第3話  ~ Petty knife rolita ~

The your death size ?

 height: 111㎝

 weight: 33㎏

 B-W-H: 66-66-66

 hair: orange

 type: cheering




ご主人は優しい

 いつも美味しいご飯、お膝の上で毛繕い

 部屋にケージにボク、汚しても笑ってる

 どんなに忙しくても、どんなに甘えても

 いつも撫でてくれる、大好きな温かい手

ボクは嬉しい


ご主人は騙される

 いつの間にかいる女、彼女というらしい

 ご主人がいないとき、ボクに意地悪する

 二人のいちゃいちゃ、お腹熱くて切ない

 ボクの方が先なのに、ご主人騙されてる

ボクは悲しい


ご主人は怒らない

 ただ静かに泣いてる、僕が悪いのかなと

 女が持ってちゃって、お金も仕事もない

 部屋がなくなるから、ボクは貰われてく

 女が悪い決まってる、ご主人は悪くない

ボクは口惜しい


ご主人は冷たい

 ご主人寂しいきっと、待ってて直ぐ帰る

 ご主人探してて迷子、天使がボクを導く

 ご主人冷たく寝てる、ぜんぜん起きない

 ご主人しんじゃやだ、ひとりにしないで

ボクはさみしい

 ……さみしい

   さみしんだ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「お帰りなさいませぇ、ご主人さま!」

「ひぇ?」

 しつこい呼び鈴に玄関あけると、いきなり可愛らしい声が元気よく響いた。ひとんち来て、第一声がお帰りなさいって何? ご主人さまって? この美少女は誰?

「えっと……………………」

 フリーズした僕を、愛らしい笑顔が見上げてる。肩までのふわふわでオレンジ色の髪の上に…… 柴犬の付け耳? コロコロ丸っこくて子供みたいに小っちゃいけど、ふわふわなメイド服の胸があり得ないくらい膨らんでて、大人のようにも見える。

「さっ さような…… あ!」

 ドア閉めようとしたら、腕の下をすり抜けられちゃった。すっ 素早い。

「ただいまぁ~ ボク。おかえりぃ~ ホウリィ」

 靴脱ぎ飛ばして家にあがって、ひとり芝居? スーパーのレジ袋をいくつもドサドサ転がしながら振り向いて、ウサギのぬいぐるみを脇に、三つ指ついて正座して……

「ご主人さま、お帰りなさい」

 また? 毎朝の散歩は欠かさないけど、出かけて帰ったのは結構前だし。初対面でお帰りなさいは、普通言わないよね。

「きっ 君は……」

 にっこり笑って僕を見上げる美少女。何だかコロコロぷくぷくしてて凄くカワイイよ、特に柴犬の付け耳がスゴくカワイイんだけど、そんなんで誤魔化されないよ。

「ボクは、ホウリィだよご主人」

「だからご主人って…… あっ!」

 慌てて、ホウリィの脇を通って家にあがると、散乱したレジ袋の一つをひろげる。

「うわ~ 卵が割れてるよ」

 パックの卵がほぼ全滅だ、他の袋からも何かの液体が床に流れてるし。ホウリィの方を見ると、きょとんと不思議そうにしてる。まだ小っちゃくて、分かんないの?

「そこ、動かないでね」

 急いで色々持って戻ると、卵とかをビニールに入れてレジ袋をティッシュで拭いて、最後に床を雑巾で拭き上げる。途中から手伝ってくれるし。うん、えらいよ。

「おつかいの帰りかな? もう乱暴にしちゃダメだよ」

 靴を履かせて、レジ袋とぬいぐるみ持たせて、玄関から送り出そうとすると……

「にぎぃ! ちっがぁ~う」

 また靴脱ぎ飛ばして、家の中に走ってっちゃう。

「え? えぇ!」

「ボクは子供じゃな~い!」

 叫び声は洗面所のほう? 急いで追いかけると、洗濯機を背にしてまた叫ぶ。

「キッチンはどぉ~こ~」

「あ~ こっちだよ」

 勢いに押されて素直に案内しちゃうと、冷蔵庫あけてレジ袋の中身を入れ始めるんだけど…… えーと、何やってんのかな? ひとんちで。

「おうちに帰んないの? 家のひと心配するよ」

「ホウリィのおうちは、ご主人のおうち」

 えーと、どゆこと? ママゴト遊びみたいなのかと思ってると、何か手渡すし。

「ご主人、これお願いなのです」

「えっと…… スーパーのレシート?」

 戸惑ってると、小っちゃい手の平ひろげて催促? もしかして僕が払うの?

「ホウリィのお金はすこしだから、ご主人が出すべきなの」

「えーと……」

 ツッコみどころだらけで、頭かかえちゃう。家出とかなら警察に連れてくべきだろうけど、引き籠もりの僕にとって、大人と話すのはハードル高いし。とりあえず、食材が傷まないよう冷蔵庫に入れてから、詳しく聞いてみようかな。

「先にそれ入れちゃおうか、それからちゃんと話してね。お金はその後でいいよね」

「はいなのです!」

 元気のいい返事。そんな愛らしい笑顔したって騙されないぞ…… そう騙されちゃダメだ、騙されちゃ。



「さて、君はどこの子で、うちで何してるのかな?」

 食卓を挟んで、お互い椅子に座ったところで聞いてみた。

「むうぅ ボクは、子供じゃないのです」

 身長的に子供にしか見えないんだけど、ウサギのぬいぐるみ抱いた胸のふくらみは、大人の女性っぽいし。髪がふわふわしてて、オレンジ色でオシャレなとこもそうだ。逆にさっきからの行動は子供っぽいし、ふわふわなメイド服もそれっぽい。

「ホウリィは今、死天使なのです」

「してんし…… って?」

 聞いたことない単語だけど、ホウリィの茶色い瞳は真剣そうだし。

「生きものは、みんないつか死ぬの。その魂をお迎えするのが、死天使のお仕事」

「…………それって、僕を迎えに来たってこと?」

「はいなのです」

「僕、まだ死んでないよ」

 ずっと不登校で、高校も行かずに引き籠もりって、社会的には…… かもだけど。

「神さまが選んだ魂を刈り取るのも、死天使のお仕事なのです」

「……僕を殺しに来たの?」

 こんな小っちゃい子が、人を殺せると思えないし。もしかして、厨二病的な遊び?

「はい。だけど最後の裁定まで半日くらい、まだ時間があるのです」

「そうなんだ」

 いよいよ厨二病っぽい。つき合うのも面白そうだけど、さっきから眠くてたまんないんだ。僕はいつも朝までゲームしてるし、昼はずっと寝てる。マイちゃんに会うため、早朝の散歩はかかさないけどね。

「だから今のうちに、やりたいこと何でもやっちゃうのです!」

「はいはい。眠いから僕は寝るね、起きたら遊んだげても…… ふぁ」

 なんて言いながらあくびしてると、椅子が倒れる音が……

バタン

 ホウリィがピョンと食卓飛び越えて、僕の膝に乗ってくるし。

「ふぇ? なに」

「男の子だったら、もちろんエッチなことも。お姉さんにまかせるのです」

 カワイイ顔が間近に迫ってくる。桜色の頰、潤んだ茶色い瞳、口からよだれが一筋垂れてるし。押しつけられる胸がふにふに柔らかくて、確かにオッパイぽい。

「おっ お姉さんって…… 君、いくつなのよ?」

「ぅん、人間だと二十歳くらいかな。ごうほう合法、おっけぇなのです」

 いや、ぜんぜん年上に見えないし。合法って…… ロリキャラの自覚はあるんだ。

「えっと僕、好きな子いるんだ」

「ほぇ! うらやま…… いいね。告白した? つき合ってる? エッチした?」

 ウサギのぬいぐるみで、頰っぺをポンポン叩かれる。スゴい食いついてくるけど、そんなんじゃないから、そんなんじゃ。

「そんなの無理だよ。マイちゃんとは、朝の散歩のとき挨拶するだけなんだ」

「それだけなの。向こうはどう思ってるんだろうね?」

 どうなんだろう? マイちゃんは素直で優しそうだし。ツレの子がいなかったら、僕ん家まで来てくれそうな気はするけど、どう思ってるかっていうと……

「分かんない。でも、頭を撫でると嬉しそう」

「撫で撫でを許すって、それもう相思相愛なのです。告白しなきゃ!」

「むりむり無理、そんなんぜったい無理」

「じゃあ、ボクで練習するのです」

 告白の練習って言うけど、言葉で伝えられるかな? それに……

「この体勢で、告白はないと思う」

「えーっ 抱っこは基本なのです」

 そうかな? 順番ちがう気がするけど。でも、マイちゃん抱っこしてみたいなぁ。そんなん考えてると、ホウリィが僕をじっと見つめてくる。これって、告白待ち?

「えっと…… すっ 好きなんだ、マイひゃん」

「ぶーっ だめぇ~」

 僕としては頑張ったつもりだけど、緊張で噛んじゃったし。そりゃ、ダメだよね。

「マイちゃん、好きだ」

「うーん、もうひと声ほしいのです」

「マイちゃん好きだ、つき合ってください」

「まあまあなのです。次は、撫で撫でしながら言って欲しいのです」

 いや、さすがに順番おかしいって、それは。君、大丈夫?

「えーと、撫でなきゃダメ?」

「撫で撫では、マイちゃんきっと嬉しいのです」

 そうかなぁ、確かに嬉しそうだったけど。告白のタイミングでって、どうなの?

「じゃ じゃあ、いくよ」

「どうぞなのです」

 柴犬の付け耳の間に、そっと手を乗せて撫でてみる。マイちゃんとは違う、ふわふわなオレンジ色の髪に手の平をくすぐられて気持ちいい。目を細めてお餅みたいに蕩けてる顔も、スゴく可愛らしくって、なんだかドキドキしちゃう。

「ふみゅ~ 頰っぺも撫で撫でして欲しいのです」

「え…… うん」

 言われるままに、小っちゃくてぷくぷくカワイイ顔を、両手で包むように撫でる。

「ふにぇ~ 気持ちいいのです」

 ホントは、自分が撫でてほしかっただけじゃ。なんて思いながら撫でる頰っぺが、ぷにぷにもちもちで産毛の感触もスゴく気持ちいい。

「耳のうしろも撫でていいのです」

 何故か許可されちゃった。カワイイからまあいいかって、指先を滑らせる。

「ん? あれ……」

 ふわふわオレンジ髪をどこまでかき分けても、耳が…… 無い!?

「んっ ふぅうん」

 思ったより上に耳があって、指入れちゃった。ごめんと謝りつつ、フサフサの耳をさぐる。フサフサ? 気になってスーと引っ張ってみると、長~い獣耳が現れた。

「にぎぃい…… お耳引っ張るのだめぇ!」

「えっぇええ!!」

 ふわふわの髪に紛れて分かんなかったけど、摘まんだのはまるでウサギみたいな獣耳だし、君ってケモ耳キャラだったんだ。ビックリしたけど、カワイイねぇ。

「ぎぃいい! 引っ張るのやめないとお怒りなのです」

「ごっ ごめん」

 怒られそうになって慌てて指を離すと、カワイイ獣耳は元どおりパタンと垂れる。ホウリィが首をブルブル振って、そのあいだ揺れていた獣耳も、やがて落ち着く。

「ご主人ひどいのです」

「ごめんなさい。……君、人間じゃないんだね」

 獣耳は髪に紛れちゃったけど、そうと知ってれば見分けるのは簡単だ。カワイイ。

「ホウリィは死天使だから人間じゃないし、前はウサギだったのです」

「へぇ…… ウサギさんなんだ、カワイイね」

 まるで異世界もののゲームみたいだよ、リアルで会えるなんてラッキーだね。

「ボクはちょっぴりおこなので、あとはご主人ひとりで練習するです」

「ホントにごめんね」

 ホウリィがピョンと膝から降りてくれて、僕はやっと解放された。

「さて、ボクはお昼ご飯を作るです」

「えっ 作れるの?」

 馬鹿にしてるんじゃなくて、背が小っちゃすぎて調理台にぜんぜん届いてないんだよ。そんなんで料理なんて、物理的に不可能だろうと思う。

「むー 台がいるのです」

 そう言った姿が、ヒュッと消えた。それからスゴい速さで家中を走り回ってたかと思うと、マンガ雑誌や辞典とか見つけてきて、調理台の前に並べて積み始めた。

「速ぇえ!」

 君、何人いるのって思うくらい、本取り行って戻ってくる速さが異常だ。あっという間に踏み台をしつらえると、その勢いのまま冷蔵庫から食材出して料理し始めた。

「あの…………」

 口はさむ隙がないし。全滅の卵をボウルにあけて、殻を手早く取り除いたり、スッゴく手際がいい。そんなこんなで、なんでお昼ご飯つくるのか聞きそびれちゃう。

「ご主人、ちゃんと練習しないとダメなのです」

「うわっ と」

 やるからやるから、包丁振り回すのはやめて。

「お昼ご飯食べて元気つけたら、告白しに行かなきゃなのです」

 なるほど、ホウリィの中では僕のスケジュールが決まってるらしい。

「……あ、あっちでやろうかな~」

 食卓のレシート拾って、包丁が届かないようリビングに向かう。ホウリィの話を信じたわけじゃないけど、僕への料理なら食材代は出してもいいと思うし。海外にいる両親から、仕送りだけはたっぷりあるからね。

 実際、両親の愛情は優秀な弟にだけ注がれてて、僕は自宅の管理人程度の扱いなんだよな。干渉されないのはいいんだけどさ、ぜんぜん怒られないのも寂しいね。



「ふみゅ…… ご主人 しゅっきぃ」

「……うぁ なに?」

 股間にモゾモゾした違和感おぼえて、目を覚ました。どうもリビングのソファーで爆睡してたらしいけど、なんか気持ちいいし。ボーッとしながら手を伸ばすと……

「何? このふわふわ……」

 硬くなったアレのかわりに、柔らかい毛玉に手が触れた。なんだか、撫で心地に覚えがあるような気がするし。何だろうって思って起きて、ビックリだよ!

