第2話  ~ Chains saw rolita ~


The your death size ?

 height: 130㎝

 weight: 25㎏

 B-W-H: 55-55-55

 hair: wet raven

 type: cool



 いい天気だ

 どこだか知らない公園

 大きな木の下、木漏れ日の中に座りこみ

 美しい少女が、本を読んでいる

 ときおり、小鳥のさえずりが聞こえるほか

 煩音もない、おだやかな世界

 膝の上に本を広げ

 静かに少女は

 本を読む


 いい陽気だ

 新緑も鮮やかなる公園

 遊歩道を通り、大きなカバンを牽いて

 怪しげな男が、一人歩いている

 こそこそ、まるで隠れるように足音を潜め

 のぞき込む、カメラのさきに

 何をか探しながら

 ひそかに男は

 足を運ぶ


 いい日和だ

 人気のない静かな公園

 少女を見つけ、男が密かに歩いてくる

 読書に夢中で、少女は気づかない

 ふわりと、飛び立つ小鳥が羽根を落として

 少女はふと、顔を上げてみる

 嫌らしく笑い立つ

 男を見上げて

 尋ね問う

「あなた、何をしているの?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ズバンッ!

 不注意にドア開けたヤロウに、俺のソードオフショットガンが火を噴いた。

「がぁ……」

 ぶっ倒れたヤロウを横目に廊下の左右を確認、仲間いねぇな。

「アホが、死ねや」

 警戒がなっちゃいねぇうえ、反応もニブいヤロウだ。蹴っ飛ばしてうつ伏せにして、背中を踏んづけて装備を確認するも、取り落としたナイフ一本だけらしい。

「なんだよ、装備までしょべぇな」

「……みっ 見逃して」

 ショットガンに弾つめて、チェーンソーに持ち変える。

「すわけねぇだろ! どうせ致命傷だ、諦めな」

ヴァルン ヴァッ グァルルギャリギャリギャリ…………

「ひぎゃっ!」

 頭ガリガリ削ってトドメ刺すと、ミソ吹いておもしれぇんだが、やっぱ男じゃつまんねぇ。女はいねぇか? 中身おっさんのネカマでもかまわねぇ、楽しめりゃいいんだ。

「バイトのストレス解消、ダレかつき合ってくれよぉ」

 探索スキルの範囲ひろげるとカモがいやがる、さっそく隠蔽スキル最大で近づいてく。

「誰もいないようね」

 女だ、ついてる。壁一枚はさんで声が聞こえた、間抜けめ。どうやら、相手の探索より俺の隠蔽レベルが上らしい、こりゃイケるぞ。いつもどおり相手の動き見て先回り、ドア横で待ち伏せだ。隠蔽レベ上なら、視認されない限り成功確実。へへ……

ズバンッ!

 ドア開けた女に、完璧なタイミングでソードオフをぶっ放した。

「っきゃぁ!」

 ぶっ倒れた女の後ろや横を素早く確認、やっぱ一人だ。

「さあ、遊ぼうぜ~」

「うう…… いきなり何? 初心者なのよ!」

 超ラッキーだ。見れば丸腰、武器も確保できてねぇ初心者なんて、カモすぎる。

「いい経験になっただろ」

ヴァルン ヴァッ グァルル…………

「ひっ 何? チェーンソー?」

 女の胸元をサッと浅くなぎ払うと、服だけが千切れ飛ぶ。まったく、便利な仕様だぜ。

「きゃああ!」

 むき出しになったデカパイが、ブルンブルン揺れやがる。ホント、たまんねぇ。

「いやぁ、やめて! 変態!」

「ハハハ…… ゲームだよ。どうせ自分の体じゃねぇんだ、ケチケチすんな」

ヴァッ グァルルギュィィィィ…………

「ぎゃあ!」

 オッパイ隠すのに夢中になってた女の隙ついて、両足を切り飛ばす。

「これで、もう逃げれねぇぜ。へへへ」

 ついでに股間も丸見えだ。興奮してスタンバってるチンコを、右手で握りしめた。

「いやいやいやぁああ!」

「ハッハッハァ…… 悔しかったら、次は俺を殺してみろよ」

 左手にマウス持ち替え、右手でチンコを擦る。

ヴォッ ギャィィィィ…………

「ひぃあああ!」

 邪魔な両手を切り飛ばすと、デカパイがブルブル揺れてたまらん! 右手が捗るぜ。

「ハハハハハ……」

 規制のゆるいゲームとはいえ、挿入とかのイタズラはできねぇし、相手のHPゼロになるか強制ログアウトするまでの楽しみだ。女の反応を楽しみつつ、右手がどんどん加速する。

ヴァッ グァルン ギャルルン ギャリギャリッ…………

「ひっ あっ ぁあっあ……」

 殺さねぇ程度に刻んでくと、悲鳴漏らしながらビクビク暴れて、すげぇエロい。だいたい、ログアウトすりゃいいだろうに、バカかよ。まあ、俺トクだけどな。イヒヒ……

「ぷふぅ…… ほぅら、俺のザーメンで孕みな~」

「え? 何? 裏で何して? …………いやぁああ!」

(たまんねぇ、イクぜぇ!)

「あなた、何をしているの?」

 耳をくすぐる声に、あせって振り向くと、すっげぇ美少女がチョー至近距離に!

「……え、ダレ?」

 間抜けな声でそう聞いた瞬間、甘い香りを吸い込んじまって、俺のチンコが暴発した。

「うひゃ…… あぅあうあ……」

 ティッシュなんか間に合わねぇ、キーボードやらモニターにまで盛大に精液ぶちまけちまう。あげく、美少女から逃げようとして椅子から転げ落ち、自分の精液まみれだ。

「ぅあ…… 見るなぁあ!」

 甘い香りの刺激が気持ちよくて、射精止まんなくて、ビクンビクン痙攣しながら最悪の醜態さらしちまう。いっぽうの美少女は、無表情に俺を見下ろすと、静かに呟いた。

「ぶざま、ね」



「ちっ、ブスが……」

「なんか言った?」

 コンビニから出かかってた女客が、俺の呟きに反応しやがった。地獄耳がよ、くそ!

「いっ いえ、何でも」

「そう」

 フンと鼻をならして、女客は颯爽とコンビニを出て行く。毎朝の常連だ、スーツ姿でこれから出勤なんだろ。うだつの上がらねぇコンビニバイトをバカにすんのも、日課かよ?

(ちくしょう!)

 レジに次の客が来たんで、悪態ひっ込めて応対する。

「これと十六番」

「はいこちらですね、袋はお付けしましょうか?」

「コーヒーとタバコだぞ、袋なんかいるわけねぇだろ! そんくらい分かれ、バカか」

 そこまでキレるこたねぇだろ、マニュアルなんだよ。くっそオヤジ!

「すみません…… こちら九百六十円になります」

「これ」

「はい、千円お預かりします…… 四十円のお返しとレシートです」

 くそオヤジのヤツ、釣り銭を受け取ってレジ前でグズグズしやがる。何だよ、十円玉がそんなに気になんのかよ。後ろに行列できてんだよ、早く帰りやがれ!

「ギザ十ない?」

「は?」

「ギザ十だよギザ十。ほら、古い十円玉でフチがギザギザしてるヤツ、知らないかなぁ?」

「はぁ……」

 そんくらい知ってるけど、なんで?

「レジに入ってない? 取り替えてよ、集めてるから」

 だから、ナニ言ってくれてんだよ!

「お客様、そうゆうのは……」

 マニュアル通り断ろうとしたが、後ろに並んでる客がイラついてやがる。くそがっ! レジ開けて、ジャラジャラ雑に確認するフリしてやる。

「ありません」

「そっかぁ、残念。見つけたらとっといてねぇ~」

「…………はい、ありがとうございました。またご利用ください」

 二度と来んじゃねぇ、ぶっ殺すぞ!

 まったく、交代まだかよ。夜シフトの最後はいつもこうだ、朝のラッシュこなすまで終わらねぇし、バカな客ばかり来やがって心底ムカつく!



 くっそ…… やっと終わったぜ、さっさと帰ってゲームやろう。

「お疲れさまっした~」

 がめた廃棄弁当をバッグに詰めて、裏通りをチンタラ歩いてアパートに向かう。

「かったりぃな」

 いつもの近道で人気の無い公園を横切ってると、トイレ前でうろついてる女がいた。

「さっきのブスじゃ…… ナニしてんだ?」

 俺を毎朝バカにしてくる、例のコンビニ客の女だ。関わりたくねぇと、そっぽ向いて通りすぎようとしてたら、いきなり腕を掴まれた。

「なっ ナンですか?」

 くっ、店ん中じゃねぇのに、思わず敬語つかっちまう。

「紙がないのよ、あなた男子トイレからとってきなさい」

 ああ、状況は掴めたが……

「なんでぇ?」

「何でですって! 会社まで持たないからに決まってるでしょ。郵便を出しに行っただけなのに、まぁた間抜けな店員に当たるなんてなんなのよ、もう!」

 あいかわらず、手前ミソの文句ばかり言いやがる。だいたいコンビニの外で、俺があんたの言うこと聞く理由なんてねぇよ。それに、これから帰ってメシ食うんだぜ、くっさいトイレになんか入れるかよ。

「自分で取りゃいいっしょ。ダレも入ってねぇし、俺が見てりゃ痴女扱いもねぇっすよ」

「なっ! ……あなた、そこにいなさい」

 すっげぇ形相で睨みやがったが、ホントに余裕がないんだろう、直ぐに男子トイレに入って行きやがった。澄ましてりゃ美人なのに、そんなだからブスいんだよ。

「無いわ、なんでよ。……て、あなたどこに行くの!」

 さっと帰ろうとしたら呼び止めやがる。ちっ!

