第4話、ファンタジー世界

 天に昇っていく光の粒子れいたい、それをバックに僕はメリーさんに言った。

「で、どうする?」

「いや、どうするって何が?」

「このまますこしだけこの世界を満喫まんきつして帰るか?それともこのまま帰るか?」

 聞いた瞬間、ふぅっとあきれたような溜息をいてメリーさんは答えた。

「まあ、どうせ貴方はそれが目的もくてきなんでしょう?」

「何のことだか?」

「とぼけないで、私と異世界をめぐってその間に私に殺されるのを先延さきのばしてうやむやにしようとしているでしょう?」

「ははっ☆まさか、そんな事は無いさ♪」

 ぴきっと、メリーさんが青筋を額に浮かべた。傍に居たウロボロスが僅かに引いているのが見える。

 うん、今のは僕自身やりぎたと思っているさ。

 けどまあ、本当にそんな事は無いよ?

「本当の所はな、メリーさんにもたのしんでもらいたかっただけだよ」

「楽しむ?」

「ああ、メリーさんは捨てられた人形の怨念おんねんから生まれたお化けだろう?だったらせめて、お化けとしての人生せいくらいは楽しんでもらいたいと思ってな」

 僕の言葉に、メリーさんは驚いたように目を見開みひらいた。どうやら今の言葉はメリーさん自身予想外だったらしい。捨てられたうらみからお化けになったメリーさんは人を殺す事のみを生きる目的にしていた。それが、僕には少し寂しい気がしたんだ。

 だから、メリーさんにはそれ以外の道を提示ていじしたんだ。

「一つ聞きたいのだけど、貴方は他のお化けでも同じ事をするの?」

「うんまあ、他にも口裂け女の翔子しょうこさんとかは同じように説得せっとくしたかな?」

「はあ、そうなの……」

 微妙にげんなりした様子のメリーさん。何だろう?この呆れられたような感じは。

 まあ良い、今日は楽しもうじゃないか。

 そうして、僕とメリーさんとウロボロス(人化)はファンタジーな世界を堪能たんのうし街でクレープとか綿あめとかべて過ごした。

 え?どうして異世界にクレープとか綿あめがあるかって?もちろん僕がつたえたに決まっているじゃないか。僕の料理りょうりスキルはそこそこだよ?

 ははっ、めてくれるな。え、褒めてない?あ、そうですか……

 ・・・ ・・・ ・・・

 そうして、夕方頃。僕とメリーさんは元の世界へとかえる時間になった。

「ではな、ヤマトにメリーよ。またいずれ相まみえようぞ」

「うん、また何れあそぼう」

「……はぁ、つかれた」

 一人疲れ切っているメリーさん。そんな彼女に、僕とウロボロスは腹から笑った。

 そうして、家に帰宅。家に着いた僕はメリーさんに一言。

「そうだ、もし帰る家が無いなら僕の家にむか?」

「は、何でそう思ったのよ」

 怪訝な顔でメリーさんがり返る。思わず苦笑をらした。

 いや、そんな複雑な思考しこうは巡らせてないよ?

「いや、メリーさんって捨てられた人形って設定せっていじゃないか。だったら帰る家があるのは少しへんじゃないかな?」

「ぐっ、そりゃそうだけど……」

 そんな彼女に、僕は手を差しべた。

「だから、僕の家がこれからメリーさんの家だ。ほら、丁度人形をくスペースには困らないし?」

「……………………っ⁉」

 僕が思わず顔をそむけて言ったら、メリーさんは何故か息をんだ。

 そして、やがて楽しそうな笑い声がメリーさんから聞こえてくる。

「……ふふっ、そう真っ赤な顔をして言ってもね」

「ぐっ」

「うん、分かった。私のこれからの家は此処ここよ。でも忘れないで、私はメリーさんの人形だって事を。もし私をてたら貴方を殺すわよ?」

「うん、それこそ問題もんだいない。僕は君を絶対ぜったいに捨てないから」

 そう言って、僕とメリーさんは互いに固く握手あくしゅした。

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