「君! 何してんのさ」

「……はにゃ?」

 僕の股間に顔を埋めてるホウリィを、あわてて起こす。寝ぼけ顔から僕のズボンに、よだれが糸引いてるし。これってどうゆう状況? 寝てる間に、何があったの?

「おふぁようなのれすご主人」

「…………おはよう。で、何してたの?」

「むぅ お昼ご飯できてご主人呼びに来たら、練習しないで寝てるのです」

「サボったのは謝るよ、ごめん。……それで、どうしたの?」

「ご主人の匂い嗅いでたら、ボクも寝ちゃったのです」

 いやそこは、起こそうよ。それに、なんで匂いなんか嗅ぐのさ。

「……どうして匂いなんか?」

「匂いは大切なのです。スンスン……」

 そう言ってまた、僕の股間を嗅いでくるし。

「ちょいちょいちょい、ちょっとぉ!」

「匂いが濃ゆくなってるのです、ふへぇ……」

 にへらって、だらしなく笑うし。美少女が台無しだよ、それじゃ変態じゃん。

「ダメだって、恥ずかしいから」

 あわてて、ホウリィのおでこを押し返す。僕は、マイちゃん一筋なんだから。

「ご主人のケ~チぃ~」

 そんなお餅みたいにふくれてもダメだよ、カワイイけどね。それより、

「はいこれ、レシート分のお金。ちょっと多いけど、お釣りはいらないから」

 股間の反応をごまかしつつ用意してた紙幣を渡すと、ニッコリ笑うホウリィ。

「わぁあ、お小遣いありがとう。ご主人優しいのです」

「……えっと、食材代だよ」

 無邪気そうに喜んでるホウリィは、たぶん無自覚なんだと思うけど、なんだか外堀埋められちゃいそうな気がするし。いちおう、念押ししてみた。

「そうなのです、お昼ご飯」

 そう言いつつ、がま口の小っちゃい財布に、紙幣そのまま押し込もうとするし。

「あ~ クシャクシャになちゃうよ、それじゃあ」

「はにゅ?」

 見かねて丸まった紙幣とりあげて、いったん開いて伸ばして、いっかい二回三回折りたたんでからお財布に入れてあげると、ぱぁあっと笑顔になるホウリィ。

「ご主人しゅごい、天才なのです!」

「いやこれ、普通だから……」

 こんなんでスゴいなんて…… 料理の方は大丈夫なの?

「ご主人早く、お昼ご飯なのです」

「ちょっと、そんなに引っ張らないでよ」

 まさかと思うけど、大炎上とかしてないよね。なんて不安になりつつ、ホウリィにグイグイ引っ張られて、キッチンに向かった。



「ご主人、おいしい?」

「美味しいよ! スッゴく」

 キッチンは無事だったし。ふわふわ卵のオムライスが、スゴく美味しい。

「えっへへぇ、ホウリィだって天才なのです」

「うんうん、天才だ」

 話し合わせて、ちょっと大げさに褒めてみる。じっさい半熟卵の食感は絶品だし、中のチキンライスの味付けもいいんだけど、具材の大きさがバラバラで火の通り方が微妙だね。まあ、お肉以外は生でも食べれる具材ばかりだから、問題はない。

「君も食べなよ」

 ちなみに、ホウリィの前のオムライスは、ケチャップで「ばくの(ぼくの?)」って書いてあるし。僕が食べてるのは「ごししんがんばえ(ご主人頑張れ?)」だ。

「はいなのです」

 ホウリィが変な握り方でスプーンを使い始め、僕は野菜スティックに手を伸ばした。そう、生野菜も添えられて、美味しくてバランスのいい手料理。見た目は子供っぽいけど、こんなとこはお姉さんみたいだし。君って、なんだか不思議だね。

「君、食べるの早いね」

 ぜんぜんスプーン使えてなくて、皿に口をつけて食べてるし。生野菜には何も付けないで、シャクシャク囓ってる。まるで…… ウサギ?

「ご主人も早く食べるです」

「どうして?」

 聞いてる間に食べ終えたホウリィは空の皿を流しに入れて、僕の横にやって来た。今気づいたけど、君って全ての動きが素早いんだね。何かのスキル持ちかな?

「食べたら、お風呂に入るのです」

「……えっと、何で?」

「告白の前は、せいけつにしなくちゃなのです」

「ああ、清潔に…… と、ごちそうさま。凄く美味しかったよ」

 どうやら、スケジュールはまだ進行中らしいね。急かされて食べ終えて、後片付けを始めるホウリィを手伝おうとしたら、また急かされちゃう。

「お風呂に早く、時間がもったいないのです」

「う、うん」

 勢いに押されて、素直にお風呂に向かう。もうちょと味わって食べたかったなぁ、なんてひとりごと呟いちゃう。自分以外の手料理なんて、ほんと何年ぶりだろうね。

「へぇー、お風呂も入れてあったんだ」

 めんどくさくて、いつもはシャワーで済ませるから、これも何年ぶりかな? かけ湯をしてゆっくり湯船に漬かると、スッゴく気持ちいいし。お風呂っていいね。

「これからは、毎日入ろ……」

パーンッ!

「お待たせなのでぇ~す!」

 勢いよくドアが開いてそっちを見ると、スッポンポンの柴犬付け耳の美少女!

「な! 何?」

「にひひぃ……」

 フリーズした僕にニッコリ微笑むホウリィ。タオルで隠すとかなしに、正々堂々と惜しげもなく全裸だし。小っちゃくてコロコロした幼児体型なのに、大きなオッパイをぷるぷる揺らしてて、女の子の大事なとこまで見えちゃいそう……

「ご主人といっしょ、お風呂なのです」

ドッボーン!

「ぶっ ……わぁ!」

 ホウリィが湯船にピョンと飛び込んできて、お湯を盛大にぶっかけられた。なんなのこれ、男子の入浴中に女子が飛び込んでくるなんて、どうゆう現象?

「ぬふふぅ…… ご主人ずぶ濡れだぁ」

「……って、君のせいじゃん」

「ごめんなのですぅ…… にひぃ」

 ずぶ濡れで目も開けられずにいたら、小っちゃい手が優しく顔を拭いてくれる。それで目を開けると、カワイイ美少女の笑顔がキスできそうなほど近くにあって、ドキッとさせられた。焦って下向くと、お湯に浮かぶオッパイが目に入るし。お湯の中ではホウリィのぷにぷにカワイイ足が僕の足に絡まって、産毛の感触がヤバい。

「うぁ ……ダメ」

 股間のアレが限界を訴えてる、一瞬でカチカチだよ。女の子の裸だって直に見たことないのにさ、今まで意識しないようにしてた女の子特有の甘い香り、それも濡れた香りに襲われちゃうし。そんな甘いのがお湯に溶けてくる気がして…… もしかして僕たち、もうお湯を介して繋がっちゃってない? ヤバいよヤバいって……

「ふにゅ?」

 両手でアレを隠して、不思議そうなホウリィから顔をそらす。逃げなきゃだけど、カチカチなの見られちゃうし。これ、湯船から一生出れないやつじゃん……

「ご主人 だーめ!」

 ちょっとキツい口調のホウリィに、小っちゃい手で掴まれて、正面向かされる。

「ホウリィのこと、そんなに嫌い? ちゃ~んとボクを見てくれないと、もうご飯作ってあげないぞ」

 カワイイふくれ顔がさらに近い、もうキス寸前だし。オッパイが胸に当たってる。

「ちっ 近い…… よ」

「地界? そうここは地界なのです」

 何言ってるか分かんないし。アレが、理性がマジに限界なんだ!

「くっついちゃダメ! 離れて!」

 なりふりかまっちゃいられない、両手でホウリィの肩つかんで押しはがす。

「痛っ ご主人…… 恐い」

 初めて見る、ホウリィのおびえた顔。強くし過ぎちゃった? ゴメンと謝りながら、初めて自分から触った女の子の柔らかい肩から、手を離した。

「やっぱり、ホウリィのこと嫌い…… ん、お腹に何か当たってる」

 また、距離つめてくるし。アレの先がお腹ってか、これって女の子の大事なとこ?

ビュッ

「わぁああー! 事故だぁあ」

「ひゃん!」

 アレが暴発し始めちゃって、あわてて湯船から逃げ出す。つもりだったけど……

バチャン ゴッ ピュ ピュッ

 湯船の縁で滑って倒れちゃった。ヤバいよ! まだ出る、見られちゃう!

「逃げちゃだーめ!」

 後ろから腰つかまれて、小っちゃい手がビクビクしてるアレを……

「出すのがまんしたら、病気なるです」

「はひぃ…… ?」

 そんなことある? って思う余裕もないよ。あんなカワイイ手が僕のアレを優しく撫でてくるし。お尻にぴちゃぴちゃって、舐めてるの? 何それぇ? 

「んっ ちゅ…… ほら、最後までびゅっびゅして、お姉さんが手伝ってあげる」

「うっ わぁあああ……」

 柴犬付け耳ウサギっ娘ロリキャラお姉さん(設定盛り過ぎでしょ)が僕のタマタマ舐めてるよぉお! こんなのダメダメ、マイちゃんたすけてぇ!

ピッ ドピュッ  ビュービュー ビュー

「……ぁあぁああ」

「ぴちゃぴちゅ…… ご主人しゅごい、いっぱい出てるのです」

「マイちゃんごめぇぇえーーーーん!」

 マイちゃんの笑顔を思い出した瞬間イっちゃったよぉ…… 別の女の子にされながらって、最低じゃん僕。もう………… 死にたい。

「うん、ちゃんと最後まで出せたね。ご主人えらいのです」

 偉いなんて、そんなの言われたことないし。僕が偉いわけないじゃん。

「ハァ ハァ…… 僕もう…… 死にたいよ」

 言っちゃったよ、いつも言わないように考えないようにしてるのに……

「……本当にそれがお望みなら、もう直ぐ叶うかも」

「? ……そっか」

 例の厨二病設定で、たしかそんなこと言ってたね。そんな優しく、悲しそうな顔で言われると信じそうになっちゃうじゃん。

「それまでしっかり生きなきゃなの、ボクがお手伝いするです」

「優しいね、君。ありがとう」

 パァって明るいホウリィの笑顔見てると、なんだか、こんな僕でも生きてていいんだなって思えてくるよ。ありがとう、まるで天使だね君は。



「赤ちゃんのもと、もったいないのです。クンクン……」

「うっ…… 早く流そうよ」

 僕が出したの嗅ぐのは止めてよ、無駄遣いは自覚してるし。ゴメンだよ。

「ご主人元気づける思たけど、しげき大きかった?」

「それで全裸…… 気持ちは嬉しいけど、刺激強すぎるし。困るよぉ」

 ぷるぷるオッパイから目をそらしてたら、バスタオル巻いて隠してくれた。でも、隠れたら隠れたで、気になっちゃうし。困ったもんだよ童貞は、はあ……

「ご主人、洗ってあげる」

「じっ 自分で洗えるし、いいよ」

 いきなりアレから洗おうとするし。泡だったスポンジ取り上げて、自分で洗うよ。

「じゃあ、背中を洗うです」

 素手に石鹸つけて、背中を撫でてくれる。小っちゃい手の感触が、くすぐったくも気恥ずかしい。時々アレ狙って、手を伸ばしてくるのは困るけど。ガードガード。

「ご主人には、告白がんぱってほしいのです」

「それなんだけど…… 僕、告白とか行けないよ」

「ふぇ どうしてぇ?」

 ガバッって、無茶な角度に引っ張るし。むちうちになっちゃうよ、痛てて……

「ご主人、今日死んじゃうのです。変更なるのほとんどないから、もう決まってると同じなの。死んじゃう前に好きって言わなきゃ、もう言えない。きっとずっとずっと後悔、ぜったい後悔するのです!」

 涙いっぱいためて、そんなひっしに言われると、心が揺れるけど……

「うん…… でも、マイちゃんには大切な家族がいるし、マイちゃんの生活を邪魔しちゃいけないと思うんだ。僕が死んじゃうっていうなら、なおさらにね」

 そう、ただの引き籠もりの僕なんか、迷惑に決まってるし。僕のマイちゃんへの想いは秘めておくしかないんだ、彼女を困らせちゃいけない。

「……むむぅ、マイちゃんきっと待ってるのです」

「行かない、行けないんだ」

「うぎぃい…… ご主人のバカァ! こっち来て」

 また無茶な角度に引っ張られて、タイルの上に尻餅ついちゃうし。何なの?