「もぉお! 私トイレに入ってるから、紙調達してきて!」

 だから、なんで俺が?

「これ預かるから、逃げるんじゃないわよ!」

 って、俺のスマホをひったくりやがった。こいつ何様だぁ? もぉガマンならねぇ!

「きゃああ!」

 俺は、くそ生意気なデカパイを鷲掴みにして、女をトイレに押し込んだ。

「なに? 何するのよ、この変態!」

 デカパイをガシガシ揉みながら、女を個室の壁に押しつける。

「いっつも、いっつもバカにしやがって!」

バツッ ビーーッ

「きゃああ!」

 ブラウスのボタン飛ばして、下着やらブラを引きちぎる。直に見るデカパイに、チンコがもう一瞬でギンギンだ。乳首に乱暴に吸い付いて、揉みまくる。

「いやぁああ…… やめてぇ!」

「このブス!」

 抵抗する女に引き剥がされた俺は、髪をつかんで女の後頭部を壁に打ちつけた。

ガッ!

「ひぎぃ!」

 短い悲鳴あげた女は、ペタンとトイレの床に尻餅をつく。そして……

ブヒッ ブリブリブリッ

 漏らしやがった。プーンとあの臭いが漂うなか、女が泣きじゃくる。

「ぁああ…… もうゆるしてぇぇ……」

 くっさい臭いに気持ちは萎えちまうが、チンコの方はおさまりつかねぇ。

「ちっ 咥えな」

「え? やぁあ!」

 チンコ出して女の顔に押しつけたんだが、この期に及んで拒否りやがる。くそが!

ヴァルン ヴァッ グァルル…………

 って、なんでチェーンソー持ってんの俺?

「なっ 何よそれぇぇ」

「うっせぇ、こいつで切り刻まれたくなきゃ、さっさと咥えな!」

ヴァッ ギャリッ びゅっ

「ぎゃっ!」

 軽く脅すつもりが、毛髪を引っかけたチェーンソーの歯が女の頭皮を浅く削って、派手に血が噴き出した。ガクガク震えて怯える女に、俺は容赦なくチンコを押しつける。

「おら、死にたかねぇだろ」

じゅっ ちゅぷ ちゅ……

 女がチンコをシャブリ始める。うめぇ、気持ちいい…… 今まで何本咥えてきやがったんだよ。でも足りねぇ、イケそうにねぇ。俺は、チェーンソーを女の頭に近づけていった。

「だ・か・ら、あなた何をしているの?」

 その時また、耳元にあの美少女の声が……



「うゎわっ!」

 自分の声に驚いて、一瞬呆けたが…… ここは俺の部屋じゃねぇか。ベッドの上ってことは寝てたのか? じゃあ、今のは夢? って、どれが?

「くっそぅ」

 いかん、寝起きで頭ん中まぜこぜだ、落ち着こう。体の向き変えて、ベッドから足おろして座り直して…… ギョッとする。目の前にあの美少女いるんだよ、壁にもたれて寝てるし。

「なっ なんだよこいつ」

 よけい混乱したが、とりあえず何があったか整理しよう。時間が昼過ぎってことは、いつもならバイトから帰って、寝る前に少しゲームして……

「くぅうう……」

 思わず呻いちまう。そうだよ、美少女に乱入されて、醜態さらしちまったんだ。くそっ! とにかくPCとか拭いて乾燥さして床とか掃除したよな。見るなって言ってもずっと無表情で見てやがって、恥死しそうだったんだけど何だったんだよ、あの羞恥プレイ。

「ぅああ……」

 そのあと洗濯機まわして、シャワー浴びてきても居やがるから、おまえ帰れよ! つって、ベッドに逃げ込んで、布団に潜り込んだんだ。……で、なんでまだ居るの? 俺のチンコ撃破した甘い匂いを、せっまいワンルームに漂わせてよ。

 にしても…… 小っこいテーブル挟んで、あらためて見るとすげぇ美少女じゃん。濡羽色ってのか、艶のある黒髪ショートに整った白い顔、今は閉じてるが切れ長のキレイな目してた。顔も頭も小っちぇが、体もホントに内蔵入ってんのかよってくらい細くて小っちぇ。中坊っていうか、その下かもしんねぇな。

 セーラー服っぽいの着てるけど、レースやリボンでおしゃれにアレンジされてて、見るからに上級国民御用たし学校の制服か? 知らんけど。レースの手袋やら長い靴下、首にスカーフまで巻いて徹底して肌を出さないあたりも、けっこうなお嬢様っぽいじゃん。

「それが何で俺の汚部屋に居んの?」

 意味わかんねぇ…… いかん、甘い匂いにチンコが反応しそうだ。顔でも洗おうと立ち上がると、テーブルの上の文庫本が目に入った、少女漫画っぽいイケメンと美少女が表紙で笑ってやがる。こいつんだろうな、読書中に寝ちまったってわけか。

 気になって確認すると玄関の鍵が開いてる、閉め忘れか。これで美少女が部屋に入れた理由だけは解った。ついでに、キャスター付きの旅行カバンも見つけた。

「家出少女?」

 にしたって、いきなり男の部屋に入ってくるか? 喰われっちまうぞ。



「腹へったな」

 そういや、メシ食ってなかった。冷蔵庫から廃棄弁当だして、レンチンして顔を洗う。

チーン

 レンジの音が響くが気にしねぇ、防音だけはしっかりしてるからな。おかげで、隣近所とか気にしねぇでゲーム楽しめる最高の部屋だ、家賃高ぇけど。

「おはよう、起きたのね」

「……ああ」

 弁当もって戻ると美少女が起きてて、すっげぇ気まずい。

「おめぇはダレなんだ?」

「チエ」

 名前しか言わねぇし。顔にも声にも表情ってもんがねぇ、ロボットかよ?

「だから何もんなんだよ?」

「言わないと、わからない?」

 って、俺に覚えがあるような言いかただな、なんだってんだ?

「何しに来たんだ?」

「お仕事よ」

 仕事って年齢でもなさそうだが…… まさかと思いつつ聞いてみる。

「風俗か? だったら呼んでねぇぞ」

「何を言っているのか、わからないわ」

 そりゃそうだ、そうだったら年齢的にヤバすぎるしな。だったら何だ? 思いつくことって言うと…… 家賃を二ヶ月払ってねぇくらいか。じゃあ、こいつオーナーの関係者?

「家賃だったら明日払うよ、バイト代入るから。一ヶ月分で勘弁…… してください」

「そう」

 当たりかぁ。ガキに取り立てさせるとか、あの旅行カバンとか違和感パねぇけど、とりあえず、ここはいったんお引き取り願おう。

「だから今日は帰ってくれよ、明日払いに行くからさ」

「お仕事が終わるまで、帰れないわ」

 なんて言って文庫本読み始めやがった、居座る気まんまんかよ。

「夜はバイト行かなきゃなんだよ。てか、男の部屋に泊まる気か? やべぇだろ」

「そうなったら、帰るわ」

 さすがに泊まりはなしか。ホッとしつつも、ちょっとガッカリしちまった。俺は何考えてんだよ、オーナーに部屋追い出されっちまうぞ。……ひょっとして、それが狙い?

「帰るんならいいけどよ、黙って他人ひと入るのは犯罪だからな」

「そうなのね」

 そっちがその気なら、こっちからもクギ刺しとかねぇとな。しっかし、ニコニコしながら孫自慢してたあのジジィが、こんなことさせるか? まあ、よそん家のこたぁどうでもいいんだけどな。そんなことより、こいつの前でメシ食うのかよ、気まずいじゃん。

「おめぇ昼メシは?」

「必要ないわ」

 いらねぇったって、俺が気まずいんだよ。何か食わせっかとキッチンに戻ってはみたけど、廃棄弁当じゃまぢぃよな、カップラーメンならギリ賞味期限内か。

「ちょっと待ってろよ」

 返事はねぇが、湯沸かしてカップに注いで、フタしてからテーブルに戻る。

「これでいいか、口に合わねぇだろうがよ」

「これは、何?」

 カップラーメン知らねぇのか、どこのお嬢様だよ! ……あのジジィんとこか。

「ラーメンだよカップラーメン、知らねぇのか?」

「見たことはあるわ、私に食べろと言うの?」

「ああ、ソバみてぇにすすって食うんだ。熱いから気ぃつけてな」

「いただくわ」

 割り箸割って手渡すと、素直に受け取った。って、直ぐフタに手をかけやがる。

「まだだよ三分たってねぇ、お湯入れて三分間。フタに書いてるだろ」

「そうね。三分、ウルトラマンは帰ってしまうわね」

 室内がシーンと静まりかえった、背中が寒ぃ。なんだ今の発言は? ひょっとしたら冗談かもしんねぇが、無表情で淡々と喋るから、ぜんっぜん分かんねぇよ!



「神と精霊、生き物たちに、今日の糧の感謝を」

「…………いただきます」

 言ってるこたぁ、だいたい同じだろう。チエに合わせて、俺も弁当を食い始める。

「美味しいわ」

「そりゃよかっ……」

(かっ カワイイ!)

