日常編

第5話、追憶の夢

 それは、かつて僕が幼少ようしょうの頃。まだ、自分の霊感れいかんに振り回されていた頃の話だ。

「ねえ、おばあちゃん。どうして人の心の中ってこんなにきたないの?」

「……同じ人間の身としては耳がいたいね。けどまあそれも仕方しかたのない話だけど」

「仕方のない?」

 小首をかしげる僕に、おばあちゃんは苦笑気味にうなずいた。当時の僕は霊感を制御出来ずに人の心の中までめるような正真正銘のエスパーだった。

 そんな僕を周囲の人はかなり不気味ぶきみがったけど、おばあちゃんだけは大層可愛がってくれた。そんなおばあちゃんに僕は心をひらいていた。

 おじいちゃん?僕が生まれた翌日にぽっくりったのでよく覚えていない。

「人はね、社会しゃかいで生きていく事で人間の汚い部分を吸い取ってまっていくんだ。そうしないと社会で生きていく事が出来できないからね」

「そうしないと生きていけないの?」

「悲しい事にね。人はよわい生き物だから、強くは生きていけないんだよ」

 そういうおばあちゃんは、本当にさみしそうだった。だからだろうか?僕はおばあちゃんの前で精一杯の見得みえを張った。

「じゃあ、僕がおばあちゃんを安心あんしんさせる為に強くなる!心も身体も、強い人間になるよ!」

「……そう、うれしいね。安心したよ」

 そういうおばあちゃんは本当に心底から安心したのか。うれしそうな笑顔で僕の頭を撫でてくれた。

 そして、安心したからだろう。おばあちゃんは次の日には体調をくずしてそのままぽっくりと逝った。

 僕はおばあちゃんの遺体いたいを前に泣いた。しばらく泣き続けた。けど、泣いている暇は無いとすぐに思い至った。おばあちゃんとの約束やくそくを守る為、僕は強くなるためにそのまますぐに近所の山寺やまでらに修行に出た。

 二年間山寺で修行した後、次に僕は神社でまた二年間修行。続いて教会で二年間修行して神学を学んだ。そうした直後だった、僕が異世界に召喚しょうかんされたのは。

 召喚したのは、一柱の女神めがみだった。

 僕は三年間、異世界を放浪ほうろうして元の世界にもどった。女神から一つの使命と超能力を授かって……

 ・・・ ・・・ ・・・

「……すごく懐かしいゆめを見た」

 目をますと、其処は何時もの自分の部屋へやだった。どうやら少しばかり懐かしい夢を見ていたらしい。いや、ごめんなさい。少しではなく、本当にすごく懐かしい夢でしたはい。

 だからそんなじとっとした目で見ないで下さいメリーさん。

 全く、と言ってあきれながらメリーさんは下の階へと下りてゆく。今更だけど僕の家は二階建てだ。一人暮らしにしては少しばかりおおきい家である。

「さて、そろそろ本格的にきるかな……」

 そう言って、僕はパジャマをぎ捨て学校の制服に着替える。あれからメリーさんと適当に休日を過ごし、適当にあそんだ。

 うん、今日は月曜日げつようび。今は朝の06:30くらい。今日もがんばるぞ!

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