「痛いよ…… 何?」

「ご主人、ここ見るです」

 湯船の縁に腰掛けたホウリィが、ガバッと足ひろげて、女の子の大事なとこが!

「目つむっちゃダメ、ちゃんとボクの見て!」

 怒られちゃって、閉じた目を恐る恐る開けると、人生初めて見る女の子の大事なとこ。中の複雑な形してるとこまで、大胆にひらいて見せてくれる。

「どう?」

「どうって………… ゴクンッ」

 見入って思わず、唾を飲み込んじゃう。きれいな肌色でカワイイ二重のヒダヒダ、下の方にある小っちゃい穴がアレが入るとこ? その穴から透明な滴が垂れてる。

「ひんっ こっ こうふん…… した?」

「えっ と ………………………………した」

 仕方ないじゃん、人間の本能なんだし。アレがまた、カチカチになっちゃう。

「んぅ ……告白したら、マイちゃんのこれが、ご主人のになるです」

「…………そう かな?」

「うぎぃい! かなって? かなって? もぉ! ご主人、女の子の気持ちぜんぜんわかってないです! マイちゃんだって、きっときっと待ってるの!」

「そっ そんな…… 痛た」

 バチンと太腿に挟まれて、見上げたホウリィの顔が真っ赤だった。怒ってるっていうより、恥ずかしがってるみたいだし。僕を励まそうと無理してる?

「もうこうなったら、ボクがご主人わからせるです」

「えっ ……痛た!」

 そのままドンって押し倒されちゃって、僕の胸の上にホウリィが尻餅をつくし。今のは結構痛かったよ、おい。って思ってると……

「ふにゅ ここ…… かな?」

「ちょいちょいちょい、何してんのぉ!」

 馬乗りになったホウリィが、僕のアレを彼女の大事なとこに押し当ててるし。さっき確かに濡れてた熱いのに触れて、アレがまた暴発しそうだよ!

「ホウリィでエッチの練習すれば、ご主人きっと勇気でるのです」

「そっ! そんな…… それ、君はいいの?」

「……うん、ボクはだいじょうぶ。もう大丈夫だよ、ご主人」

 自分に言い聞かせるように呟くホウリィの顔が真っ赤で、零れそうなほど涙ためてブルブル震えてるし。これって…… 怯えてる?

「もしかして君、初めてなんじゃ?」

 ビクッてなって僕を見下ろすホウリィの顔が、どう見ても図星だ。

「やっぱり、そう。無理しないで……」

「きさまに何がわかんだ! ボクだって ……の赤ちゃん生みたかったんだよ!」

 涙ポロポロこぼしてるし。赤ちゃん? 赤ちゃんって君、何があったの?

「ウサギじゃダメ…… にんげん生まれたい」

「君、何があったの? それって、つらいことなんだよね」

 とにかく危ないから、引き上げるようにホウリィを抱きよせる。限界寸前のアレがスルッと空を切って、ひと安心。と思ったら、小っちゃい手にギュっと抱きしめられてヤバいし。こんなん気持ちよすぎて、童貞にはつらいじゃん。

「ご主人しんで、ホウリィもしんで…… 何十年も死天使やってお迎えたくさんしてるのに、にんげんいつなれるの? ボク、にんげんでご主人あいたい」

「えっと…… そうなんだ」

 そのご主人って僕のことじゃなさそうだし。まさかそれって、厨二病設定とかじゃなくって本当リアル

「ホウリィはウサギだから、ご主人幸せできなかった」

「…………君にそんなに想われて、その人は幸せだったと思うよ。きっとそう」

 クシャクシャな愛らしい顔から、涙やら鼻水を拭き取ってあげる。

「そう…… かな? でも、うん ……ありがと」

 チュッと、頰っぺにキスしてくれるし。はにかんだ笑顔が、スゴくカワイイ。

「ホウリィのことはいいのです。今はご主人のことなの」

「うっ うん……」

 話が、僕の方に戻っちゃったし。ホント、どうしよう。

「どうするですか? 時間ないのですよ」

「えっと…… 明日じゃダメ?」

「だーめ! きさまに、あしたは来ませんのです」

 本当マジか? そう言われても、そもそも僕はマイちゃんに挨拶したり、たまに頭を撫でさせてもらえるだけで十分なんだし。告白なんて、考えたこともないんだよ。

「だったらもう、僕の好きにさせてくれないかな」

「むぅう ……ボクは、ご主人に幸せなてほしいのです。今日だけでも」

 幸せ…… 幸せか、幸せってどんなんだっけ?

「僕の都合に、マイちゃん巻き込むのは違うと思うんだ。巻き込めないよ」

「にぎぃい ご主人のいくじなしぃ」

 小っちゃい頃、両親と一緒に過ごしたのは幸せだったかな。そのあと弟が生まれて、お世話したり一緒に遊んだのは幸せだったよ、確かに。いつから今みたいに……

「そう、僕は意気地無しなんだ」

「ぐぎぃい ……だったら、ボクがご主人幸せするです」

「そうゆうのも違うと思うんだ」

「うだぁあ ……もう知らない! きさまなんか浮遊霊んなって、永久にマイちゃんのストーカーやってればいいんだぁああ! 勝手にしろぉおお、バァッカぁああ!」

 一気にまくし立てて、ピョンと飛び去るホウリィ。脱衣所のメイド服とウサギのぬいぐるみ抱えて、スゴい速さで走ってっちゃった。本当マジ、一瞬だったよ。

「それ…… いいかも」

 マイちゃんの守護霊ライフ? いいんじゃないかな、それ。



「あっ いた」

 ホウリィはキッチンの隅で丸くなってた。服も着てるし、心配はなさそう。

「そっとしとくか」

 食材代はあげたから、このまま帰っちゃっても問題はないだろうし。そりゃ、ご飯にお風呂とか、僕なんかを気づかってくれてありがたいけど、しょうがないよ。

「オムライス凄く美味しかったよ、ありがとう。お風呂も…… ごめんね」

 せめてのお礼を伝えて、いつもどおり自室に籠もる。

 さて、どうしよう? 居眠りとお風呂で眠気とんじゃったし。ゲームかマンガかなぁって、PC起こして電書のフォルダ開こうとしたけど、なんとな~く黒歴史フォルダ開いちゃった。開くのいつぶりかな、懐かし恥ずかしで赤面しそう。

「うわぁ こんなん書いたなぁ」

 自作の小説が数本、ネットに投稿したけど閲覧数ぜんぜん少なくて、いいねも付かなかったやつ。あと、設定だけの文書ファイルがたくさん。その中の一つが目について、開いてみる。タイトルは「柴犬転生日記 お迎えの死神が美少女だった件」

「少なっ タイトルとキャラ設定だけじゃん」

 まあ、これ開いたのホウリィの話を聞いたからだし。

「死神って、地獄からの使者で、ネガティブなイメージだけど……」

 天国からのお迎えなら、天使が来るの理にかなってるし。なんかさ、ポジティブなイメージでよさげじゃん。

「あの子も、ポジティブっぽかったしね」

 全文消去して、ホウリィとの出会いからの顛末を打ち込んでく。あまりにも情けないから、僕のことは少しカッコ良くしてもいいよね、うん。

「筆、乗ってきた…… 冷たっ!」

 調子のって、いろいろ脚色してると、頰っぺに冷たいモノが押しつけられた。

「何?」

 逃げつつ振り向くと、棒アイス持ったホウリィが、ニッと笑ってる。

「お風呂上がりにアイスクリーム、忘れてたのです」

 うん、たしかレジ袋に入ってたね。でも、袋から出して押しつけるのは、おちゃめすぎないかな? 頰っぺにチョコとか付いちゃったじゃん。いいけど。

「さあご主人、食べるです」

 手渡されて一口かじる。外は甘さ控えめのチョコに香ばしいナッツの粒が入ってるし、中のアイスは濃厚でバニラの粒が甘く香ってて、これ美味いじゃん。

「ボクも、いたらくのれふ。うちゅっ……」

「うわっ……」

 ボクの頰っぺに付いたの、強引に舐められちゃう。それから自分のを食べ始めるホウリィ、今までで一番カワイイお餅みたいな蕩け顔。

「う~ これこれ、これが楽しみだったのです。もう、ウサギに戻れないぃぃ!」

 スッゴい幸せそうで何よりだし。見てるだけで、楽しくなっちゃう。

「アイス好きな…… んぐっ」

「ご主人こっちも食べてみるです」

 言う前に、自分が食べてたの強引に押し込んでくるし。間接キスじゃん、これ。

「こっひも、うはいね」

「でしょでしょ、ボクもいただくです。はぷぅう」

 って、僕の食べかけを躊躇なく囓っちゃうし。くっそカワイイ!

「さっきはごめんね、励まそうとしてくれたんだよね」

「ホウリィもゴメンなのです。先輩に、むりじいはダメって叱られちゃった」

「先輩? 電話とかするんだ」

 スマホとか持ってるように見えないし。どうしてるんだろう?

「スーサ先輩はしゅごいのです。どこにでもいて、ボクが困るとふぉろーくれるの」

「…………スゴい、いい先輩なんだね」

 遍在してるってやつ? ホウリィも不思議だけど、もっとスゴいの居そう……

「ホウリィしんだ時も、お迎えしてくれたの。あいつは、いいヤツなのです」

「へぇー なるほど……」

 アイス食べ終わったし。今の話を設定として、文書ファイルに打ち込んでみる。

「ご主人、口についてるのです。ちゅっ」

「な えっ!」

 僕の唇、いきなり舐めるし。これもう、間接じゃないじゃん? 君ぃ!

「んちゅ ちゅ ちゅうう…… おいひぃろれすぅ」

「ちょひょひゃ、すいしゅひぃい」

 舌入れて、口ん中まで舐めるし。止めてよぉ、ホウリィの先輩ぃいい!

「っだぁああー ダメだって!」

 前回の反省で、乱暴にしすぎないよう押しはがす。トロンと赤い顔したホウリィから僕の唇に一筋、よだれが糸を引く。

「ふぁああ…… お腹が熱いのですぅ」

 お風呂の時もだし。さっきからこのウサギさん…… 発情してない?