 俺に向けられたチエの笑顔が、最高にカワイイじゃんか! さっきまでの無表情とギャップがパねぇ。さらに、ポロッと箸を落とした俺に笑顔の追い打ちをかけてくる。

「ふふふ」

 思わず見惚れた笑顔も、残念ながら一瞬で終わった。無表情に戻ったチエは、麺を一本ずつ箸でつまんでは口に運ぶ。その様子がちょっと、もどかしい。

「一本ずつじゃなくさ、もっとこうガッといけよ。その方がうめぇぞ」

「そうなのね」

 って、そりゃ多すぎだろ。

「うぅ! んむむ……」

 あんのじょう、小っちぇ口に大量の麺咥えてむせてやがる。俺は、笑っちまいそうなのこらえて、ティッシュを一枚渡してやった。

「ほら、大丈夫かよ」

「ぅ…………」

 美少女がティッシュで口押さえてモゴモゴ…… なんかやらしいって思う俺は、心が汚れちまってるんだよ、ごめんな。

「だましたわね」

「だましてねぇよ、加減の問題だよ。そんくらい自分で調整しろよ」

「そうね、ごめんなさい」

 素直かよ。てか頬っぺた赤くして、恥ずかしがってるのか? その顔もカワイイじゃん。

「はい、ありがとう」

「おう」

 って、使ったティッシュ返されてもなぁ。しかし意外と汚れてねぇそれ見て、ふと思っちまう。そう、美少女の使用済みだ、これ舐めたら間接キスじゃね?

「それが、目的だったのね」

「ちげぇよ!」

 目の前の本人にジッと見られて、慌ててゴミ箱にポイする。あとで回収だ、後で。



「ごちそうさま」

「おう」

 ラーメン食い終えたチエは、文庫本ひろげて読み始めた。弁当とか片した俺にも、やるべきことがある。そう、俺の唯一の財産と言っていいゲーム機材の復旧だ。

「無事でいてくれよぉ……」

 本体チェック、配線組み直して…… 電源オン。ドキドキ……

「うっしゃあ」

 ゲーム起動までいつもどおり問題なし。動作チェックにちょっと動かしてると……

「それは、なんなの?」

「わっ!」

 また耳元に囁かれて、叫んじまった。いつの間に背後に? 気配がねぇ、忍者かよ?

「ひと殺しの、ゲーム?」

 耳に息がぁ ちかい近い、甘い匂いが近すぎる! 撃破されっちまう。

「ちっ ちげぇよ」

「じゃあ、何?」

 体そらして逃げても、身を乗り出して追いかけてきやがる。やめれ、無自覚かよ。

「あっ ああ。ルール上はPKもできるけど、ホントは廃墟からの脱出ゲーさ」

「脱出?」

「廃墟が階層式んなってて、いっこずつ閉鎖エリアの解放ギミックを解いてくんだ」

「なぜ、武器を持つの?」

「ゾンビがウロついてるし、他のプレイヤーに襲われねぇようにさ」

 俺は襲う方だけどな。別にいいだろ、そうゆうゲームだ。

「おもしろい?」

「それなりにな。やってみるか?」

「いいの? やるわ」

 興味ありそうなんで誘ってみると、やるって言う。鬼畜プレイしなけりゃ大丈夫だろ。

「ゲームパッドのがいいだろ? これ持って座れよ」

「その椅子は汚いから、座らない」

 椅子を譲ろうとしたら、辛辣な一言に殴られちまった。そうだよ、拭き取ったとはいえ一時は俺の精液にまみれた椅子だ、確かに汚えよ。ちくしょぉ……

「立ったままだと3D酔いすっぞ」

「じゃあ、ここでいいわ」

 って、俺の膝に座るんかよ! 椅子は嫌がるくせに、膝の上はいいのかよ?

「どうしたの? 教えて」

 俺の膝に横座りしてチエが振り向く、顔が近ぇ、やべぇ理性が飛ぶ!

「うっ ……ああ」

 布越しに伝わるヒンヤリした体温と柔らかい感触、もし抱きしめれば腕の中にスッポリ収まる華奢で小っちぇ体。びっくりするくれぇ軽いのに、確かに存在する重み。濡羽色の髪に黒い瞳が、キラキラとまぶしい。甘い美少女の匂いに脳が灼かれちまって、狂いそうだ。

「まっ 前見て…… 画面見ろよ」

 絞り出すように言うと、チエは素直にモニターの方を向く。俺は、反応しちまったチンコをごまかそうとして尻をモゾモゾ動かした。やべぇ…… 俺好みの巨乳だったら完全に理性飛んでたぜ。こいつが絶壁じゃなかったら、バックからチンコねじ込んでガン突きだ。

「えと…… まずアカウント作るぜ」

 別窓を開いて、ビジターでログインして仮アカウント作ってやる。キャラデザは、チエが興味なさそうだったんで、適当に小柄な黒髪少女アバターに設定した。

「……あと操作方法な」

(手ぇ小っちゃ! 指ぃ細っ!)

 チエに持たせたコントロラーに手を添えると、手袋越しにヒンヤリした手の感触が気持ちよすぎて、思わず握りしめたくなるのを辛うじて堪えた。

「わかったわ、それで?」

 チエの冷静な声を聞いてるうちに、チンコが少し落ち着いてきた。助かるぅ……

「じゃ、あとは実践でな……」

 ゲームスタートからチュートリアルをすっ飛ばすと、キーボードから俺のアバターを操作してチエに合流した。

「ほら、これ受け取って装備しな」

「わかったわ、ありがとう」

 ストックしてた拳銃を渡して装備させる。初心者にいきなりのチート装備だが、いろいろと端しょりたいからいいだろ。それから廃墟を探索しながら、チュートリアルっぽい説明を加えてく。それにしても、チエの飲み込みが早ぇえ!

「ホントに初めてか?」

「そうよ」

 頭いいんだなぁって感心してると、ひとつ目のギミックをあっさり解きやがった。その後も次々に解いてって、俺が到達してないとこまで…… 攻略サイトも見ねぇで、マジか!

「おまえ天才かよ」

「普通よ。あなたこそ、どうしてこんなに進んでいないの?」

「……おっ 俺も最近始めたんだ」

 嘘だ、浅い階層で初心者狩り鬼畜プレイやってたなんて言えねぇよ。運営にアカウント消された回数、数知れずだ。ハハハ……

「動画とか撮っときゃよかったな」

「どうが?」

「プレイ記録さ。ネットに上げるとバズったりするんだぜ」

「ふーん」

 チエは興味なさそうだが、この神プレイは絶対バズるぜ。ていうか金になる、金に!

「なあ、今度また一緒にやんねぇか。他のゲームでもよ」

「時間があれば、いいわ」

 よっしゃあ! まず機材の調達、ネットで調べて…… その前にチエの機嫌とらな。

「ゲームも面白ぇだろ」

「謎を解いていくのは、いいわね」

 腕ん中の小っちぇ背中が頼もしい、マジ尊敬だ。俺が近接攻撃でチエが遠距離、戦闘の連携もばっちしじゃん、俺たちお似合いなんじゃね? もう、つき合っちゃう?

「なあ、彼氏とかいないよな?」

「それって、なんなの?」

「……恋人いる?」

「いないわ」

 よっしゃ、きた! 無表情のクールキャラだし、そりゃいねぇわな。

「なあ、年上ってどう思う」

「年長者は、尊敬するものよ」

 尊敬されてぇ! 冷てぇようで素直なんだよな。このまま仲良くなっていきゃ…… へへ、さすがに絶壁幼女に手ぇ出さねぇよ、ロリコンじゃあるめぇし。あと五年だか七~八年待ってりゃ成長するだろ。巨乳なんて贅沢は言わねぇよ、DかEあればいい。

「兄弟いる?」

「いないわ」

「俺のこと、兄貴と思ってくれていいぜ」

「そう」

「いつでも遊びに来いよ、謎解きゲームいろいろ用意しとくからよ」

「来られたらね」

 よっし、がんばって兄貴から彼氏にシフトしてくぜ。そして、俺が育ててやるぜぇ、チエのおっぱいぃぃい。……やべぇ、よだれ出るぅ。

「少し、疲れたわ」

 チエはそう言うと、あっさり俺の膝から降りて読書に戻った。……膝がさみしい。

「本アカ登録してセーブしとくぞ、続きからやれるから」

「ええ、お願いするわ」

 よしよし、フラグたったぜ! これは、ぜったい続きやりたくなるパターンだ。兄貴から彼氏になって将来は…… ウハッ。たしかオーナーのジィさん、かなりの資産家だよな。こりゃ逆玉もあり得るんじゃね? 一生遊んで暮らせるとか? イヒヒ……

「チエ、一生大事にすっからよぉ~」

「あなた、何を言っているの?」

 やべっ、声に出ちまった。

「あっ その……大事にセーブしとくって……」

「そう、ありがとう」



「くだらねぇ話ばっか……」

 一人でゲーム続ける気にならなくて、ネット検索で時間つぶしてたら、そろそろ晩メシ食う時間だよ、バイトも行かなきゃだし。……そうだ。

「なあ、まだいるよな」

「ええ、いるわ」

チーン

 チエの分を奮発してウーバーで注文しといて、俺の分に廃棄弁当をレンチンした。バイト代入ったら外食もいいな、チエに食ったことねぇもん聞いてみるか。B級グルメなんか知らなそうだし…… ん?

「カバン開いてんじゃん」

 目に入ったチエの旅行カバンの、フタが少し開いていた。チエの方を覗いてみると、読書中は変わらねぇが、文庫本が二冊に増えてる。

(本出して、閉め忘れか?)

 チエの方を気にしながら、そーっとフタ持ち上げて中を覗く、だって気になるだろ。

(なんでまた、こんな大荷物)

 上の仕切りの中には、文庫本が何冊かと女の子っぽいピンクのポーチ。その下は……

(なんだこりゃ? 見たことあるような……)

 最初に見えたのは、平べったいプラスチックのカバーだ。そいつを引っぱると、チェーンの巻かれた鉄の板が出てきて…… オイルの臭いに背筋がゾクリと震えた。

「なっ! ……」

(なんで、チェーンソー入ってんだよ?!)

