兄離れできない妹が電話するようです

白黒羊

鳴らない電話

「もしもしお兄ちゃん?あ、やっと出た。もう、何してたのよ。リナが電話しても出ないなんて。お兄ちゃんサイテ〜。……え?要件は何かって?そんなのいつも通り無いわよ。ただお兄ちゃんとお話ししたかったの。それだけで十分でしょ?ってか聞いてよお兄ちゃん。リナね、今日また告白されたの。もう今学期何回目?って感じよね。あ、もちろんオーケーなんてしてないわよ?だって私にはお兄ちゃんがいるもん♡……いい加減兄離れしろ?やでーす。離れませーん。お兄ちゃんだってリナに絡まれるの分かってて電話出てるんでしょ〜?じゃあ人のこと言えないよね〜。……可愛い妹だから仕方なく?もう、言ってくれるじゃな〜い。お兄ちゃん大好き〜♡ねぇ、お兄ちゃんもリナのこと好き?……なんで黙るのよ!もう!全く、頑固なんだから。いつか言わせてやるからな〜!覚悟しとけよ!まぁいいや。何の話しよっかな。そうだ、今日古典の授業中寝ちゃったんだけどね、夢にお兄ちゃん出てきたの!一緒にデート行ったのよ。……そう、デート。映画見て、ご飯食べて、お買い物して、それからゲームセンターにも行ったわ。お兄ちゃんがクレーンゲームでぬいぐるみ取ってくれたのよ。お兄ちゃんって昔からクレーンゲーム上手いよね。いつも一緒に行く時は何かしら取ってくれるもんね。それで帰る前にクレープ食べたわ。私がイチゴのやつで、お兄ちゃんは相変わらずチョコのやつ。一口ずつ分け合って〜、ああ、本当に行きたくなっちゃった。お兄ちゃん、次はいつ帰ってくるの?……まだ分からない?もう、可愛い妹が待ってるっていうのにお兄ちゃんのイジワル。……今度帰ったらデートしてやるから待ってろ?しょうがないわねぇ〜。もうお兄ちゃんったら、やっぱり本当はリナとデートしたいのね。ツンデレなんだから〜。……そんなんじゃない?いやツンデレよ。そういうところも大好きだけどね〜。そういえばお兄ちゃん、今日の晩御飯は何食べたの?……カレー?またー?ほんとお兄ちゃんったらカレー好きよね。リナもお兄ちゃんの作るカレー大好きだけどさ。……リナ?リナはいつも通り作り置きよ。……リナだって自分で作って好きなもの食べたいわよ。でも家に何も無いし…。早く卒業してお兄ちゃんと住みたいなー。……え?そろそろお風呂入るの?わかった。じゃあまた明日ね。愛してるよお兄ちゃん。バイバーイ」

リナはすでに冷たくなっている真っ黒な液晶から耳を離した。そしてスマホを壁に投げつけた。

「どうして出てくれないの…お兄ちゃん…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

兄離れできない妹が電話するようです 白黒羊 @hi_tu_zi2020

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