第6話、人狼少女の依頼

 都内でもそこそこ有名な進学校しんがくこう。その高等部三年A組に僕は所属していた。クラスに入ると何時も元気な女の子が挨拶あいさつをしてくる。

「おっはようっ‼今日も元気?」

「いや、僕に聞かれてもね?まあ、そこそこ元気だよ」

 彼女の名前は大上おおがみアキ。人狼の血を引く文字通り人狼じんろうの少女だ。とはいえ、半分は人間の血を引くハーフらしいけど。云わば混血こんけつという奴だ。けど、混血であろうと満月を見れば血がうずいて人狼に姿を変えるのは間違いないらしい。

 ちなみに彼女、運動部うんどうぶのエースで特に徒競走ときょうそうでは県大会で優勝した程の超絶逸材でもあったりする。

 まあ、その辺は人狼の血を引いている関係かんけいなのだろうけど。

「そういえば、ちょっと聞きたい事があるんだけど。良いかな?」

「何だ、僕に聞ける範囲はんいなら出来るかぎり聞くけど……」

「よろしい、私からちょっとばかり大和君に依頼いらいがあるのだよ!」

「はぁ、けど聞ける範囲だよ?出来る限り、だからね?」

「ぐぬう、其処は自信じしんを持って受けようよ」

 其処はまあ、僕だし?流石に安請やすうけ合いは出来ないよ。

 そう言う僕の言葉に、ぐぬぬとうなり声を上げるアキさん。でも、そういう割に楽しそうなのはどうしてだい?そのわきわきとうごく手は一体何だい?

 大上アキ、彼女は結構な肉食系にくしょくけいだったりする。更に言えば、どうやら彼女の中で僕は結構なストライクゾーンらしい。りたくなかった事実だけど。どうやら隙あらば既成事実を作ろうと画策かくさくしているとか?

 そういう今も、鼻息荒はないきあらく僕を見ている。女性が獣ってどうなんだろうか?果たして需要はあるのだろうか?

「で、その依頼っていうのは何だ?先ずは話しを聞くのが先決せんけつだろ?」

「ああ、うんそうだね……」

 ごほんっと、わざとらしく咳払せきばらいするアキさん。

 そう言う間にも、ちらちらと僕を見てくるのは一体なんだ?

「ともかく今日の放課後ほうかごに私と一緒に付いて来てしいんだよ」

「……どこかれ込んでいかがわしい真似まねでもしようって?」

「そんなつもりはいよ。私、そういう時は素直すなおに真っ直ぐアタックするし」

「は、はぁ……」

「とにかく、放課後は予定をけておいてね?私の依頼を最優先さいゆうせんにという事で!」

「あいよ、了解りょうかい

 その瞬間、朝のホームルームをげるチャイムが鳴り響いた。ちなみに今日から試験期間だ。だから授業じゅぎょうは午前中で終わりである。

 僕はそこそこ良い点数を維持いじしているので教師受けは良い。ちなみにアキさんはかなり努力して現状維持をしている方なので、まあ御察おさっしである。

 テストの答案を前にぐぬぬと唸るのが彼女の何時もの光景だったりする。

 ……まあ、別にそれは良いか。今日はいそがしくなりそうだ。

 そう思い、そっと溜息ためいきを吐いた。

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