 叫びそうになっちまって、慌てて口を押さえた。そっとチエの方を窺うと、あいかわらずの読書中で、こっちに気づいてない。よかった。

(ホームセンターで見たヤツと同じ?)

 俺がゲーム内で愛用してるバカ長いのとは違う、バーの長さが二十センチかそこらの比較的小っこい、電気で動くヤツだよな。チェーンソーに必須のオイル、予備バッテリーに充電器、工具まで一式そろってやがる。ホンモノなんか使ったことねぇけど、ホムセンとネットで見たから解るんだよ。

(なんでこんなん持ち歩いてんだ? いいとこのお嬢さまだろ……)

 てっきりさぁ、着替えの服とか下着とか、お気にのぬいぐるみでも出てくると思ったのに、リアルチェーンソーだぜ。違和感どころか、なんか怖ぇよ。

(……旅行カバンにチェーンソー入れて、どこ行くん?)

ビッビーッ

「ひっ!」

 考え込んでたら、玄関のブザーにビビっちまった。ウーバーだ、ウーバー来たんだよ。まさかと思うが、ドア開けたらジェイソン立ってねぇよな……



「これもラーメン?」

「ああ、今度なぁホンモンだぜ。食ったことねぇだろ」

 チエの前にウーバーのラーメン置いといて、俺用の廃棄弁当をひろげる。

「お昼も、ラーメンだったのに?」

「いいだろ、ちゃんとしたの食わせたかったんだよ」

「そう、あなた優しいのね」

 たまに見せるカワイイ笑顔に騙されそうだが、カバンの中身が不可解すぎる。だからって、機嫌そこねちゃラーメン無駄になるし、それとなーく聞いてみるか。

「なんだ、早く食えよ。麺がのびちまうぞ」

「三分、待つのよね?」

 カップラーメンじゃねぇ! アホかっていうか、初めて食うんだっけ……

「こいつは待たなくていいんだよ」

「そうなの、いただくわ」

 チエは、両手を合わせて例の言葉を紡ぐ。

「神と精霊、生き物たちに、今日の糧の感謝を」

「以下同文」

 横着に真似してみせると、チエは少し笑ってからラーメン食べ始めた。やっぱカワイイぜ、この笑顔はレアだぜ、レア。なんて思いつつ、例の疑問を遠回しにふってみた。

「なあ、チエの仕事って庭師か?」

「ちがうわ」

「じゃあ、ガーデニングが趣味とか?」

「趣味は、読書とお茶よ」

 そりゃそうだろ、俺は何聞いてんだよ。

「でも最近は、先輩たちに色々な衣装を着せられるのも、少しだけ楽しい」

 あい変わらず表情に乏しいんだが、今までで一番の長ゼリフから楽しそうなのが伝わってくる。きっと、いい先輩なんだろうな。

「へー どんなん着るん?」

「フリルドレスが多いわ。あと、ウサギの耳を着けたり、死神の鎌を持たされたりね」

 バニーなチエ、俺も見てぇぜ。チエの先輩、グッジョブだぁ!

「コスプレってやつか、俺にも見せてくれよ」

「だめよ、恥ずかしいわ」

 恥ずかしいって、いったいどんな衣装なんだ。見てぇ見てぇ、見てぇよぉお!

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいんだ。お礼に奢るからさぁ」

「しつこいのね、先輩に聞いてみるわ」

「おおっ 頼んだぜぇ!」

 よっし! 頼んだぜぇぇ、チエの先輩よぉ。

「言っておくけど、えっちな衣装じゃないのよ」

「そんなつもりねぇよ。チエのカワイイところ、もっと見せてほしいんだよ」

「へっ 変なこと言わないで」

 ちょっと声が裏返ったチエに睨まれっちまうが、頰っぺが赤いぜ。無表情よそおってるが、照れてるの丸わかりだ、そうゆうとこがカワイイんだよ。

「ハハハ…… 照れてんのか? 顔赤いぞ」

「いじわるなのね、あなた」

 例のチェーンソーだって、おおかたコスプレの小道具なんだよ。だってさ、こんなカワイイんだぜ、疑う方がどうかしてる。それにさ、虎の穴に入ろうって、昔の偉い人も言ってるじゃんか。うまくいきゃ逆玉なんだぜ。イヒヒ……



「そう…… わかったわ」

「ん、なんだ?」

 チエの呟きに顔を上げたが、こっち見てねぇ。

「あなたじゃないわ」

「……そうかぁ」

 ひとりごと? ……ちょっと不思議ちゃん入ってるんか、いいけどさ。

「今度のラーメンどうよ?」

「美味しいわ。でも、お昼の方が好き」

 弁当食い終わった俺は、ラーメン食ってるチエを観察する。

「油が苦手なん? あっさり系が好みとか?」

「そうね。ティッシュを、一枚ちょうだい」

 ティッシュを渡してやると、口じゃなく目元を押さえる。おいおい、ここ泣くとこ?

「泣くほど苦手なん? 無理に食わんでいいんだぜ」

「いいえ、ラーメンは美味しいのよ」

 じゃあ、何で? って、またティッシュ返してきた。今度は美少女の涙つきかよ…… あとで回収だ、後で。

「店が違うと味も違うからな。好みの店探すのもいいぞ、今度行こうぜ」

「そうね、ありがとう」

 ん? 今…… 俺、デートの約束したん? OKもらえたん? なんて自然に……

「しっ 調べとくから楽しみにな」

「ええ」

 やった! ゲームに廃課金してる場合じゃねぇぜ、真面目にならな。

「量が多くて、全部は食べられない。あなた、食べる?」

「ああ」

 反射的に返事した俺の前に、半分近く残ったラーメンが差し出された。

「はい、お箸」

「ふぇ?」

 チエが使ってた箸を手渡されて、しばし呆けちまう。え? 俺これ食っていいの? 美少女の食べ残しって、間接キスどころじゃねぇじゃん。大丈夫なん? 犯罪にならね?

「ごちそうさま。お茶を入れるわ、とっておきがあるのよ」

「うん……」

 呆けたまま、俺はチエの背中を見送った。旅行カバンからポーチを出したチエは、キッチンに向かってお湯を沸かし始める。小っちぇ体でキッチンに立つ姿がまた、いじらしくってカワイイんだよ。妹いたら、こんなんかなぁ…… なんて思う。

「神と精霊なんちゃら、以下同文」

 てきとう言って、ラーメンに箸つけようとして…… 箸の先端が目についた。そう、さっきまでチエが口つけてたヤツだ。イヒヒ…… トライ、ザ、間接キーーッス!

(愛してるぜチエ……)

 なんて、本人の方を窺いながら箸の先端に、そっと口づけた。

(ラーメン味だな)

 そりゃそうだ、直にキスしたって今ならラーメンの味だろ。しかし、それが……

(うめぇえ)

ズッ ズルズルッ

 箸をしっかり舐めてから、麺を勢いよく啜り込む。すっげぇうめぇ、近ごろ廃棄弁当ばっか食ってたのもあるが、何より直にチエの口やら舌を犯してるみてぇでたまんねぇ。

ズズーーーッ

 スープまでしっかり飲み干して、しばし呆ける。ああ、腹ん中にチエがいる……

「おいしかった?」

 声に気づくと、いつの間に戻ったのか、チエが目の前に座っていた。俺の愛用マグカップを手に持ってて、そこからいい香りの湯気が漂っている。

「……ああ、ひさびさに食ったからな」

「そう、最後に食べられてよかった」

「うん……?」

 最後ってなんだ? もう来ないってこと? なんて考えてると、チエは湯気の香りを楽しんだ後、一口飲んでからマグカップを差し出した。

「いいわ、よく出てる。はい、どうぞ」

「え…… と?」

 受け取りはしたが、ためらう俺にチエは言う。

「この部屋、カップが一つしかないのね」

「ああ、一人暮らしだからな」

 つまりは、回し飲みってこと? ……なにぃっ!

「良い香りでしょ、飲んでみて」

「うん」

 たしかに、花のようないい匂いがする。俺は、間接キスと取られないようにチエが口をつけたのと反対側から、さりげなく一口飲んでみた。

「うまいなぁ、なんだこれ?」

「キームン、紅茶よ」

「紅茶ってこんなにうまいのか、すげぇな」

 ストレートの紅茶って、もっと渋いと思ってたんだが、こいつはうめぇじゃん。

「お気に召して?」

「うん、めっちゃいい」

「よかった。私はいいから、飲んじゃって」

 遠慮なくゴクゴクと飲む。ラーメンの後ってのもいいな、きーむん、覚えたぜ。ひとしきり飲んでマグカップを返すと、チエも美味そうに飲む。

「夜は、お仕事に行くの?」

「ああ、もうちょいしたら出るぞ」

「それ、休めないかしら」

「シフト入ってるから急には…… どうして?」

 ちょい上目づかいに俺を見つめるチエ、何を考えてそんなことを……

「今夜は私と、一緒にいてほしいから」

「それって……」

 まさか? なんてこった! 大人の階段登りたいって、ことぉ?!

「まっ まだ早ぇよ」

「いいえ、もうすぐよ」

 もう直ぐって…… たしかに、初潮きたら女は大人って言うけどよ。だからってさぁ、そうゆうもんじゃねぇだろ、俺だって捕まりたかねぇし。

「いや早いって、だいたいおまえ幾つだよ?」

 質問には答えず、チエは立ち上がって俺の横に来ると、膝をたてて座り込んだ。そして俺の胸にすがるように手を添えて言う。って、顔が近ぇよ! 顔が。

「お願いしても、だめ?」

「だっ ダメだって、だいたい働かなきゃ家賃払えねぇし」

「それは、もういらない」

 え? それって、ホントに逆玉ってこと? マジか?!

