけてくれないかしら?

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