「そんなにアイス好きなら、買ってくるよ」

 逃げ…… ごまかそうと思って腰を浮かせると、肩を押さえられた。

「ご主人行かせるダメ、ホウリィはがまんするです」

 そうしてくれるとありがたい、アレがまたカチカチだし。理性がヤバい。

「そう、遠慮しないでね」

「ぬゅ…… これは、なにしてるですか?」

「ちょいちょい……」

 当然のように膝の上に乗ってきたかと思うと、PC画面をのぞき込むし。ヤバいよ、さっきからホウリィのこととか打ち込んでるのバレちゃう。

「お仕事てれびはしってるけど、字は読めないのです。ウサギだから」

「…………えっと、これは勉強」

「ほぇえ ご主人しゅごい、えらいのです」

 セーフ、セーフ。ウソは言ってないよ、小説書く勉強だからね。うん。

「ありがとう。……よかったら、手伝ってくれない」

「お手伝い、もちろんするのです! ホウリィは何するですか?」

「君とか先輩や天使のこと、教えてほしいんだ」

 膝の上でピョンと、器用に僕の方に向き直るホウリィ。体勢はヤバいけど、笑顔が天真爛漫でエッチさの欠片もなくて助かる。

「天使の勉強なんて、ご主人えらいのです」

「ありがとう。それで天使って……」

 膝の上のホウリィで、キーボードはもちろんモニターもよく見えないんだけど、暇に飽かせて習得したブラインドタッチが生きてくる。やっててよかったなぁと思いつつ、聞き取ったのどんどん打ち込んじゃう。

「……死天使は、天使から選ばれるもあって、ホウリィとかチエみたいなしんだ魂を清めるにも…… あっ スーサ先輩だけ、もと神さまだったのです」

「へぇー 転生前の修行みたいでもあると……」

「はいなのです。ホウリィも人間でご主人会うため、がんぱてるです」

 話があちこち飛んじゃって困るんだけど、笑顔がカワイイから許せるし。まあ、ウサギさんだし仕方ないよね。うん……

「あとあと、何聞きたい? ご主人」

 そんな感じで色々聞けたし、資料には十分かな。ホウリィの厨二病設定なんだか、本当リアルなんだか解んなくなっちゃったし。もう、どっちでもいいね。

「……とりあえず、これくらいかな。ありがとう…… 勉強になったよ」

「どういたしまして、なのです。んっ」

「んん……」

 思わず膝の上の小っちゃい体を抱きしめて、愛らしい唇にキスしちゃった。えっと…… どうしたの僕? 自分でもわかんないよ。

「ぅんん…… はぁ」

「んぅ…… ごっ ごめん」

 トロンとした赤い顔の美少女に見つめられて、思わず謝っちゃう。

「ふに…… どうしてあやまるですか?」

「……急に、勝手にキスなんか………… ごめんなさい」

「ううん。自分からキスできて、ご主人えらいのです」

 こっ こんなのまで褒めてくれるの? 君。

「このまま、ホウリィ食べちゃうますか? ボクはいいのですよ」

「えっ! ぁあっ ちょっと……」

「にっひひ…… ご主人ガンバ、フレーフレーご主人~」

 冷やかしなんかじゃない、はにかんだ笑顔と、真剣な瞳に見つめられて気がついたよ。僕、ホウリィのこと好きになっちゃったんだ。うわぁあ…… マイちゃん一筋とか言っといてさ、スッゴい浮気者じゃん。

「ちょっと…… 考えさせて。ごめん」

「はい、ホウリィは夕ご飯作ってきまするのです。ちゅ……」

 今度はホウリィからキスしてくれて、ピョンと膝から飛び降りる。

「うん……」

 そのまま部屋から出しなに、はにかんだ笑顔で振り返って言う。

「食べれるになたら、呼ぶですよ。ご主人ガンバなのです」

「…………うん」

 そのまま行っちゃったかと思うと、ドアから顔だけ出してニッコリ笑う。

「あっ キッチンでにいづまプレイしまするか? ホウリィはおっけぇだけど、初めてエッチは、お布団がうれしいのです」

「……君が嫌なことはしない」

「あっは しゅごいご主人、女の子に優しい。えらいのです!」

 愛らしい笑い声を残して、ウサ耳の美少女はキッチンへと消えた。



 ヤバいよヤバい…… いつの間にか、する前提の話になってるじゃん。独りになって冷静に考えると、好きだから必ずエッチするわけじゃないよね。プラトニックに、お友達でもいいんじゃない? マイちゃん嫌いになった訳じゃないし。

「だぁああっ それより今は……」

 煩悩は、ひとまず置いてPCに向かう。

 まず、ホウリィのお話ファイルを印刷にかけた。印刷待つ間に、出会ってからの顛末を追加更新する。それから、印刷したのを机横のベッドに並べて広げてく。聞いたままぜんぜん整理してないけど、こうすれば全体が一度に見れるからね。あとは、ネット検索で天使とかの情報調べて、サブモニタに出しとく。資料だいじ。

「なんか急に、創作欲がね……」

 雑記ノートひろげて、資料とか見て思いついたことを殴り書いてく。そこからお話に落とし込みながら、線でつなげたフロー図的なの作る。

「ホウリィの先輩とか後輩のエピソ入れると、話がひろがるね」

 ヒロイン三人で三章構成、もちろんホウリィがメインヒロインで第三章目。

「ぷろぷろ、プロット~」

 PCに新規文書を二つ。一つに世界観やキャラ設定、もう一つはプロット……小説の設計図だね、二窓で平行作業と。テンション上がってて、かつてない速さで進んじゃうし。ホウリィのおかげだね、きっと。

「ほぞん保存~ だいじ大事」

 新規フォルダに保存、フォルダ名は適当に…… デスロリ。さらに、三章分で文書ファイルを三つ作成。三窓ひらいて、各章分のプロットと設定をコピペ。

「PCマジ便利。作ったヒト、マジで神」

 各章に、キーになるエピソードやセリフを、思いつくまま入れてく。もちろん第三章には、ホウリィとの出会いからの顛末をまるごとコピペ。執筆中は、これらを下に送っといて、文書の頭から作業するんだ。

「僕って、こんな手際よかったっけ?」

 そっか…… いつもはゲームやマンガ、ラノベに走ってばかりだから、進むはずないよね。女子の前でゲームなんてカッコ悪いし、やっぱりホウリィのおかげだ。

「マジ、天使だね」

 ずっと家に居てくれないかなぁ~ なんて思ってると、キスしたときの柔らかい唇の感触とか、見せてもらったオッパイや大事なとこが思い出されちゃう。

「ぼっ 煩悩が戻ってきちゃぅう……」

 いかんいかんと、大切な写真を取り出す。そう、一枚だけ撮らせてもらえたとっても貴重なマイちゃんの写真。う~ん、やっぱりマイちゃんカワイイよ! もちろんデジタル写真だから、たくさんプリントしてるよ。アレがカチカチになった時に使っちゃうから………… うるさいなぁ、男子だから仕方ないんだよ。

「スッゴくカワイイ、好きだよ」

 やっぱり僕はマイちゃんが好きなんだって、再確認。ウサ耳メイドのロリキャラお姉さんに誘惑されちゃった僕を、許してくれる? マイちゃん。

「ほよぉ それがマイちゃんですか?」

 急に横合いから、ホウリィが写真を覗き込んでくるし。柴犬の付け耳に頬をつつかれ、ふわふわの髪とウサ耳が首筋をくすぐる。さらに、女の子の甘い匂いに鼻腔をくすぐられて、この誘惑ハンパないじゃん。

「かわいいのです」

 また当然のように、膝に乗ってくるし。自然に頭撫でちゃう、僕どうしたの。

「……君も僕のこと、変だと思う?」

「ふにゅ? ホウリィは思わないです。愛はいろいろなのです」

「ありがとう」

 ホウリィが不思議な存在だから寛容なのかもだけど、僕の恋心を否定しないでくれるのは、素直に嬉しい。世の中には、認められないだろうしね。

「ご主人おうえんするです、ガンバなのです」

「う…… うん、頑張る」

 ……いつか、きっとね。応援してくれるのって、嬉しいね。

「夕ご飯できてるのです。ご主人、食べるますか?」

「うん…… 保存するから、ちょっと待って」

「はいなのです」

 開いてるのぜんぶ、確認しながら保存してく。ホウリィがベッドに登って画面を覗き込むんだけど、そっちから来られると僕の理性があぶないよ、君。

「ふわぁ 字がいっぱい。ご主人、しゅごいのです」

「スゴくはないよ ……今はまだ」

 すべて保存してから、ネットフォルダにバックアップ。ここって、弟と共用なんだ。小説の感想くれることもあるから、弟は僕にとって貴重な読者だね。

「ふみゅ いつ、なりますですか?」

「わかんない、なるといいけどね……」

 弟のやつも小説書かないかな、作文うまいし。なんて思うけど、飛び級で大学行ったりしてて忙しいだろうから、無理かなぁ。

「ご主人ならきっと、なりますですの。ふぁいとなのです」

「うん、ありがとう」

 ホウリィが応援してくれると、ホント出来そうな気がするから不思議だね。



「うわぁ スゴい!」

「にっひひぃ ホウリィもがんぱったのです」

 ホウリィに手を引かれて来てみれば、食卓に料理の皿が所狭しと並んでて驚いちゃったよ。両親と住んでたときだって、こんなの見たことない。

「ひとりでこんなに作れるなんて、ホントにスゴいよ! 君」

「ぬぅふふう ご主人もっと、もっと褒めるのです」

「えらいえらい、ホウリィ姉さんえらい!」

「にゅふふふぅ くすぐったいのです」

 クネクネ踊るように調理台に向かうホウリィ、何それカワイイじゃん。

 椅子に座った僕は、あらためて食卓の上を見渡した。肉じゃが、焼き魚、きんぴらゴボウ、酢のもの、野菜サラダにウサギに剥いたリンゴまで。一人暮らし長い僕だって、こんなに作ったことないよ。

「スッゴく美味しそう。さあ、食べよう」

「お肉の焼き方、どうするですか?」

 調理台から振り向くホウリィ。フライパンの上には、ぶ厚いステーキ肉が!

「えっと………… わかんないから、普通に焼いて……ください」

「にっししぃ ホウリィもわかんないから、ふつうに焼いてみるです」

ぐぅ~

 ジュージューと肉を焼く匂いに食欲をそそられて、お腹が鳴っちゃう。買ってた食材ぜんぶ使っちゃったみたいだし、信じられないくらい豪華な夕食だよ。

「ほんとは、スーサ先輩に手つだてもらったのです」

「えっ 先輩、来てたの?」

「しぃいい 内緒になのです」

 例の、遍在してるってスゴい先輩かぁ…… せっかくなら、会って話を聞きたかったよな。小説のネタ出しの参考になりそうだしね。

「お待たせぇ~なのです」

「うわぁ 美味しそう」

 ジュアッ パチバチ…… って、焼きたて肉の香ばしい音に感動しちゃう。さっそくナイフとフォークを手にしたところで、笑顔で僕を見るホウリィに気づく。

「君の分は?」

「ホウリィはウサギだから、お肉は苦手なのです」

「そっか…… 僕のためだけに。なんか悪いね」

 ウサギさんリンゴを手に取って、可愛らしく笑うウサ耳メイドさん。

「きさまの最後のばんさんだから、気にするいらないのです」

 また物騒なこと言いだして、カシカシってウサギさんリンゴ囓るし。ウサギがウサギ喰ってると思うとシュールっぽいけど、カワイイじゃん。

「じゃあ、いただきます ……ん? ちょっと硬いね。でも美味しい」

 外がカチカチのわりに中が生っぽいけど、用意されてたソースが美味しくて気にならない。それより圧倒的に肉感スゴくて、これが…… これが幸せなの?

「ご主人、お肉好き?」

「うん、こんなの食べたことないし。スッゴい美味しい、ありがとう」

「にひひぃ よかったのです」

 ホウリィも嬉しそうに笑ってるし。なんだろうこの空間、幸せすぎ……

「いつもこんな…… 仕事してるの?」

 また空気ぶちこわすようなこと言いだして、自分でもよせばいいのにって思うよ。でもさ、どうしても知りたくなっちゃうんだ、いちおうは作家志望だし。

「迷い子…… ご主人幸せなってほしいは、ホウリィのスタイルなのです」

「優しいんだね、君。それで、いつも料理を?」

 ウサギさんはリンゴをひと切れ食べ終え、キャベツをモグモグ食べ始める。僕はステーキに続けて、肉じゃがを頬張った。ホクホクジャガイモに甘辛い出汁が沁みて、肉の旨みに唾液が止まらない。ホウリィの先輩って、スゴい料理上手じゃん。

「一人暮らし励ますは、お料理だって先輩言ったから。今日はがんぱったのです」

「…………なるほど、ありがとう」

 相手の状況によって臨機応変ってことかな? マニュアルどおりの押しつけでもなく。と、持ってきてた雑記ノートに殴り書く、メモだいじ。

「あと、どうていにはエッチなお手伝いだって」

「………………その先輩、ヤバくない?」

 悲しいかな、否定は出来ないけど。後輩へのアドバイスとしては、どうなのそれ? やたらスキンシップ多いのも、それでか。もしかして、そのメイド服とかも先輩の入れ知恵だったりする? メモが、はかどるねぇ……

「あいつヤバい、でもいいやつなのです」

「君がそう思うなら…… いいか。料理のお礼、ありがとうって伝えてくれる」

「はいなのです!」

 うん、魚の焼き加減も絶品だし、どれも美味しい。ご飯がススんじゃう。

「おかわり、どうぞなのです」

 ご飯よそってくれるホウリィが、お嫁さんっぽくて照れくさいし。

「ありがとう」

 こんな暖かい雰囲気の食事って、もう一生ないと思ってたから…… なんてゆうか、今この瞬間が幸せすぎるよ。ありがとうホウリィ。



「ちゅっ ……んっ」

「んんっ はぁ…… キスばっかり、ご主人どしたのです?」

 食べ終えて後片付けの最中、何度もホウリィ抱きしめてキスしちゃう。

「ゴメン…… 僕、どうしたんだろ?」

「にひぃ ご主人ホウリィのこと、しゅきすぎぃ~」

 ホウリィがぜんぜんイヤがってないみたいで、僕も調子乗っちゃうし。なんか止めらんないんだよ、美味しい手料理に胃袋つかまれちゃったってヤツ?