「家賃いらねぇってマジ?」

「もう何も、必要ないのよ。何も」

 チエの甘い香りとヒンヤリした小さな手、そしてキレイな黒い瞳に吸い寄せられる。

「……わかった一緒にいるよ」

「ありがとう」

「ただし一緒にいるだけだからな、大人の階段はまだ早ぇ」

「何を言っているのか、わからないわ」

 解らなくていいんだ、まだ解らなくてな。そうゆうのは、巨乳に育ってからでいいんだよ。まあ仕方ねぇから、ちょっとくらい手伝ってやろうかな。イヒヒ……



ゴトッ

 スマホ取ろうとして、落としちまった。

「え…… あ?」

 腕が重い、てか何でこんな急に眠いんだよ、くそっ。とにかく、スマホ拾って発信。

プルルルル……  カチャ

「お待たせしました、○○○○、○○店です」

 店長だ、話が早ぇ。用意した言い訳を言おうとして……

「は…… い うぅ」

 口が、声が出ねぇ。頭が重くって体に力が入らなくって、後ろにバタンって倒れちまった。手からスマホが落ちる、すっげぇ眠い。なんで?

「もしもし、どうされました? どちらさまですか?」

 スマホから店長の声が聞こえるんだが、ダメだ…… 目が開かねぇ。

「すみません、××××の妹です。実は、兄が急に倒れて……」

 チエが店長と喋ってる。てか、おまえいつから俺の妹になったん?

「今、病院なんです」

 しかも、そんなリカバリ不能な言い訳を、どうすんだよ。ああ…… やばい眠い、気が遠くなってく。俺、ひょっとしてホントに病院にいるの? 死ぬの?

「はい、兄が職場にご迷惑かけるからと電話を、でも話せなくって……」

 なんだよ、その流暢な言い訳。経験者か?

「こっちは心配しないで、落ち着いてからでいいので連絡ください。お兄さんお大事にね」

「はい、ありがとうございます」

 ダメだ、もう意識が…………



「ねえ、起きた?」

 甘い吐息に起こされて、重いまぶたを開いた。

「ぅあ…… ちぇ?」

 俺の目を覗き込むのは、チエの黒い瞳か? 濡羽色の髪に額や頬をくすぐられる、美少女の白く整った顔が鼻先が触れあうほどに近い、思わず口づけたくなるほどだ。

「動けるかしら? 手をあげてみて」

 そうだ動けねぇ、ちから入れようとしても、手どころか全身ピクリとも動かねぇ。

「な…… に、これ」

「筋肉を動かなくする、お薬」

 チエの顔が少し引いて、代わりに注射器を持った手が…… なんだその手は?

「いっ ……つ?」

「さっき、あなたが寝ている間に」

 そういえば俺、なんであんな急に眠くなっちまったん?

「俺、な…… んで眠っ」

「眠くなるお薬、お茶に入れたの」

 あの紅茶なん? でも、チエも飲んだはずじゃ。

「おま…… も飲ん……」

「私にお薬は、効かないわ」

 また少しチエの顔が引いて、いつもの天井が見えた。俺のベッドの上だ、チエが寝かせてくれたんか。てか、なんでおめぇ裸なん? ……え?

「なん ……で?」

「だって私、死んでいるもの」

 死んでるって、意味わかんねぇ。そんなことより何なんだよ、その体は?

「ちが…… その、はだ か」

「ん? ああ、血がついちゃうから」

 そうじゃねぇ、そんなことじゃねぇんだよ!

「う…… あっああ」

「発声不良、でも心音は正常。お薬の量、いいようね」

 俺の胸に手をあてて、チエが呟く。その裸体、まぶしいほど白い肌、細くしなやかに流れるライン。真っ平らな胸に薄い桜色の乳首が、けなげに乙女の主張をしている。だが……

「ちがっ そ……」

「そう、量が違うと心臓も止まっちゃう」

 そんなんどうでもいいんだ、それより……

「ちっ ちげぇ、なん で…… そんな傷だらっ けなんだよ!」

「ん、これ?」

 そう俺が聞きてぇのは、チエの全身をびっしり覆ってる無数の縫合痕のことだ。首から胸、腹や腕、指先まで服や手袋なんかで隠れてた体全体に、縦に横に斜めに走る縫い跡。まるで、バラッバラに切り刻まれた後で、乱雑に縫い合わせたような。

「切られたの、少しずつ」

 チエは無表情に、お茶の話でもしてるみてぇに淡々と言う。

「そっ なん……で」

 切られたって? そんな酷ぇこと、誰にやられたん? キレイな肌が台無しじゃん!

「さあ、食べるためかしら」

「たっ 食べ…… ?」

 チエを…… 人間をか? そんな…… まさか?

「ええ。あのひとは毎日少しずつ、私を食べたわ」

「まい にち?」

 一気に殺さねぇで、なぶり殺しってこと? しかも見てる前で食うって、奇知外かよ!

「十四日間」

「え? じゅ…… う」

「私は朝日を十四回、数えたから。たぶん、あってる」

 おめぇもなんで、そんな冷静なん。頭いいだけか? ちくしょう! いってぇ誰なんだ? こんな…… こんな素直でカワイイ、俺のチエに酷ぇことをよぉお!

「……ダレ ?」 

「誰かは知らない、あなたのような変態よ」

「え? ……俺」

 俺が? 俺がチエにそんな酷ぇこと、するわけねぇ!

「ち が…… 」

「変態よ、あなたは」

 俺が変態って…… 今朝の醜態のこと? ゲーム中に女いたぶってたから? たかがゲームだぜ、リアルでそんなことするわけねぇじゃん。

「……あ おれ」

「言わないと、わからない?」

 そういや…… 今朝の夢? って、あれ夢じゃん。あれ? ……俺、夢って分かってなくて女おそってた? 俺、おれ…… リアルに何やらかしてん。

「ぅあ…… ああ」

「わかった?」

 チエがまた顔を近づけ、黒い瞳が俺の目を覗き込んだ。甘い匂いが、俺を追いつめてくる。マジかよ? 俺って変態なん? どうすりゃいいってんだ。

「どっ どうし……」

「あなたのことは、知らない」

 素っ気なく突き放され、途方に暮れっちまう。

「ただ、知ってほしいの」

「な…… にを」

「殺すって、死ぬって、どういうことなのか」

 そりゃ…… リアルで殺ったことなんかねぇし、死ぬってどんなだ?

「私が教えて、あ・げ・る」

「ぅあ!」

 チエの唇が、軽く頬に触れた。ちょっとヒンヤリした柔らかい感触と、甘い吐息が皮膚から浸透して全身を駆け巡る。チンコが無節操に反応しやがる、自重しろよ。

「よいしょ」

 頭を抱き上げられると、四つん這いで俺をまたいでるチエの絶壁から、乳首が微妙に出てんのが分かった。さらにその向こう、チエの足の間に俺の勃起チンコが見える。そのまま後ろに座ったら、入っちまうんじゃね? あぶねぇぞ、おい。

「はい、まくら」

 そう言って下ろされた頭の位置が、高く固定された。そしてまた、チエの顔が近くなるってゆうか、デコが当たってる。鼻が触れる、甘い吐息に唇をくすぐられる。

「あぅ あ……」

 あと少しって、口を必死に動かそうとするが、届きゃしねぇ。

「そのまま、待ちなさい」

 チエは俺の上から、ベッドから降りて行っちまった。

 カワイイ尻を目で追ったが、首が動かせんくて見失う。後にポツンと残された勃起チンコにムカつく、あの傷だらけで痛々っしい体見てさ、よくそんな気が起きるもんだ。やっぱ俺は、くっそ変態ヤロウなんか?



「なに? あれ……」

 枕のおかげで自分の体を見れるようになって、あらためて見るに、全裸にひん剥かれてんのが分かった。チエが脱がしたんだろうな、清楚そうな美少女がよくやる。てゆうか、足と腕の付け根に黒いベルトみてぇなのが巻かれてるんだ、シャーペンくれぇの黒い棒がくっついてて…… 何だろうな? あれ。

「待たせたわね」

「ぅあ……」

 またしても顔が近ぇ、距離感バグってんな。普通につき合うってんなら、そんなとこもカワイイんだと思うけどよ、この状況じゃあな……

「よいしょ」

 ベッドに上がって俺をまたいで立つ、手に持ってるのは例のチェーンソーだ。これから俺がどうなるか、想像するまでもねぇよな。しっかし、それよりチエの傷跡だらけながらキレイな裸体に魅入られちまう。しかも俺をまたいでるもんだから、あそこん中の薄ピンク色の具まで見えてて、チンコがもうギンギンに痛ぇ。

「始めるわ、いい?」

 チエは後ずさって、俺の膝の上にペタンと座った。細い骨張った、それでいて柔らけぇ太腿の生の感触に不意打ち食らって、ちびっと白いのが一滴、チエの頰っぺに飛んだ。

「ふーん」

 精液の臭いが恥じぃんだが、先走りチンコの向こうから、冷たい目で見られてゾクゾクしちまう。そんでもし咥えてくれたらもう、今すぐ死んでもいい!

