第14話 コラボスタート
「頑張ってダンジョン探索。キラキラ姫子☆」
風子が持つカメラの前で始まりの自己紹介。
配信がスタートした。
コラボはチャンネル登録者数が多いキラキラ姫子チャンネルから始めようということになった。
「皆様、ご心配をおかけしました。地龍に襲われて死にそうだったところを私達は助けられましたの。今ではピンピンしていますわ」
カメラに映っているのは姫子だけである。
「ご紹介いします。私達を助けてくれた魔王君と佐伯様のお二人です」
佐伯さんがカメラの前に飛び出した。
「バズらにゃ死ぬでお馴染みの佐伯さんだよ」
いつも言っているけど、これが彼女のお馴染みの自己紹介らしい。
「……」
俺に自己紹介は無かった。
「ほら魔王君も自己紹介しなくちゃ」
と佐伯さん。
「嫌だよ」
「照れるなよ。いつもみたいに顎顎ダンスを踊りながら下半身の粗末な物を見せる自己紹介しなよ」
と佐伯さんが言う。
「いつ俺がそんな事をやった?」
「魔王、魔王、魔王だよ。彼の名前は魔王だよ」
とアゴを突き出して佐伯さんが踊り始めた。
「顎顎ダンスするんじゃねぇーよ」
「ほら後は魔王君の番だよ。下半身の粗末な物を見せなくちゃ」
「見せねぇーよ」と俺が言う。
「後で私の前で見せてくださいまし」
と姫子が言う。
「見せねぇーよ」と俺が言う。
「バズらにゃ死ぬでお馴染み佐伯の探索チャンネルを見てくれたら、私達のことを助けてくれた動画がありますので、もし良かったら見てくださいまし」
と姫子が佐伯さんのチャンネルの宣伝をした。
「絶対に見てくだちぃ。真心を込めて助けまちた」と佐伯さんが言う。
「佐伯様が魔王様の実家に帰る、という企画をやっているらしく、それに我々も相乗りさせてもらうことになりましたの」
「コラボ、コラボ、コラボだよ」
佐伯さんが、また顎を突き出して踊っている。
「魔王様の実家がある深層まで行っちゃいますわ。配信は佐伯さんのチャンネルと交互で行なっていく予定です。もし良かったら見てくださいまし」
と姫子が言った。
「8階層に謎の建物があるらしいよ。入った人は生きて2度と出て来れない。そこに行こう」
とカメラを持った風子が言う。
殺戮建築のことか、と俺は思う。
小さい時に妹と遊んでいた場所である。
「レディゴー」と佐伯さん。「これはジョーブログの真似ね」
歩いていると魔物が現れた。狼に似た魔物である。5匹もいる。牙を剥き出してコチラを威嚇していた。
「魔王。君に決めた」
と佐伯さんが言った。
「俺はポケ○ンじゃねぇーよ」
「連続キック攻撃」
と佐伯さんが叫ぶ。
俺は狼を蹴散らす。
血肉が飛び散る。
雑魚である。
「よくやった。魔王」
「すごいですわ魔王様」
と姫子が言う。
「トレーナーの私の手柄なんだからね」
と佐伯さんが言う。
「すごいですわ。佐伯様」
と姫子。
「本当にコイツがすごいのか?」
と俺が首を傾げた。
「サトシにも同じ事が言えるのか?」
と佐伯さんがキレる。
「勝手にサトシと同じ土俵に乗ってるんじゃねーよ」
「はいはいわかりましたよ」と佐伯さん。
「魔王君、魔石はちゃんと回収しといてね」
「自分で回収しろよ」
と俺が言う。
「やだ。手が汚れるもん。あと魔王君のリュックに魔石を入れといて」
「マジでわがままだな」
と俺は呟きながらも魔物の血肉から魔石を回収する。
ネズミから取り出した魔石を処分させてしまった後ろめたさもあった。
ハンカチで魔石についた血を拭って、俺のリュックに入れた。
「今まで魔物が出て来たら魔王様が倒しているのかしら?」
と姫子が尋ねた。
「私の手持ちのポ○モンは魔王しかいないからね」
「しっかり俺のことポ○モンって言ってるし」
「気をきかせてピカチュウって鳴いたらどうなの?」
「俺に相棒ポ○モンの可愛らしさを求めるな」
「そんな事を言ってたらマサラタウンでさよならバイバイなんだよ」
「うるせぇーよ」
「俺はコイツと旅に出る」
と佐伯さんが言って、俺にピカチュウと言うのを求めて来る。
「ピカチュウ」と俺は言った。
「……」
「……」
「2度と言わねぇ」と俺が言う。
「魔王様、魔物ですわ」
と姫子。
また狼の群れが5匹。
「魔王、十万ボルト」と佐伯さん。
「俺は可愛らしい相棒ポ○モンじゃねーんだよ」
「さっきピカチュウって鳴いてたくせに」
人をバカにしたように佐伯さんが笑う。
「超ノリノリだったくせに」
キック、キック。
血肉が飛び散る。
そして俺は魔石を拾う。
「魔王様すごいですわ」
「トレーナーの私の手柄なんだからね」
と佐伯さん。
また同じ会話をする気なのか?
「再放送が、早ぇーよ」
と俺がツッコむ。
「俺はコイツと旅にでる」
と佐伯さんが言って、ピカチュウを求めてくる。
「言わねぇーよ」と俺が言う。
そして何だかんだ喋りながら、魔物を倒して魔石を回収しながら殺戮建築が建っている……建っているっていうか、殺戮建築そのものが魔物なんだけど、殺戮建築がいる場所に辿り着く。
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