「ふぅ…… んっ。お布団、行きまするか?」

「……………………うん」

 うわぁ…… とうとう誘惑に負けちゃった。洗い物なんかほっといて、そわそわとベッドに向かっちゃう。ホウリィだって、ウサギのぬいぐるみ抱えて腕組んでくるし。これって合意だよね、問題ないよねぇ、ねっ ねっ ねぇええ……

ボスン

「ひゃっ ぅん…… 優しくしてほしいのです」

「ゴッ ゴメン……」

 焦って、いきなりベッドに押し倒しちゃった、はんせい反省。ウサギは繊細だって言うし、優しくしなくちゃね。

「すぅはぁ、いい匂い…… ご主人の巣の中ですぅ」

 僕の布団を抱きしめて、匂い吸ってるし。くっそカワイイじゃん、それ。

「好きだ…… ホウリィ」

「ふぅわぁあ ボクも、ご主人だいしゅき!」

 布団ごと抱きしめると、ちょっぴりビクッと震えて、見上げてくるウサ耳の美少女。桜色に頬を染める愛らしい顔、布団にひろがるふわふわオレンジ髪と、垂れウサ耳。柴犬の付け耳がカワイさに花を添える。

「ふにゅ はわぁ…… ちゅっ ぅん」

 おでこ、ぷにぷに頰っぺ、そして愛らしい唇にキスを繰り返す。

「えっと…… 胸、さわっていい?」

「どうぞなのです。……ふひぃ」

 布団はがしてメイド服の上から、オッパイさわるっていうか…… 揉んじゃう。ぷるぷるでふにふに柔らかいし。アレがカチカチに興奮しちゃう。

「ぅあ…… ん ご主人のエッチぃ~」

「ごっ ゴメン」

「ぅうん、やめなくていいのです。ホウリィのおっぱい、しゅき?」

 正直に気持ちいい…… ずっとさわってたくなる。マイちゃんにはないオッパイ、そう思うと複雑な気持ちになっちゃうけど。僕が好きになるべきは、こっち?

「…………好きだよ。んっ ちゅ」

「にひぃ うれしいのです」

 ボタンを探り当てて、メイド服を脱がせてく。ふわっと鼻をくすぐる、女の子の甘い香りに夢中になって破きそうなるし。ホウリィも手伝ってくれたけど、思いきり乱しちゃう。半脱ぎのウサ耳メイドさんが、僕を興奮させる。

「ふにゃあ ご主人しゅごい、わいるどなのですぅ」

「うん…… ちゅっ ぢゅる……」

 返事する余裕もなく、おっきなオッパイに吸い付いちゃう。お風呂で初めて見たときは目をそらしちゃったけど、もう好き放題に揉んで吸いまくる。

「ふにぃ にゃ ひぃん はぁ…… んっ」

 ホウリィが、ビクンビクン震えながら可愛らしく喘ぐ。もうこれ僕んだよ、誰にもあげないよって思っちゃう。はやく僕のモノにしなくちゃ。

「やん 今さわったら…… ダメなのです」

 パンティに手を伸ばすと、お漏らししたみたいに濡れてる。

「あっ ダメ、ダメぇええ!」

「ゴメン………… そんなに嫌?」

 聞いてはみたけど止められなくて、パンティの上からそっと触れちゃう。ホウリィの大事なところは、ぷにぷに柔らかくて、ぐっしょり濡れててスッゴく熱い。

「ぅあ んっ ……じゃない ないけどボク、へんになっちゃうから……」

「そう…… なんだ」

 感じてるんだ…… 僕なんかに発情してくれてる? カワイイじゃない、スッゴく嬉しい。もっと感じてほしくて、パンティの中に指入れて、熱い滴をかきまわす。

「ひゃん! んぁ ぅんっ ダメなのにぃい……」

「大丈夫、カワイイよ。もっと見せてよ、君のカワイイところ」

 お姉さんぶってたのに、いつの間にか僕のほうが主導権握ってる。

クチュ チュプ チュッチュ……

「ぅあっ んっ はぁ あぁん……」

 熱く溢れてくるのを優しくかきまわすと、ウサ耳の美少女は、カワイイあえぎ声を漏らしてビクンビクン震える。しがみついてきて、僕の服を引っ張るし。

「……んぅ ホウリィばっかり あぅ ご主人…… ずるいぃ ですぅ」

「そうだね…… ゴメン」

 促されて、僕も服を脱ぐ。解放されたホウリィは、真っ赤な顔してハァハァ喘ぎながら息を整えてるし。もしかして、イキそうだったとか?

「ふぅはぁ ご主人、ぱんつもぉ~ えぇい!」

「うわっ ちょいちょいちょっとおぉ~」

 恥ずかしくて残してた、最後の一枚をズリ下ろされちゃった。

ペチンッ

「ぃたっ! ひぃん」

「わわっ ゴメン…… 大丈夫?」

 限界までカチカチになってた僕のアレが、ホウリィのおでこ叩いちゃった。そんな痛くないと思うけど、こんな事故もあるんだねぇ。

「ふっ おちんちんデコピンとは、おぬしやるのうなのです」

「……いやこれ、君のせいじゃん」

 アハハって、二人して笑っちゃったよ。何これ、楽しい。

「にひぃひい ご主人のおちんちん、しゅごいカッコいいのです」

「…………ありがとう。えい!」

 こんなとこまで褒めるなんて、ずるいし。照れ隠しに反撃してもいいよね。

「ひゃん エッチぃ~」

「ふふふ ゴメンゴメン……」

 押し倒してパンティおろすと抵抗なく脱がされるけど、やっぱり恥ずかしいんだね。真っ赤になった顔を小っちゃい両手で隠して、膝を閉じちゃった。

「ねえ、見せてよ」

「はい…… なのです」

 素直に足を開いてくれるホウリィ、怖がらせないようにそっと、足を押さえる。ホウリィのそこは、お風呂で見たときよりも、桜の花みたいに色づいていた。

「きれい…… だよ」

「ふひゅう はずかしい…… のです」

 それに、お風呂のときは一筋垂れてただけの滴が、今は溢れかえってトロトロ流れ落ちて、布団の上に大きなシミをひろげてく。

「スゴく濡れてるね、発情期?」

「あうぅ…… 女の子だって、だって…… せいよくあるのですよ」

 そんなこと言わせちゃって、僕の性欲は限界を超えた。爆発寸前のアレの先を、ホウリィの大事なとこに当てがってみる。そっと抱きしめるように覆い被さって、小っちゃい手をどけて真っ赤になって恥ずかしがる顔を見つめた。

「いい…… かな?」

「ぅひゅ はひぃ…… なのれす」

 かんじゃって、緊張してるみたいだし。ふわふわオレンジ髪を優しく撫でる。

「ちから抜いたほうがいいかも…… 痛かったら言ってね」

「ふにぃい ついに、ついにホウリィにも……」

 なんだろ、頭ん中に何か引っかかってるんだけど、我慢できずに腰をゆっくり沈めちゃう。アレの先がちょっぴりホウリィの中に…… 何これ、気持ちいい!

「うぁ…… だっ 大丈夫?」

「ふひぃ ホウリィだいじょぶ…… だから、はやく……」

 ギュッと目つぶって、何か耐えるようにフルフル震えてるし。アレの先には壁にぶつかったような感触、これが処女膜? え、これ…… 本当にいいの?

「ほっ ホントに大丈夫?」

「にぃい ちょとこわい…… けど、ご主人幸せなてほしぃ です」

 いじらしくって、カワイくってたまんない。ふわふわオレンジ髪かきわけて、おでこを優しく撫でる。それから、愛らしい唇にキスをした。

「んっ 好きだよ、ホウリィ」

「ぅんん ……ご主人、愛してるのです」

 ホウリィの言うご主人の微妙な違いに気づいて、引っかかってた事の答えが解った。今のはそう、僕じゃないよね。気づいちゃったら仕方ない、名残り惜しいとこからアレを遠ざけて、キョトンと不思議そうな顔のウサ耳の美少女に告げる。

「ゴメン、できない……」

「ふにぃぃ どうして? やっぱり、ホウリィのこと嫌い?」

「違う、嫌いなわけない」

 小っちゃくて愛らしい、熱をおびて汗ばんだ背中とうなじに腕をまわし、甘く香る体を抱きしめる。こんなに好きになっちゃうなんて、どうして今……

「にぃいい じゃあ、どうして?」

「……たしか君、ウサギだったときに死に別れたご主人と再会したいから、今の仕事してるって言ってたじゃない?」

「ふにぃ…… そなのです」

「じゃあ、僕なんかとしちゃダメじゃん」

 そう言っても、不思議そうな顔してるし。僕が言うのも変なんだけど、貞操とかどう思ってるんだろ? ウサギだから動物だから、そうゆうの自体ないとか?

「ふにゅう にんげん、いつもそんな言う。なぁぜなあぜ ……なのですぅ」

「人間は………… ふつう、大切な人とだけしかしないんだ」

 やっぱりそう、その感覚で人間に転生したらヤバいんじゃ…… ああ、そのための修行っていうか研修期間みたいなのかも。

「うにぃ ホウリィは、ご主人幸せしたいです。それに次うまれるときは、きおくもからだも新しくなるいいますから、ご主人はボクにえっちしていいのです」

「…………それでも今、君の心が本当のご主人を裏切っちゃうじゃない。僕だってマイちゃん裏切ることになるし。人間だったら、大切な気持ちだと思うよ」

 僕も反省しなきゃだ。男だから童貞だからって、言い訳きかないね。

「にぃいい ホウリィは、きさま幸せできないですか?」

「ううん、僕は幸せだよ」

「ふにぃ ほんとうなのです?」

 本当だよ、だってさ……

「君は、ヘタレで引き籠もりの僕なんかのとこに来てくれたし。美味しいご飯作ってくれて、勉強も手伝ってくれて…… 女の子のことも教えてくれて、大切なものまでくれようとするしさ。それに、僕のマイちゃんへの想いを否定しないでくれたのも嬉しかったし。君のおかげで僕は、スッゴく凄く幸せだよ」

「……ふわぁあ よかたご主人、しあわせならがんぱれるのです。ふひぃ」

 ホント嬉しそうなのがまた、嬉しいね。ホウリィの好意に甘えて、彼女の貞操踏みにじってたら、きっと後悔するとこだったよ。

「にししぃ ご主人、ぎゅうぅ~」

「ふふ…… ギュウ~」

 小っちゃい両手を目いっぱい伸ばして、僕を抱きしめてくれるホウリィ。僕も、愛しいウサ耳の美少女を抱き返した。

「ふにゅう ボクもしあわせなのですぅ」

「うん、よかった……」

 アレが切なそうだけど、このさい無視だ。僕は、ふわふわのオレンジ髪を優しく撫でると、柴犬の付け耳をイタズラっぽく引っ張ってみた。



「でもご主人、出すのがまんしたら病気なるです」

「えっ あ…… そう?」

 なんだか覚えてるよ、このパターン。

「ふひぃ こんども、お姉さんにまかせるのです」

「うっ うん」

 押し倒されて攻守交代か。もう逆らう気にならなくて、身を任せちゃう。ちょっと恥ずかしいけどね。っと、机に伏せてたマイちゃんの写真を手渡してくるし。

「はぃ ご主人は、だいしゅきなマイちゃん見てるです」

「えっ ……と ひゃっ!」

 不意を突いてホウリィが、僕のカチカチのアレを小っちゃい口いっぱいに頬張る。柔らかい口の中で温かい唾液に包まれ、チュプチュプ吸われて舌が絡みつく。

「ちゅ いつれもしゅきなとき、たしていひのれす ……はむぅ」

「うぁ…… ちょいちょいちょ……」

 スッゴい気持ちよすぎ…… 限界だったアレが今にも暴発しそう! 小っちゃい両手でタマタマ揉まれて、アレが喉の奥まで飲み込まれちゃうし。

「んっ じゅっ ちゅ おっ んん……」

「うぁ! ぅう…… こんなの、なんで出来……」

 アレ咥えたまま首をグルグル回すし、お尻の穴まで刺激してくる。エッチしたことないはずなのに、何でこんな気持ちよく出来るのさ?

