第8話、浄霊の依頼

 そして、本日のテストはすべて終了。放課後を告げるチャイムがり響く。

 筆記用具を纏めて仕舞しまい、鞄を背負せおった。そして、机に突っ伏して疲れ切っているアキさんに近付いた。アキさんは脳を酷使こくしした影響で熱暴走を起こしているよう。そんな彼女に話し掛ける。

「そろそろ話しをかせて貰えないかな?依頼いらいって何だ?」

「……ん~、疲れた。キスしてくれなきゃきない」

「じゃあ、僕はこれで帰らせてもらうよ」

「ごめんなさい、起きますから勘弁かんべんしてっ‼」

 がばっと、アキさんは一気にき上がる。うん、やっぱりアキさんはこのくらいの扱いが丁度いい。僕はアキさんににっこり微笑ほほえんだ。

 うぅっと涙目でうらめしそうな声を上げるアキさん。ま、仕方しかたがない。

「う~、良いじゃんキスくらい。ほんのちょっとだからさ」

「いや、アキさんの場合ばあいはほんの少しでもキスしたら歯止はどめが利かなくなりそうだからさ。アキさんの方が」

 ほら、それよりさっさと依頼の内容を話す。そう、アキさんをかす。

 そんな僕達を、周囲のクラスメイト達は苦笑くしょうをしながら見ていた。

「う~、まあいや。ほら、近所に商店街があるでしょ?あの翔子しょうこさんがスナックを開いているあの商店街」

「ああ、あの商店街ね」

「うん、その一角でどうやら赤い服を着た女の子の幽霊ゆうれいが出るらしいのよ。でも、その幽霊が何処でどうくなった幽霊なのかが分からないのよね?近所のお寺の住職さんが聞いても答えてくれないらしいし」

「ふ~ん?それはどうも胡散臭うさんくさいね」

「そう、だから一度ヤマト君に話しを聞いてもらって必要なら浄霊じょうれいして欲しいな」

 浄霊、ね。あんまり必要以上に浄霊や除霊をするのは気がけるけど。まあ、それは一度話を聞いてからだな。

 僕は一度頷くと、アキさんに了承りょうしょうの意をつたえた。

「分かったよ、ただしもし相手がその必要のない善良ぜんりょうな幽霊なら僕の判断で処理しょりするからね?」

「うん、其処はまかせるよ!」

 僕の言葉に、アキさんはしゅびっと片手をげた。

 そんな彼女はとても元気一杯で、思わず僕も笑顔になるくらいには愛嬌あいきょうがあった。

 だからだろうか?思わずこう言ってしまったのは。

可愛かわいいな」

「っ⁉」

 そんな僕を、ぎょっとした目でアキさんは見た。ついでにクラスメイトの皆も。

 ……いや、何故なぜだ?

 その後、興奮こうふんしたアキさんを落ち着かせるのにすこしばかり時間が掛かった。

 本当に、何故だ?

 ・・・ ・・・ ・・・

 そして、僕とアキさんは商店街まで来ていた。しかし、其処そこで見たのは思いも寄らない光景こうけいだった。

「~♪」

「……はぁっ」

 僕達の目的である赤い服の幽霊少女。その女の子になつかれたメリーさんの姿だ。

 ……えっと、一体何をしているの?メリーさん。

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