「やっぱり、変態ね」

「ごっ ごめ…… んっ」

 チエが棒をクルクル回すと、足の付け根に巻かれたベルトがギリギリと締まってく。すっげ痛ぇし、血ぃ止まって血管ドクドクいってんだが。

「お薬もこれも、あのひとがしていたのよ」

 もう一本もギリギリと締め上げて固定したあと、チェーンソーを手に立ち上がったチエは、後ずさってベッドから降りると、微かな笑顔を浮かべた。

「さあ感じて、殺すと死ぬを」

シュィィィィ……

 チェーンソーが軽く唸り始めた。電動だからか、拍子抜けするほど音が小せぇ。小せえんだが、そいつの致命的な威力はリアルに想像できて、背中に嫌な汗がじっとり滲む。

「うっ ああ……」

「よいしょ」

 小型軽量のチェーンソーだが、それでもチエの細腕には重すぎるんだろう、危なっかしくてハラハラしちまう。が、バカな俺の心配をよそに、チエは水平にしっかり構えたそいつの歯を左足の小指あたりに合わせて、無表情に言う。

「痛くするわね、ごめんなさい」

ィィィ…… バツッ ンンン……

 あっけなく小指が跳び散って、一瞬遅れて飛び上がりてぇほどの激痛が走った。

「っでぇ!」

 痛ぇ 痛ぇ いってぇよおお! 動けねぇから、よけぇに痛ぇ。

「そう、痛いでしょ」

 ゲームやってた時みてぇな、冷静な声。そしてまた、チェーンソーが唸る

ィィィ…… ブッ ビッ バチッ……

 ちょっと待てって言う間もなく、薬指、中指、人差指、親指と一本ずつ順番に切り飛ばされちまう。さらに右足の指を全部切った後、足の甲を横向きに切断し始めた。

ィィ…… ギュアアアアアア…… アッァアア……

「いっ! ぁが……」

「よいしょ、かたいのね」

 デカい骨を切るにはパワーが足りてねぇんか? 両足の甲に続いて足首を切断されるまで、けっこう時間をかけられちまう。肉に骨までガリガリ削られてすげぇ痛ぇし、なにより自分の体がどんどん無くなってくってのがぁ! 理不尽すぎるぅうう! 

「どうかしら、見える?」

「ひっ ……ぁあ」

 よいしょと持ち上げられて見ると、俺の足が…… 両方の足首から先がスッパリ無くなってんじゃん。なんじゃこりゃ、俺どうなっちまうん?

「続けるわ」

 相変わらず表情のねぇ声でそう言うと、チエは膝下あたりにチェーンソーを当てがう。待て待てまて、そんな…… ヒトん体をちびっとずつ切ってくつもり?

ィィィ…… ジャァァアァアアア……

「ぁああ…… っ!」

 痛っでぇ! もう、ひと思いに殺してくれぇぇ!



「次は、右手よ」

 すっかり両足ぜんぶ切り取られて、これから一生車椅子かよって落ち込む暇もねぇ。今度は右腕の付け根のベルトをギリギリ締め上げられる。そういや血があんま出てねぇのは、そのためのベルトってこと? 失血死させねぇように。

ィィィィ…… ビチッ ンン……

「 いっ! 」

 右手の小指の先を飛ばされて、今までにねぇ激痛が走り声が詰まる。痛みに麻痺してきてたとこに、こいつぁ反則だ!

「そうね、いちばん痛いの。指が」

ィィ…… ヂッ チュンッ ヂャッ チュ……

「ーーーーーんぅ!」

 関節ごとに指をコマ切れにされてって、もう痛すぎて悲鳴にもなんねぇよ。足で腕押さえてキックバック避けて器用にチェーンソー使って…… ちっくしょう、手慣れてやがる。

「見て」

「うっ あ……」

 血まみれでコマ切れの指を、手のひらにすくって見せてくる。動けねぇ俺は、そいつを涙目で見るしかねぇし、さっきから嫌な汗が止まんねぇ。指なくなったらゲームできねぇじゃんって、バカだ俺は…… ああ、チンコも扱けねぇんか。

ィィィ…… ギュィイイイイ……

「ふっ ……ぐっ」

 俺の胸に指の残骸を置いてバッテリー交換すると、無表情に淡々と手首から腕、肘へとブツブツ輪切りにしていきやがる、痛ってぇんだよもう! うぁあああ……

「もっ、ころ…… して」

「だめよ、ちゃんと最後まで感じて」

 許しちゃくんねぇし、最後って…… 俺がナニしたってんだ。

「なん…… で、お…… れ」

「だ・か・ら、あなたのことは知らない」

ィィ…… シュィイイイ…… ン

 言ってる間に、右腕なくなってるし。ナンだってんだ! もう嫌だ、イヤだ!

「くっ そ…… ブスぅ!」

「あなたの死は、神の裁定なの。私は仕事をするだけ、私のやり方で」

 ナンでぇ、何だよそりゃあ?

「私は十四日もかけないから、安心して。今夜中に終わるわ」

 て、左腕のバンドを締めながら言う。そりゃ安心だよ、うぅ……

ィィィ…… ビチッ チュン ヂッ……

「ふっ ぐっ ぅうう……」

 そのまま淡々と左手バラしてくし、冷静ってか ……こいつ経験者だ、切られる方の。

シュィイイ…… ジャッ ヂュッ ビッ……

「ぁうぅ ……ぅあ」

 両足に利き腕も無くなって、最後の希望の左手まで消えてく。もう泣くしかねぇ。

「はい、これも」

 新たな指の残骸が、胸の上に追加される。

「あなた、食べる?」

「ーーーーーーっ!」

「そうよね、私も食べなかったわ。口に押し込まれたけど」

 くそっ、どんだけ嬲られったんだよ…… チエ、おめぇはよぉ。

ィィ…… ズゥィィィィ……

 左腕の残りを切られながら、痛みよりも怒りがこみ上げてくる。チクショウ! 俺のチエを切り刻んだ変態ヤロウめ、ぶっ殺してやる!

「だーるまさん、だーるまさん……」

「なっ ……に?」

「あら、あの人が歌っていたの。気に障ったかしら」

 カワイイ声が聞いてて嫌なわけねぇ。だが、なるほど、両手両足をすっかり切り取られちまった俺は、確かにダルマさん状態だ。チエに手も出せねぇや。

「よいしょ」

 股間をまたいで立ち、俺を見下ろすチエ。小っちゃくてキレイでカワイイ、俺が流した赤い血しぶきに濡れる裸体。無数の縫合痕の意味が、今の俺には痛ぇほどよく解る。

(俺にも切らせろぉおお!)

「あなた、最後にお望みはある?」

「の ぞみ……」

「この先に進むと、すぐ死んでしまうと思う。私の時は機械につながれて、首だけになるまで生かされたけど、私はそこまでしないわ」

 死ぬって言葉に、ゾワゾワと背筋が震えた。んなら望みなんて、ひとつっきゃねぇ!

「あ ……そのチン コ、チエ ……の中 入れて」

 そう、止血された血液をパンパンに詰めた俺のチンコは、ギンギンに勃ちっぱなしだ。

「なに? 私と、せっくすがしたいの」

「そっ そう……」

 そうだよ、タダで殺られてたまるか。犯らせろよ!

「嫌よ、変態」

「なん ……でぇ」

「する理由がないわ、したこともないし」

 なんだと! 処女宣言にチンコがイキりやがる。てか、じゃあ何で聞いたん?

「き…… 聞い 」

「聞いたけど、何でもしてあげるわけないでしょ」

 そんな殺生な、ヤロウの望みなんて決まってるじゃんかよぉお!

「……さき 先っちょ だけ」

「何を言っているのか、わからないわ」

 わっかんねぇんか、処女だから? くっそぉおお!

「くっ 口か、手……でも しごい て 」

「何を言っているのかわからないけど、変態はきらいなの」

 もぉおお、自分で扱けねぇんだよ。俺の手ぇ切った責任とりやがれぇ!

「……じゃ あ、舐め させろ!」

「もう死ぬのに、そんなことしか思わないの?」

 ああ、そうだよ! 男だったら皆そうだろうが。つっても、らちあかねえし。なんかこう、うまく乗せられねぇもんか……

「み 見せ…… て、チエ キレイ」

「ん? 私を見たいの」

 今度は素直にチェーンソー置いて、両手を広げて見せてくれる。左右に腰ひねって体を傾ける控えめなポーズが、無表情ながらにカワイイ。

「キレイ だ、チエ」

「そう? こんなに、傷だらけなのに」

 お世辞じゃなく、チエはキレイだ。絶壁だが完璧なバランスの体と顔のパーツ、透きとおる白い肌に映える濡羽色の髪。キズものにされちゃいるが、ちっとも気にならねぇ。それにさ、キレイな裸を赤黒く濡らしてる返り血は、ぜ~んぶ俺のもんだ。ゾクゾクするぜ。

「キレイ だ…… すごく」

「あ…… ありがとう」

 照れてんのか、微かに見せる笑顔も凄ぇカワイイ。

「もっ と、見せ て」

「どうすれば、いいの?」

「お…… また ひら いて、見せ……」

「やっぱり、いやらしい」

 微笑ひっこめて、冷たい目で警戒してくる。そりゃそうだ、くそっ。

「ちがっ 俺、生まれ…… た とこ見たい」

「ふーん、それだけ? ほんとうに」

「そっ そう…… 純粋 に」

「あやしいわね」

 ちっ、ガード堅ぇ。こうなりゃ土下座して頼むか…… この体で? どうやって!

「死っ ぬ前に…… キレイなチエ 見せ て 見たい みた ……いぃ!」

「しつこいのね。いいわ、最期だし」

 やった! 頼んでみるもんだぜ。恥したなくチエが足ひろげて、露わになる無毛で薄ピンク色の処女マンコ。すっげぇ、凄ぇキレイだ!

「あ ぁあ…… キレイ」

「……ありがとう。あまり見ないで、恥ずかしいわ」

 相変わらず表情とぼしいが、赤くなってんの丸わかりでカワイイぜぇ、俺のチエ!