「ちゅぱっ はぁ…… すーさ先輩に、ならたのです ちゅっ」

「そっ そのひとヤバすぎ…… じゃ うぁあ」

 今度は上下に、じゅぷじゅぷ音をたてて扱かれる。くっ 口でされるのがこんなに気持ちいいなんて…… 自分でするのとぜんぜん違うよぉ!

「ぢゅっ あいつヤバい、性別なくて…… 男も女もなれる ちゅ……」

「うぉ それってぇ…… はんそくだぁ!」

 メモメモって…… もう、メモってる余裕なんかないって! そんなことより、その先輩のアレで練習したってこと? なんか嫌だな…… それ。

「んんっ ちゅ ぢゅ じゅる ふっ ほへぇ?」

 なんか悔しくなって写真を捨てると、手を伸ばしてホウリイの髪を撫でた。

「ふにゅう ホウリィはいいから、ご主人マイちゃん見るです」

「撫でるのは、嫌?」

 ホウリィの頭を抱きしめるように、ふわふわオレンジの髪に指を絡める。

「ふひぃ なでなで気持ちいい、うれひぃのれす」

「よかった…… 君がしてくれてるのに、よそ見なんか出来ないよ」

「あはっ ご主人優しい、しゅきぃい!」

 ウサ耳の美少女は、僕のアレに愛の籠もったキスをして、咥えて吸う。

「うん ちゅぅ じゅる ちゅぷ ふぁ んん……」

「うぁあ…… 好きだ、ホウリィ」

 僕は、僕の股間に顔を埋めて揺れるふわふわの髪を、包み込むように優しく撫でる。ついで汗に濡れた背中の産毛を撫で、揺れるオッパイにも手を伸ばした。

「ふひゅ っん ぢゅうう じゅぷ はぁ…… にゅん」

「くっ そんな吸ったらぁ……」

 ツンと尖った乳首に触れると、ビクンって可愛く震えてアレを強く吸うし。お尻の方から指で大事なとこをさすってあげると、甘い喘ぎを漏らす。女の子だって性欲あるんだね、あたりまえのことだけど、身をもって理解したよ。

「ふぁ…… んんっ ちゅぷ うちゅ ぢゅ……」

「あっ ダメ、でちゃう!」

 ホウリィの反応がカワイイと思っていたら、激しい反撃くらってイキそうなるし。ちょっと出ちゃったのをちゅーっと吸われて、ウサ耳美少女の喉がコクンと鳴った。

「にゅ えんりょ…… いりゃない ちゅっ だひて……」

「そっ そんな…… ぅあ!」

 優しい声に感極まって、ふわふわ髪をギュッと抱きしめちゃう。

ビュッ びゅるるっ

「んんっ んんー むふっ ぅん」

 ホウリィは当然のようにアレを喉奥まで飲み込み、精子を受け止めてくれる。これスッゴく気持ちよくて夢中になっちゃうけど、頭押さえるのはダメなんじゃ……

「ぁああ…… ゴメン」

「……くぅん ぱぁ もっろ、ぜんぶだひぃ…… ん ちゅぷっ」

 のんでる飲んでる…… 僕の精子を。ビュービューって、あとから後から出てくるのチュウチュウゴクゴク飲んじゃうし。気持ちよすぎて、ゾクゾクが止まんない!

「くぅ はぁああ ……だっ 大丈夫なの? そっ そんな」

「ぅんっ ぱはぁ…… ホウリィわ、だいじょぶれふ」

 僕のをすっかり飲み干して、白っぽいよだれを垂らしながら顔を上げるホウリィ。笑顔が愛らしくって、愛しくってたまんない。

「ご主人気持ちよかた? しあわせなたですか?」

「……う うん、ありがとうホウリィ」

 僕の返事を聞いて、嬉しそうに目を細めるウサ耳美少女。やがて、その目から涙がポロポロこぼれ始めたかと思うと、うつむいて…… 顔をしかめる。

「むぎぃぃ なんで、いまそれ言う」

「えっ え! 僕、何か……」

 急に恐い顔して、やっぱり調子にのり過ぎちゃった? 僕……

「ふひぃ! ……ちがうのです。今、でんれい天使が最後の裁定言ったのです」

 あわてて否定してくれてホッとするけど、それってたしか例の厨二病設定の?

「えっと………… それ、何て言ったの?」

「ぬぅ ……裁定はくつがえらぬしっこせよ、なのです」

 ホウリィが真剣な、思い詰めたような眼差しを向けてくるし。ポロポロ溢れる涙を見せられちゃうと、遊びとは思えなくなるじゃない……

「…………つまりそれって、どうゆう?」

 こぼれる涙も拭わずにウサ耳の美少女は、つらそうにつぶやいた。

「きさまころせて、言うてますです」



「……あっ そうなんだ、やっぱり」

 いつも…… いつだって突きつけられる現実は、苦しいモノだった。そんなことを思い出させてくれる、その言葉。嫌なことぜんぶ先延ばしにして、何かを目指してるつもりだった僕の心を優しく突き刺す。

「はい…… なのです」

「…………うん」

 それは、もう終わっていいんだよっていう、やさしいお誘い?

「ご主人、最後のお望み言うです」

「えっと…………」

 のぞみ、望みか? しいてあげるなら、さっきの作りかけ小説の完成か? 他にも書きたいのあるけどさ、今までさんざん時間をムダにしといて、今さらだよな。

「……じゃあ最後にもうちょい、つき合ってよ。ちゅっ」

「ぅん…… やぱり、ホウリィ食べるますか? にひぃ」

 今さら、そんなわけない。

「食べないよ」

「ほよぉ?」

 ホウリィの頭から柴犬の付け耳をはずす、もうこんな気をつかってくれなくていいし。ふわふわオレンジ髪を撫でながら、不思議そうにしてる茶色い瞳を見つめる。

「そういうのは大事に、本当のご主人にとっておいてよ」

「ふにぃ じゃあ? じゃあ?」

「僕を励ましてくれたお礼に、君を慰めてあげる」

「はひぃ? ぅんん……」

 不意をついて愛らしい唇を奪い、優しく舌をからめる。キスとかはノーカンにしてくれないかな? さっきから何回もしちゃってるし。ね、本当のご主人。

「ちゅ…… 発情してつらいよね、たくさん気持ちよくなってね」

「ふぁあ そんにゃ…… あっ ぅう」

 オッパイ揉みほぐして、ツンと尖った乳首を吸っちゃう。ビクンビクン震えるのがスッゴくカワイイね。ついで、ぐっしょり熱く濡れたままのとこにも手を伸ばす。

「ふあぁあ さわっちゃダメぇ!」

 小さく叫んで足とじちゃったけど、太腿の隙間から指入れて、熱く火照った女の子の大事なとこを優しくかき回す。小っちゃい体でクネクネ悶えるのがカワイイ。

「あん あぅん ボク、へんになっひゃうからぁあ…… だぁめぇえ」

「大丈夫…… 恐がらないで、なっちゃっていいんだ」

 この反応…… 変な性癖とかなっちゃわないか、ちょっと心配なんだけど。でも、ずっと我慢し続けってのも可愛そうだと思うし。お礼もしたいから、さ。

「うひぃ そっ そんにゃあ…… あぅんん」

「女の子だってガマンしたら、病気になっちゃうよ」

 ホントはよくわかんないけど、ホウリィが言ったの真似てみた。

「ふわぁ ……うん あっ ふぅうん……」

「そっ ……そう、素直にね」

 やっと素直に体を開いてくれたし、優しく愛してあげるね。

「あっ ごしゅじ…… あぅん はぁあ しゅきぃい……」

 片手でおっぱいを交互に揉みながら、硬く尖った乳首を吸う。もう一方の手は、大事なとこを指でひろげながらかきまわす。ビクンビクン反応するのが、スゴくカワイイし。僕なんかでこんなに感じてくれるんだ、嬉しいね。

「ちゅっ ……どこが気持ちいいか、教えてよ」

 ここ? それともここ? って、探るように愛撫してみる。

「ふひゅ ……あっ しょこぉ いっ ぅあん……」

 素直に教えてくれるし。オッパイと大事なとこの突起を重点的に攻めると、ひときわ激しく反応しちゃってカワイイ。童貞にも分かりやすくて、ありがたいね。

「うにぃ ……ごしゅじんのおちんちん…… ほしいのぉお! あぅ……」

 自分から腰すりつけて、そんな切なそうに泣かれると心折れそうになっちゃう。僕のアレもカチカチになりかけてるし、さっきあんなに出したのにさ。

「そっ それはダメだよ…… かわりに」

 ムチムチの太腿を持ち上げて、露わになった大事なとこに口づけた。

「ふっにゃああ! ごしゅじん、なにしてるますかぁ」

「なにっへ? さっきのお返しだよ。ちゅっ……」

 君だって、口でしてくれたじゃん。敏感な突起を吸って、溢れる滴を舌でかきまわす。ビクビク反応しちゃってカワイイし。ちょっと、そんなに暴れないでよ。

「ふぁ しょこ ……だめっ きたないのれすぅ うぁあ っん……」

「だひぃじょぶだよ …………むひろ、おいひぃかも」

「っ! ふぅあああああぁあん」

 そんな嫌がらなくてもさ、君だって僕のアレ舐めて…… 飲んじゃったじゃん。それに君のここ、なんだか甘く感じるし。夢中になっちゃって、止めらんないよ。

「そんな暴れないで…… 素直に感じてよ」

「ふにぃ ……はひぃ なのれす ぅあっ あん……」

 いつの間にか、スゴい体勢になってるし。小っちゃい体をでんぐり返して、両足のふくらはぎをホウリィの顔の左右で押さえて。舐めてるとこ、丸見えだよね。

クチュ ピチャ チュ チュル クン ピチュ……

「ふぁ あぁう ごしゅじ ボクのなめ…… のんでゅ? ふぅああ……」

 バレた…… って、今さらお互い様じゃん。君の、なんだか美味しいし。

「あぅ あっ しょこ…… いい ふぅうん……」

 素直になってくれたんで大丈夫だろうと離した手を、おっぱいと大事なとこに。敏感な突起を優しく撫でると、ビクンビクン反応するし。

「はぅ しょんにゃあ ……いちろにしたら らめぇえ……」

 シーツをギューッと掴む小っちゃな手。愛らしい顔を真っ赤にして、ふわふわオレンジ髪を振りみだして、垂れウサ耳をパタパタさせる。何このウサギさん、カワイイじゃん。

「にひぃ うっ ……いいぃ ひもちぃ いぃのお! あぅん……」

 もっと気持ちよくしてあげると、舐めて吸うの止めない。ヒクヒク震える処女膜に舌を差し込んで、クチュクチュ刺激すると、小っちゃな体がキュッと跳ねた。

「ぁああ! ひぃ んん しょこ もっろぉ…… あっ あぅん」

ピチャ ピチュ チュッ ジュ チュ……

 お望みのところを重点的に愛撫する。激しくするよりも、そっと優しめなのが好みのようだし。ホウリィの反応に合わせて、舌や指を這わせ続ける。

「あぅ なんか きひゃうの…… こわいよボク、ごしゅじん ひぐぅ……」

 処女膜の奥が、キュンってしてる感じするし。イッちゃう? イッちゃうの?