「もっ と よく見せ ……指で 開いて」

「なっ だめよ!」

 俺の期待に反して、手で隠されっちまう。ちっ、いいだろ犯るわけじゃねぇし。

「お 願い…… 生まれ たとこ 見せ ……て」

「私じゃないわ、あなたを生んだのは」

 そりゃ分かってるよ処女なんだろう、だからこそ見てぇんじゃん。

「しぬ さいご お願い…… 見せ て」

「しかたないわね、これで……いい?」

 押しに弱いんか素直なんか、優しいんだろう。チエの指先がそっと、控えめなヒダを左右にひろげてく。カワイイ薄ピンク色の処女マンコがご開帳だ、ゾクゾクが止まんねぇ!

「うぁ カワ ィイ キレイ……」

「ぅん、もういいかしら」

 ホント小っちゃくてキレイでカワイイ、チエの処女マンコ。真ん中やや下に小っちゃい穴が一つあって、そのまわりが処女膜か? その処女穴から下がったとこに、ギンギンに待機中の俺の勃起チンコが…… ああ、もうたまらん!

「ま まだ……」

「もう、はやくして」

(わかったよ、早くシテやるぜぇ!)

 チエが恥ずかしそうに顔そらすと、冷たい視線から解放された俺の妄想が暴走を始める。

「チエ ……好き だ」

「そう? うれしいわ」

 ちっとも嬉しそうに聞こえねぇが、そんなんどうでもいい。

 まずは、純潔な処女穴に俺のチンコを無理矢理ねじ込む。処女膜やぶられて泣き叫ぶの無視して、小っちぇ体抱きしめて子宮ガンガン突きまくって、ああ…… 最高に気もっちぃいい!

「ハッ ハ ……チエ」

「なに?」

 くそっ、クールに清ましやがって、メチャクチャにしちゃる! 

「その ハッ ……キズ 痛くね?」

「痛いわ、ずっと疼いてる」

 そうだろ、よっく分かるぜ。もっかいバラしたろうか? ハッハァ…… 俺みてぇに両手足落として、ダルマさん状態でボテ腹に孕ましちゃる。イヒヒ……

「ハッ ハァ ……ハァ」

「さっきから、どうしたの?」

 クール気取ってんじゃねぇ、おめぇは俺専用の赤ん坊工場だよ。なぁ…… ちぃええ!

「ハァ ……アッ!」

「なに? ……きゃっ!」

ビュッ ビュクピュッ ビュービュー

 扱いてもねぇのにチンコが派手に暴発して、大量の精液が、黒い瞳を見開いたチエの眼前を天井めがけて飛んでイク。それは直ぐにチエの頭上に降り注ぎ、濡羽色の髪をベトベトに汚すと、流れる白濁液が、整った顔と傷だらけの白い肌を濡らしてゆく。

「ハァ ハ ヘヘ……」

「……………………」

 ハハハ…… 犯ってやったぜ! チエのヤツ怯えてんのか、声も出ねぇらしい。俺の精子が桜色の唇を乗り越えて貧乳の上を流れ、律儀に開いたままの処女穴を目指してイク。

(とどけ、届けとどけぇ 入れぇ!)

「……ふぁ ふぁああ」

 あとちょいってとこで、呆けた声だしてチエがペタンと座り込んじまった。ちっ、まあ凄ぇ怯えて俺のチンコ見てやがるし、スッキリさせてもらって満足だ。

「なにこれぇ、やぁああ……」

 クールキャラ崩壊してやがる、もうただのメスガキだ。ざまぁみろ、イヒヒ……

「せい しだよ、学校…… 習って な い?」

 萎えかけのチンコ見つめて、返事もしねぇ。お掃除フェラでもするん? ハハハ……

ボコッ!

「てっ 痛てぇ」

 グーパンでチンコ殴って、いきなり何だ。そりゃ俺も、いきなりぶっかけたけどよぉ。

「ぅうぁあああ……」

バシッ ベチッ パンッ バチン…………

 いてててて…… 泣きながら連打しやがる、そんなにチンコ嫌うなよ。……痛てて。

ボクッ ピュッ

「っ あ!」

「ーーーーーーーーーっ!」

 殴られた瞬間タマがギュッとなって、精液がチエの顔に飛んだ。目ぇ押さえて動かねぇし、目に入っちまったんか、大丈夫か?

「だ…… だいじょ ぶか?」

「だましたわね、いやらしい」

 今のは不可抗力だ、俺のせいじゃねぇ。さっきのは…… まあ、俺が悪かったよ。

「最後 のは、わざと じゃ……」

「……変態、ころす」

 ぼそっと物騒なこと呟いて、目ぇ押さえたままベッドから降りて行っちまった。

(悪かったよぉ…… てか俺、さっきから殺されてんだよな?)



「それで、満足なのかしら? 変態さん」

 目と顔洗って、クールキャラ復活か。ただ、髪とか体は返り血に精液まみれのまま、顔だけキレイってのが逆に恐ぇえ。

「ぅ ……ごめ ん かけて」

「もういいわ、変態のすることですもの」

 いや絶対、怒ってるだろ。

「……男 だから、しか たねぇ んだ」

「ふーん、そう」

 心なし冷たい声で言い放ち、チェーンソーに手を伸ばすチエ。解ってくれよぉ……

「ほん と、ごめ ……ん」

「だ・か・ら、もういいって言ってるでしょ」

 いや、嫌われたまんま死にたかねぇじゃん、自業自得っちゃ、そうだけどよ。

「チエ…… 好き だから、いやらし なる」

「ふーん、そう。ほんとうに?」

「そ ……ほんと 好き だ」

「そう言うなら、嫌なことをするべきではないわ」

 そりゃ、たしかに真っ当な話だけどよぉ…… 男はそんないい子にゃなれねぇのよ。ましてさ、これから死ぬって時だぜぇ。

「ご…… ごめ ん」

「あなた、お母様は? 女性のきょうだいは、いらっしゃらない」

 あやまって誤魔化そうとしたが、妙なこと聞いてくる。いるけど、それが何だってんだ。

「いる ……母ちゃ んと、姉ちゃ ん一人」

「お母様とお姉様が、知らない男の人に酷いことをされたら。あなた、どう思うかしら?」

 あのくそババァと、くっそ生意気な姉貴がか? そりゃあ…… 

「その…… ヤロウ、ぶっ 殺す!」

「そうね、そうでしょ」

 ああ、そうだよ。お互い嫌ってても家族にゃ違ぇねぇ、どっかのくそヤロウにムリヤリ犯られっちまうなんて…… 凄ぇかわいそうと思うし、何より俺がガマンできねぇ!

「わかっ た。……チエのこと考え ない俺 悪い」

「解かったのなら、いいわ」

 さっきから、チエを酷ぇ目にあわせたヤツに怒ってたってのに、その俺がチエの嫌がることしちまうなんて、矛盾もいいとこだった。反省だ…… とはいえ俺の状況ってのも、どうなのよ? チエの仕事、神の裁定とやらで死ぬってのも、結構かわいそうなんじゃね。

「ほかに、お望みはないの? いやらしいのは無しで」

「……いっ いいの?」

 あんなやらかした後でも、まだそれ有効なん? チエ、おめぇ優しすぎんか。

「あまり時間はかけられないわ、何かある?」

「……え っと ぅん……」

 イヤらしいの以外って、なんも思いつかねぇ…… 思いつけよ俺! 時間ねぇらしいぞ。

「無いのね、わかったわ」

「ちょっ ちょ 待って!」

 無慈悲にチェーンソー向けられて焦った、ちょっと待ってくれよぉ……

「しかたないわね。膝枕して頭を撫でてあげるけど、それでいい?」

「お願いし まっす!」

 美少女のナマ足ひざまくら! 最っ高のご褒美だぜ。何で思いつかなかった? 俺。って、チエはイヤらしい意味で言ってんじゃねぇ、自重しろよ俺、おれぇぇえ!

「よいしょ」

 擦り寄ったチエが俺の頭持ち上げて、枕の代わりに…… チエのヤワ膝がぁああ!

「はい、どうかしら」

 チエのヒンヤリした小っちぇ手に導かれて、ふっわふわに柔らけぇ細腿に頭をあずけた。

「ぅおお ぉおお……」

「きゃっ ……なんなの、気持ちいいの?」

 思わず叫んで、ビックリさせちまった。そりゃ気持ちいいさ、細くて骨張っちゃいるが十分柔らけぇ細腿に頭の重みぜんぶ預けて、ヒンヤリしたチエの体温と、血や精液の臭いに負けてねぇチエの甘い香りに包まれ、見上げる先には最っ高の美少女がキレイな裸さらして俺を見てるんだぜ。こんな幸せ感じるシチュなんて、世界にこれ一つっきゃねぇよ!

「最っ 高だよ。……ありが と」

「うふふ、よかった」

 小っちぇ手で、俺の頭をそっと撫でてくれるチエの笑顔が、すごく優しい。

「あなた、かわいいわ。赤ちゃんみたいね」

 ちょっと切なそうに、チエは続ける。

「大人になったら私、お母さんになりたかったの」

 チエならきっと、凄ぇいいお母さんになると思うぜ。

「だから、切られたり死ぬことよりも…… 子宮を食べられたときが、一番つらかった」

 なっ なんてことしやがんだ、おれの俺の…… 俺のぉお!