「ちゅっ だいじょぶ…… だよ、そのまま身を任せて。僕を信じて」

 僕の声に安心したのか、一瞬ちからが抜けた後、小っちゃい体がビクンと跳ねた。

「ふぁ あぅっ ……ああっ! ぁああああああああ……」

 ひときわ激しく喘ぎ、弓なりになって痙攣するホウリィ。小っちゃな足クロスして僕の背中をギュッと抱きしめるし。処女膜の中へちょっと入っちゃった舌を、キュンキュン吸い込もうとする。こっ こんな激しいの…… 

「うぁ! あぅ ふぁぅ…… ふぅうん っん ん……」

 緊張してた体からだんだん、ちからが抜けていく。それでも時々ビクッと跳ねる小っちゃなウサ耳美少女、僕の手の中で可愛らしく喘いでる。

「……だっ 大丈夫?」

 シーツに沈んでゆくホウリィ、隣に滑り込んで優しく抱き寄せる。熱く火照って、しっとり汗に濡れて甘く香る、ふわふわカワイイ…… 小っちゃなウサ耳美少女。

「……ふぁ あぅ ごしゅじ…… んん」

 小っちゃい、ホントに小っちゃくて可愛らしい手で、僕にしがみついてくる。愛おしいよ、ホントに愛おしい僕のウサ耳美少女。今だけでも…… ね。

「……あのね ごしゅじん…… あのね、あのね……」

「? どうしたの」

 僕の腕の中、すーっと息を吸い込んで……

「だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああいしゅっきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃ!」

「うぁああ! うわっ」

 至近距離からの絶叫に耳が驚いて、一瞬なにを言われたか解らない。

「ごしゅじ…… ぅちゅ んんっ ふっ んんぅ……」

 情熱的に唇を奪われて初めて、大好きって言われたことに気がついた。

「ん? んんっ はっ むむむ……」

 大好きと言い返すかわりに、なんども何度も唇を重ねる。お互いの好きという気持ちを表すのに、キスと抱擁だけではとても足りない。それでも、それ以外に思いつけなくて、もどかしいほどにキスを交わして抱き合う。

「……んん はぁ はあ」

「だっ 大丈夫?」

 ホウリィが息を切らして、唇が離れた。

「ふぅ だいじょぶなのです。……ごしゅじん、あのね」

「よかった…… ん、なに?」

 はにかむ笑顔が愛らしくて、ホントに本当に愛おしい。

「ボク…… ボクは今、しあわせだよ」

「……うん、僕も幸せ。ありがとう」

 僕らは、もういちど唇を重ねる。このキスが永遠になればいい…… そう願って。



「……ほら、遠慮しなくていいんだ」

「ふにぃ…………」

 ウサギのぬいぐるみを拾い上げて、躊躇うように僕を見るホウリィ。僕はベッドの縁に腰掛けて、彼女のことを待っている。

「お仕事なんでしょ? 気にするいらない…… だよ」

「…………ご主人、しぬですのよ」

 ぬいぐるみ抱きしめて、おずおずと歩み寄って来るウサ耳の美少女。

「君のためなら…… かまわない、かな」

「! にぃい ふにっ ふひぃ……」

 涙をポロポロ零しながら僕の前に立つ、可愛らしい…… 死天使? 手を伸ばし、ふわふわなオレンジ髪を優しく撫でる。なんどもそう、何度も。

「……ぅあ あぅう ごしゅじん、やさじぃのれふ ずびっ」

「ああ…… ほらほら、ちーんして」

 ティッシュで鼻水を拭いてあげる。ついで、引き寄せてキスをした。

「ん…… はぅ やぱりご主人、ホウリィ食べゅです。ボク、ボク……」

「ダメだよ、本当のご主人に再会するまで我慢。できるよね?」

 誘惑ハンパないんだから、これ以上は勘弁してよ。

「ふみゅ ご主人も生まれかわて、マイちゃん会うまでガマンすゆ?」

「ん? 僕も…… そうしようかな。いや、そうする」

 そうだね。本当に転生とか出来て、マイちゃんと一緒にいられるんなら、きっと僕は幸せだと思うし。そうしたいよ。

「にぃ ご主人がんぱれ、なのです」

「君もね、頑張って」

 頰っぺやオッパイを濡らしてる涙も拭いてあげる。にへッと無理して笑うホウリィ。手にしたウサギのぬいぐるみ、その背中のジッパーを下げて、手を入れて……

「はうぅ ……ご主人痛くすゆ、ごめんなさいなのです」

「…………うっ うん」

 ウサギのぬいぐるみから包丁を取り出して、両手で水平に構えるホウリィ。小さな包丁だ、果物ナイフくらいの大きさだけど、それにしては刃先が鋭くて肉厚で…… なんだか強そう。プロのシェフ仕様かな? 分かんないけどね。

「ひぐぅ うっ ぐす ぅう……」

 またベソをかくホウリィ。その手にした鋭利な刃物に、背筋がゾクリと震えた。

「怖がらないで…… 大丈夫だよ」

 こんなこと言っといて、僕の方は半端なく恐いんだけどさ。それより、ホウリィが凄く怯えてるみたいだし。そりゃあ、恐いよね。

「にぎぃ こわいなんかない! ……ホウリィは、いっぱいいっぱいお仕事してゆのですよ。 ぅう ボクが…… ボクがこわいはずないのれすぅ ぐしゅ……」

「………………じゃあ」

 どうして、ホウリィは泣いてるんだろう? 愛らしい顔をこんなにクシャクシャにしてさ。そう思いながら、ポロポロ零れる涙を拭いてあげる。

「もしかして、寂しいのかな? ……僕と、お別れするの」

「はみゅ さみしい? …………そう かも」

 なんとなく口をついた言葉が、肯定されちゃうし。

「そうか、寂しいの…… 僕も君とお別れするの、寂しい」

「はわぁ ご主人も、ホウリィとおなじ。なんだか…… うれしいのです」

 やっと少しだけ笑ってくれて、ホッとする。やっぱり笑顔でなきゃね、ホウリィは。そんな君に励ましてもらいながらさ、小説書く妄想とかしてて、バカだよな。

「うん、僕も嬉しい。ありがとう」

「ふひゅ ホウリィも、ありがとなのです。××××さん、だいしゅき!」

 急な名前呼びに、ドキリとした。でもさ、ご主人さま呼びとかで誤魔化した感じじゃなくて、ちゃんと僕に向き合ってくれたみたいで、スゴく嬉しい。

「……僕も大好きだよ、ホウリィ」

「にひっ きさまとホウリィ、そうしそうあいなのです」

 相思相愛か、いいなそれ。マイちゃんとは、そうなれるのかな? それはマイちゃんしだいだよね、本当の気持ちって分かんないから。でも、まずは……

「僕、マイちゃんのとこに転生できる? 連れてってくれる?」

「はぅ 連れてけるの、途中までなのです。でもがんぱれば、きっと行けるです」

 行けるかも、僕しだいなのか。それにしても、しだい次第って。恋愛は相手の気持ちしだいではあるけど、まずは自分の頑張りしだいってこと? 人生だってそうなんだろうね、今ごろ気がつくなんてさ……

「うん、それでいい。僕を連れてってよ、ホウリィ」

「はぅう ××××さん、がんぱれなのです」

「ありがと…… 痛っ!」

 嬉しくてなってホウリィ抱き寄せようとしたら、胸に何かチクッと刺さって、スッゴく痛いじゃんこれ。って、そうだよ包丁持ってたんだ、このウサギさん。

「ふぁうぅ だめぇ! ……ボクにまかせゆです」

ちゅっ

 やさしい優しいホウリィの唇、ふにふに柔らかくって温かい甘く香る味。僕の天使の口づけが、包丁の先っちょが刺さった胸の痛みを上書きしてくれる。

「ん…… はぁ いってらしゃい、×××× ……ちゅぅ」

「んっ ふぅ ……いってきます ちゅ」

 行ってらっしゃいのキスしながら、ぽよんと、オッパイがぶつかってきた。同時にスルリと何かが、あばら骨の間から入ってくるし。何これ? 痛ったぁ!

『うっ! ぐっ ふぐぅぅぅ…………』

「んんぅ っ! ちゅぷ ちゅ」

 上書きしようのない激痛に暴れだす体を、ギュッと抱きしめられる。叫び声をキスで押さえられて、ホウリィの唇を噛んじゃった。

「んぁっ ごめ…… ん」

「ぅん ……きにすゅいりゃな ちゅ……」

 甘い血の味、甘いキス。それどころじゃなく胸の中が、苦しくって熱い。スゴい痛いし……息が詰まって、何? 心臓刺された? これ死……

「ぅあぁぁ…… ぅぅ」

「がんぱれ がんぱれ ××××」

 体から、ちからが抜けてく…… もう座ってられない。僕を励ます、ホウリィの声。キスのかわりに、ふにふに気持ちいい…… オッパイに抱きしめられる。

「ぁ……………………」

「……れてくから ボクが連れてくから しんぱいするいらない」

 もう、声もでない…… 甘い匂いの柔らかいのに包まれて、スゴく気持ちいい…… なんかぼんやりしちゃうし。……あれ、もう痛くないや。

「……んぱれ ごしゅじ…… ××××がんぱれ……」

 ああ…… 気が遠くなっ て く   やっと おわ……

「うっ あぅう ご主人しんじゃやぁあ…… ぐすっ ずぴゅ……」

 は はぁ また泣いてる よ

 ホント 泣き虫だなぁ……

 この ウサギさ ん



「ちゅ おやすみなさい、××××」

 静かな部屋、ベッドの上で絡み合う二つの裸体。上になっていた少女が起き上がり、少年の遺体を優しく整える。そっと、ウサギのぬいぐるみを胸の上に置いた。

「がんぱれて、えらいのです」

 穏やかに微笑んだままの少年の頬を、優しく撫でて微笑むウサ耳の美少女。そっと、少年の胸に突き立った包丁を両手で握り、体重をかけて引き抜いて……

バッタン!

「ふにぃ 痛いのれすぅう……」

 勢い余って落ちた床から起きて、ベッドへと戻る。少年の心臓は既にポンプとしての機能を失い、傷口からの出血は少ない。その傷口に、包丁の血を拭き取ったタオルを当てがう。それから、包丁をウサギのぬいぐるみの中に戻した。

「ちゃんと ボクが連れてくから、心配するいらないのです」

 遺体に布団をかけて優しく撫でると、穏やかに微笑む少年の顔はまるで、眠っているだけのように見えた。楽しい夢でも見ているかのような。

「ぱんつ~ ぱんつ~ ほよ?」

 散らばった下着とメイド服を身につけようとして、ふと、床に落ちている写真に気がついて拾い上げる。写真を眺めた少女から、ため息が漏れた。

「ふにゅう やぱり、ウサギじゃだめですか……」

 ベッドに歩み寄り、少年の枕元にそっと写真を置いた。

「はい、マイちゃんの写真なのです」

 膝をついてあらためて見ると、写っている少女は十歳ほどか。飼い犬の散歩中なのだろう、リードに繋いだ柴犬を一匹連れている。

「にゅうぅ かわいいのです」

 ただ妙なことに、少女の姿は写真から見切れていて、写っているのは体の三分の二ほどと、不機嫌そうな口元だけである。かわりに、リードに繋がれた雌の柴犬が一匹、楽しげな表情を浮かべて写真の中央に納まっていた。

「ねぇねぇねぇ ホウリィもワンちゃんだたら、えっちしてくれた?」

 物言わぬ少年の頰っぺを指先でつついて、にへっと笑うウサ耳の美少女。そのおどけた仕草とはうらはらに、大粒の涙がポロリとこぼれた。

「あぅん ぱんつ~ ぱんつ、どぉ~こ~?」

 下着を探しだし身につけ、メイド服を着る。最後に柴犬の付け耳を拾ってポケットに収めると、ホウリィは少年の元へ戻った。

「ふにぃ お待たせなのです」

 ウサギのぬいぐるみを豊かな胸に抱き上げ、その目を覗き込み微笑んで……

「さぁ 行くですよ…… ちゅう」

 愛らしい唇で、やさしく優しく口づけた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 一本道の終わりに門がある。

 簡素な石造りの門を通り抜けた一本道は、暫くして森の中へ消える。瑞々しい森は緩やかな丘陵に広がり、その内には数え得ぬほどの家々が点在していた。静かな森の街は、無限に広がるように見せつつも、その果ては穏やかな陽光に溶け霞んでいる。

 門の内側、道の脇に佇む天使が一人。中性的な面立ちに穏やかな微笑みを浮かべ、門へ向かう一本道と、その両脇にひろがる色とりどりの花咲く野原を静かに眺めていた。傍らには机がひとつ、机上に古い革張り装丁の書物が一冊置かれている。

 常春の野原を撫で吹く花東風が、やさしい花の香を運びくる、のどかなひととき。一本道の先に三人の少女を認めた天使は、目を細め優しげに笑む。



「お帰りなさい。よく戻りました、愛らしい死天使デスサイズたちよ」

 天使は穏やかな微笑みのまま、一本道を歩いてきた三人の少女を迎えた。

「ふはぁ ただいまなのです」

「ただいま戻りました、死天使長さま」

「帰ったよ~ ピリ」

 天使…… 死天使長ピリエルは、最後尾の少女の物言いに頬をわずかに引きつらせつつも、穏やかな微笑みを崩すことなく、厳かに宣告する。

「さあ、お一人ずつ報告なさい」


「はいなのです」

 最初に進み出たのは、ウサギ耳の少女。オレンジ色のふわふわ髪、垂れウサギ耳、茶色い瞳、愛らしい顔。身長百十センチほどのふくよかな体にメイド服を身につけ、花輪をかけたウサギのぬいぐるみを豊かな胸に大切そうに抱いている。