「…… おっ 俺、チエ の赤ちゃ ……なる」

「! ……あなた、何を言っているの?」

 ホント何言ってんだと俺も思うよ、んな性癖ねぇしな。だが……

「俺 あなたから ……生まれた かった」

「へっ 変なこと言わないで」

 ビックリするだろうが、マジにそう思う。チエみたいに優しくって素直で頭も良くて、ときに容赦なく厳しい。そんなひとに産んでもらえば、俺なんかでも、人生もっとちゃんと頑張れたんじゃないかって思うんだ。別に、リアル母ちゃんのせいにするわけじゃねぇけどさ。

「本気だ よ、 ……好き お母さ ん」

「……………………」

 チエの唇が微かに動いてるが、言葉はない。黒い瞳が揺れて、涙の滴が俺の額に落ちた。

「あなた……」

 言葉の始まりとともに、見たことない優しい笑顔が表れ、俺を魅了する。

「おっぱい、飲む?」

「……う ん」

 膝枕から抱き上げられた俺の唇が、絶壁から出ているチエの乳首に、そっと当てがわれた。

「あっ ……私の赤ちゃん」

 チエの泣きそうな笑顔…… そんな幸せそうな笑顔を守りたくって、毛頭そんな気はないんだが、イヤらしくならないように優しく乳首を吸った。

「何も出ないでしょ、ごめんなさい」

「ちゅ いい よ、お母さ ん…… ちゅき」

「んぅ ……幸せ」

 俺だって幸せだ。チエが殺られなきゃ、本当は俺たちそうなる運命だったんじゃね? なんてな、チエ…… 母さんの優しい母親の笑顔をそっと見上げながら、そう思った。



「いいの?」

「あ ……ああ やって」

 無節操に反応してやがった俺のチンコに、チェーンソーが向けられる。そうだ、チエをもう汚したりできねぇよう、バッサリやってくれよ。

「わかったわ。痛かったら、左手を挙げてね」

「ぷっ ハハ…… おっけぇ 母さ 」

 この期に及んでの、チエの冗談に吹いた。歯医者じゃねぇってか、もう左手ねぇんだよ。

シュィィィ ジュバッ バッバッバババ……

「ふぉ おお……」

 チンコヤロウが千切れ飛んで、血がドバドバ噴き出した。止血されてたのが一気に出たんだろう。キレイになってたチエの顔とかを、真っ赤に汚してく。目に入んじゃねぇぞ。

「長引くと途中で死ぬから、一気にいくわね」

「ああ 望むとこ だ。母さん……」

「なに? どうしたの」

 最期だ、恥ずかしがってる場合じゃねぇ。いうぞ言うぞ!

「愛して る」

「あっ…… 私も愛してるわ、××ちゃん」

シュィィィィィィ……

 チェーンソーの先が下腹あたりに近づいてく。下から順番なんだ、ホント几帳面だよなぁ。

「キッ クバック気を つけて」

「わかっているわ、お母さんに任せて。ちゃんと、殺すと死ぬを感じるのよ」

「う ん、わかっ た」

……ィィィ ギャバッ バッバッ ビュアァアアア……

 チェーンソーの回転刃が腹ん中を引っかき回して、千切れた内臓が派手に跳び散った。赤とピンクの肉片が、壁とか天井やチエの体に、べっとり張り付いていく。

「ふっ あぁああ……」

(チエ…… また汚してごめんよぉお!)

ギュィィ ギャリギャリッギャリ…………

「ぁ ばばぁ ば……」

 続けて、あばら骨をガリガリ削られっと、もう痛いの通り越して笑っちまったよ。

ジュビッ ビャァアアァア…………

「ぁば…………」

 胸ん中に侵入した回転刃が、心臓やら肺だかをグジュグジュのミンチにしてく。鼻と口から血が吹き出て、当然のことだが声が出なくなった。そして意識が薄れて……

「これで最期よ、頑張ったわね。いい子」

「!……」

 チエの声に呼び戻された。あぶねぇ、死ぬとこだったぜ。首に優しく、チェーンソーの回転刃が当たってる。長かった、これでやっと終われるんだな。

(ずいぶん手間かけさせちまったな。ごめんよ…… 母さん)

ズゥィィィィ…… ジャァアアアァアア……

 チェーンソーが唸り、俺の頭部が、残骸になった体から切り離されてく。

「はい、おしまい」

 すっかり切り離されてみると、なんだか身軽になった気分だ。こんなんなっても、まだ意識あるんだな。ふしぎだ、不思議だ。

「よいしょ、重いのね」

 持ち上げられたらしい。チエの黒い瞳が、間近に俺の目を覗き込んでる。

「ちゃんと感じられたかしら? あなた」

 囁く声が、心地いい。だんだん目が霞んで見えなくなってく、終わりが近そうだ。

「殺すって、死ぬって、どういうことか解った?」

(わかった、よーく解ったよ。お母さん、本当にありがとう)

 声が出ねぇながらに、必死んなって口を動かした。伝わるか? 伝わってくれ。

「そう、よかった」

 伝わったらしい。チエの…… 母さんの優しい笑顔が、俺が最期に見たものになった。

「えらいわね、あなた」

 いよいよ意識が薄れていくなか、唇に何か柔らかくて少しヒンヤリしたモノが、優しく押しつけられた。チエと飲んだあの紅茶の、花のような香りと味がひろがる。

(な? ……まさ か!)

 とても心地いい、最期の瞬間。それが何なのか知るすべもなく、俺の意識は途切れた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 一本道だ。

 色とりどりの花が咲く野原を突っ切って、まっすぐ伸びる道。霧のようなもやに包まれて、道の先も野原の果ても、その終わりは見えない。

 道の脇、花に囲まれて、一人の幼けない少女が座り込んでいる。

 身長は百十センチほどか、健康的でふくよかな体をふわふわのメイド服で包んでいる。オレンジ色のふわふわの髪、クリクリ動く茶色い瞳、愛らしい横顔。可愛らしい小さな手を動かして花輪を編んでいる。

 膝の上に抱くのは、ウサギのぬいぐるみ。ときおりクローバーを摘み取っては、モグモグと口を動かしている。よく見れば、ふわふわ髪の下には耳がない。かわりに、髪の中でウサギの垂れ耳が楽しげに揺れていた。



「まいごの迷子のウサギさん、お家はど~こ?」

 歌う声に一瞬だけ、ウサ耳がぴょこんと立ち上がる。ついで振り向いてみれば、道を歩いてくる少女が二人。囁くように歌うのは、目にも眩しい金髪の少女。その横に並んで、艶やかな濡れ羽色の髪の少女が歩いていた。

「スーサ、チエも!」

 元気よくピョンと跳ね起きたオレンジ髪の少女、そのまま跳ねるように走り出す。

「ホウ、おひさ~」

「お久しぶりです、ホウリィ先輩」

 抱きつかんばかりの勢いだったホウリィの足は、あと二メートルほどを残して、ピタリと止まった。小さな鼻がヒクヒクと動いて、愛らしい顔がフレーメン反応をおこす。

「臭っ! 血ぃくさっ! あんたたちどんな仕事してきたのよ?!」

 ホウリィの叫びに、スーサとチエは、怪訝そうに顔を見合わせる。

「えー、そんな臭うかなぁ」

「私はシャワーで、流したわ」

 能天気に答えるスーサと冷静なチエに、ホウリィは呆れたように言う。

「チエ、シャワー使ってその臭いはヤバいわ。スーサなんか、違う臭いまでするし……」

「自分では、分からないものですね。分かりますか? スーさん」

「分っかんないなぁ~ 鼻が利きすぎなんだよ、ホウは」 

 二人との認識のずれに、諦めたホウリィがボヤく。

「あんたたちの仕事は、いっつも下品ね」

「そうかなぁ~」

「否定はしません」

 あくまでマイペースをくずさない二人に、ため息をつくホウリィ。

「仕事はスマートにするものよ、ボクみたいにね」

「仕事のスタイルは、死天使に一任されています」

 チエの冷静な答えに、ホウリィは優しく諭す。

「そうだけど、ボクらには迷い子を導く責任があるんだ。魂の再生リサイクルの始まりを担うんだから、それは大切なことなんだよ」

「そうですね、常に自覚しています」

「それでその臭いなの、チエ」

 お説教タイムにスーサが割り込んでくる。

「まあまあ、上はそれ含めて誰を派遣するか決めてるんだし、私たちは気にしないで自由に殺ればいいんじゃない。適材適所ってやつよ、ホウ」

「スーサ、あんたは自由過ぎなの!」

「アハハ…… 元気だねぇホウは」

 ホウリィに噛みつかれても余裕のスーサ、チエはそんな二人を冷静に眺めている。

「い~いチエ、もと神様のチート山盛り死天使なんて、こいつ一人っきゃいないんだからね。ゼ~ッタイ、スーサの真似しちゃダメだよ!」

「自明のことでしょう、ホウリィ先輩」

「大先輩をこいつ呼ばわりかい? 迷子になってお家に帰れなくって泣きベソかいてた、あのウサギさんが偉くなったものねぇ。ふふふ……」

 後輩と先輩のダブルツッコミに言い返す言葉を探すが、思いつかずに愛らしい顔をしかめるホウリィ。急にピョンと振り向いたかと思うと、一人先に立って歩き出す。

「ほら! 早く行くわよ。報告が遅くなったら、死天使長に叱られるんだから」

「はいはいはぃ、寂しんぼうのウサギさん」

 急かしたわりにホウリィは、道の左右にピョンピョン寄り道して花を摘み取っては、歩きながら花輪を編んでいる。やがて完成したらしい花輪を、抱いているウサギのぬいぐるみの首にかけて満足そうに、愛らしく微笑んだ。

「ところで、チエとお茶会やろうって話してたんだけど、ホウは来ないかな?」

「私がお茶を入れます、とっておきがあるのよ」

 後ろを歩いていた二人に誘われ、ホウリィは満面の笑顔で、ピョンと振り向いた。

「行くぅう!!」


 to be continued



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