「死天使ホウリィ、迷い子の魂をこれへ」

 ホウリィは机の前に立ち、大切なウサギのぬいぐるみを、おずおずと差し出した。死天使長が、そのぬいぐるみに右手で触れた後、その手を机上の書物に置く。

「よろしい、迷い子の魂は回収されました」

「はわぁ ご主人がんぱれ、なのです」

 ホウリィは、手にしたウサギのぬいぐるみから花輪をはずすと、書物の上に置いてしまう。その仕草に死天使長の表情が険しくなりかけるが、横目でチラリと最後尾の少女を見やると、舌打ちを飲み込み微笑みを貼り付けた。

「…………続いて報告を」

 今度は右手をホウリィの額に置き、左手を自らの胸にあてる。暫し目を閉じた後、軽く息をつき目を開く。両手を下ろし、優しくホウリィに微笑みかけた。

「此度もよく務めましたね、ごくろうさまでした」

「はひぃ あっ ありがとなのですぅ」

 緊張しているのか、涙を滲ませ震えるホウリィ。今にも泣き出しそうだ。

「あなたの望む転生は、容易ではありませんよ。ましてや人間へとなると、魂の修養は不可欠です。これからも務めに励み、修養をお積みなさい」

「ひっ はぅ がんぱりっ まふぅう!」

 盛大に噛んで緊張しすぎだろ、大丈夫か? などと内心ツッコみながらも笑顔は絶やさず、オレンジ色のふわふわ髪を優しく撫で、最後の言葉を告げる。

「それでは、次なる務めまで教養なさい。あらためてごくろうさまでした」

「ふぁっ はひぃ なのれす」

 促されて道を数歩進んだホウリィは、後の二人を待つために立ち止まる。続いて、二人目の少女が進み出た。


「よろしくお願いします」

 礼儀正しいながらも、淡々と無表情な少女。濡羽色のショートヘア、透きとおる白い肌、切れ長の目と黒い瞳。身長百三十センチほどの細くしなやかな体に、青と白のセーラー風の制服を身につけ、キャスター付きの大きな旅行鞄を引いている。

「死天使チエ、迷い子の魂をこれへ」

 チエもまた机の前に立つと、静かに目を閉じた。死天使長は、チエの唇に右手でそっと触れた後、ホウリィの花輪を避けて机上の書物にその手を置く。

「よろしい、迷い子の魂は回収されました」

「ありがとうございます」

 静かに頭を垂れるチエは、あくまで礼儀正しい。

「続いて報告を」

 右手をチエの額に置いた死天使長の背が軽く仰け反ったが、目を閉じているチエは気がつかない。ホウリィが不思議そうな視線を向ける中、こめかみの血管がヒクヒク痙攣する。最後尾の少女に視線を送ってはみるが、最後は諦めて溜息を漏らした。

「……………………ごくろうさまでした」

「ありがとうございます」

 礼儀正しくも淡々と無表情なチエに、冷汗を流すピリエル。言いたい…… いや、言うべきことがあるはずだが、最後尾の少女の存在が口をつぐませる。

「……業を負わされし娘よ、その身に表れし傷跡は、そなたの魂に刻まれた傷そのものです。務めを果たし修養を積むうちには、その傷も癒やされ、いつの日にか再生の刻を迎えることでしょう。務めに励み、修養をお積みなさい」

「はい、務めます」

 表情のない返事に、伝わったのか不安になるピリエル。言葉とはなんと不完全なのだろうと思うが、最後尾の少女の手前、この娘への深入りは避けた。濡羽色の髪を優しく撫で、最後の言葉を告げる。

「それでは、次なる務めまで教養なさい。あらためてごくろうさまでした」

「ありがとうございました」

 礼儀正しく頭を垂れた後、先に待っているホウリィの横に並ぶチエ。内心、その娘の報告に首を振りたい気持ちを抑えつつ、最後尾の少女を迎える。


「ほ~い ピリ、ごくろうさん」

 不遜にも、上司にタメ口の少女。サラサラとなびく金髪、白く整った顔、透きとおる青い瞳、背に折りたたまれた黒い翼。身長百二十センチほどの華奢な体に、ピンク色のフリルドレスを身につけ。ドレスの胸元を無残に切り裂かれて幼けない乳房をさらしつつも、気にする風もなく、オシャレな日傘をぷらぷらと揺らしていた。

「死天使スサノオエル………… ごくろうさまでした。さあ、あちらへ」

 机の前に立つスーサを形ばかりに労い、森の方を示す死天使長ピリエル。さっさと行けよと言わんばかりに、不機嫌な顔を隠そうともしない。

「あら、私に説教はないのかしら?」

「冗談はよしてください、私が貴方に何を教えるというのです?」

 天使が神に説教しろって? パワハラ過ぎんだろ! と、叫びたい気持ちをかろうじて押さえるピリエル。人間だったら、頭の血管が切れていたかもしれない。

「やってみたらいいじゃない、これも修養でしょ」

「…………止めておきます、後が恐いですから」

「残念ね、勉強になると思ったのに…… ほら、私って異邦神だから」

 なるほど。そういう考えもあるのかと思うが、相手が相手なだけに、これ以上関わりたくはなかった。今後は、自分が非番のときに来てほしい。

「さっさと行ってください。その魂、差し出すつもりはないんでしょう」

 ピリエルが、スーサの下腹部を指さして言うと、

「そうね、もう宿っちゃったものね」

 子宮の上を優しく撫でながら、スーサはニッコリ笑う。

「というわけで、産休に入るわ。あとはよろしく」

「はいはい…… また今回も、産休百年で?」

 諦め呆れ顔のピリエルに、スーサは笑顔で応じる。

「まだ、分からないわ。千年前のときは、孫の行く末を見届けたかったのよ、仕方ないでしょ。人間って面白いわよぉ、あなたも地上に降りてみるといい」

「無理ですね、忙しいんですよ」

「あらあら、たいへん」

 空気読まずに立ち話に巻き込む近所のおばちゃん風の物言いに、ついカッとなるピリエル。よせばいいのに、はるか格上の相手に喰いついてしまう。

「誰のせいだと! 先の最終戦争 あ れ で天使の半数が、死んだか再起不能なんすよ。おかげでいまだに慢性的な天使不足で、カッツカツなんすから!」

「あ~ ゴメンゴメン」

「……謝罪の前に、もっと真面目に働いていただきたいですね」

「悪かったって」

 悪びれた様子もないスーサの態度に、もはや言葉もない。ただ、孕んだ今なら討ち取れはしないかと、悪い考えが頭をもたげた。

「そもそも、神どうしのタイマンに天使つかう方が悪いと思うのよね」

 その言葉に、当時のことが思い出された。千年前に討ち取れなかったことも。

「それにあのときは、全滅は可愛そうだから、降伏してあげたんじゃない。感謝されてもいいくらいだと思うのよね」

 全滅の言葉に、かつての自分もその内にいたことを思いだし、このバケモノに関わる無謀を悟った。もう、こんな格上部下いらねぇって!

「異邦神スサノオ、あなたの慈悲とご助力に感謝します」

「ぅお おお……」

 急な態度の変化に、キョトンとするスーサ。先の二人も首をかしげている。

「ゆっくりご教養ください。……あらためてごくろうさまでした」

「あ…… ありがと」

 もっと噛みつかれると思っていたスーサは、拍子抜けして先の二人のもとに向かうが、ふと思いついて振り向いた。

「そうだ、ピリ。あなたのシフト表を、あとで送ってくれない」

「え?」

 やっと終わったと思ったところに、意味不明なひと言。

「今度、この子たちとお茶会するんだけど、あなたも招待するわ」

「えっ? ど…… どうして私を」

 本当に意味が分からない、どうゆうつもりだ…… まさか合コン?

「そう警戒しないで、ただの接待よ」

「……せっ 接待?」

 いや、警戒するて…… バケモノの接待て、恐すぎじゃん。

「産休の間、この子たちのこと頼んどきたいし。他の子たちのこともね」

「そ…… そうですか」

 やっと意味が分かった。というか、結構いいヤツなんじゃね? このバケモノ。

「だから、手空きの天使とかいたら、誘ってあげてね」

「わかりました…… ご招待、感謝します」

「うん、おたのしみに~」

「はわわぁ みんなでお茶会、きっと楽しいのです」

「お茶は任せてください、とっておきがあるんですよ」

 元気いっぱいに、はしゃぐホウリィ。無表情だったチエも、いつの間にか可愛らしい笑顔を浮かべている。ピリエルまでもが、何かが変わり始めるのを感じた。


「あー それと……… これは、言うか迷ったんだけどね」

「何でしょう? なんでも、おっしゃってください」

 いつの間にか、素直に耳を傾けたくなっている、バケモノの言葉に。

「ぅっ ううん えーっとぉ……」

 ウサギ娘ばりに吃ったかと思えば、急に神の威を纏い始めて。なんなのこいつ? この猫っ被りぶりは、反則だろ……

「よいかピリ。門は閉ざすばかりが能ではない、門はひらくべきものと悟るべし」

「は はぁ…………」

 門の物理機能としては、当然のことと思われるが。

「聖典、規則、常識、因習なぞに捕らわれ、頑なに閉ざしてはいまいか? ときには開け放ちて、新しき風を通すべきであろう。未来とは、新しき風が創るものぞ」

 新しき風…… 新しい考え、新しい方法、新しい者か? 思えば、このバケモノがはみ出し者どもを庇うのも、同情ばかりではないのかもしれない。

「こだわりを捨て、柔軟になれとの仰せか?」

「まあ、私にとっては余所ごとで、知ったこっちゃないけどねぇ~」

 そもそも、先の最終戦争 あ れ の原因は何だったのだろう?

「でも、私って破壊神だから。モタモタしてっと、ぶっ壊しちゃうかもよ。アハハ」

 物騒な捨てゼリフ吐いて、二人の少女を伴い、今度こそ去って行くバケモノ。

 黒い翼を負ったその背に向け、死天使長ピリエルは深く頭を垂れた。神の威に負けたのだ。そう、神の威に負けただけだと、自らに言い聞かせつつ。



「ふう…… やっと行ってくれましたか」

 スーサたち三人の少女の姿が見えなくなり、ようやく頭を上げるピリエル。風が流れ始め、花の香が戻ってくる。風も花もきっと、神の威に頭を垂れていたのだろう。

「茶会に行くのが恐いですね……」

 風よけに最大限、道連れを連れて行こうと決心する。可能な限りの、格上を。

「ああ…… そうそう、これこれ」

 ウサギ娘が置いていったゴミ…… 花輪をつまみ上げると、いつもどおり無造作に捨てようとして…… なんとはなしに、眺めてしまう。

「……………………ちょっとだけ」

 誰も見てない事をいいことに、特に意味もなく、自らの頭に花輪を載せてみた。ぬいぐるみサイズの花輪は花冠にちょうどよくおさまり、花の香りも存外心地いい。

「これは…… 意外といいものですね」

 自分の姿を俯瞰してみて、思わずニヤニヤしてしまう。

「おっと、この顔はいけない」

 焦って、部下には見せられないニヤけ顔を、仕事用の微笑みに切り替えた。

「うん、次の子が来る前でよかった」

 一本道の先に帰還してくる死天使を認めて、穏やかな微笑みを浮かべる死天使長。彼の頭上を可憐に飾る花冠のうちで小さなつぼみが一つ、花開き始める。

 しずかに。そう、静かに……


Fin



 つたない筆運びに最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。

 この小説は、ある人物の遺稿と残された資料等を元に再構成しました。長いあいだ未完だったものが、此の度の思いがけない関係者の来訪にあって空白が埋まり、書き上げることが叶いました。多少なりとも夜のお供になりましたら、故人も喜ぶことと思います。

 さて、先の関係者のご好意とお力で引き延ばしていただいた私の裁定も、間もなく執行のときを迎えるでしょう。皆様が迷われたとき、またはゴールを迎えられるとき、心優しき来訪者の導きのあらんことを祈り、これにてお暇いたします。





 この小説は、法律・法令・社会倫理に反する行為を容認・推奨するものではありません。なお、著者の許可なく全部または一部の複製、転載、商業利用することを禁止します。

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