第12話 偶然の休日

 光陰矢の如しとはよく言ったものだ。試写会の夜に始まった華凛との関係は、もう半年が過ぎていた。


 初めて関係を結んだときは罪悪感に苛まれていたが、華凛との逢瀬を重ねるごとにどんどん薄れていった。月に一度か二度、映画館やミニシアターで待ち合わせるのが常となっていた。


「おはよう、勝巳さん」


 華凛は、快適さと魅力を両立した装いで現れた。ゆったりとしたワンピースは、淡いピンク色で、季節感を演出しつつも長時間の着用に適している。足元はローヒールのパンプスで、歩きやすさを重視している様子。髪は軽くウェーブがかかっており、首元にはさりげなくシルバーのネックレス。全体的に、カジュアルな印象だが、洗練された雰囲気が漂う。


「おはよう、華凛」


 華凛の笑顔を見ると、胸が高鳴る。華凛と会うときは、いつも初めてデートをする高校生のような気分になる。


 今は、日曜日の朝。元々はお互いに予定があり、会えないはずの日。だが、お互いに予定がなくなってしまったことを知った僕たちは、約1ヶ月ぶりの逢瀬を楽しむことにしたのだ。


 2人で並んでチケットを購入し、ロビーの隅に移動する。人目を避けるように、入り口からも売店からも離れている場所に立つ。


「会いたかった」


 華凛の声が僕の耳元で囁く。その吐息に、背筋が震える。


「僕もだよ。今日も綺麗だね」


 照れくさそうに目を伏せる華凛。その仕草に、思わず手が伸びる。指先が彼女の手に触れた瞬間、電気が走ったような感覚。人目を気にしながらも、そっと手を繋ぐ。華凛の体温が、手のひらから伝わってくる。


「緊張してる?」


「ええ、でも……勝巳さんと会えるのが嬉しいの」


 華凛の答えに、年甲斐もなく胸が熱くなる。


 映画の開始まで、まだ20分ある。二人で肩を寄せ合い、ポスターを眺める。たわいもない会話を交わしながら、時折視線が絡む。その度に、心臓が跳ねる。


 指先で、そっと華凛の手の甲を撫でる。彼女が僕にもたれかかる。映画が始まるのが、待ち遠しくもあり、この時間が永遠に続けばいいとも思う。


「……そろそろ、時間ですね」


 華凛の言葉に頷き手を離すと、名残惜しそうな表情になる華凛にちょっとしたイタズラを思いつく。


 シアターに入る直前、華凛の耳元で囁いた。


「映画の後も楽しみだね」


 華凛が耳まで赤くしつつ小さく頷いた姿を見て、理性がぐらつく気がした。


 映画を観終えた僕たちは、近くのレストランで昼食をとった。食事をしながら観てきた映画の感想を話し合う。僕が見落としていた部分を教えてくれたり、映画の描写について意見を交わしたり。華凛と話すような関係にならなければ決して得ることのできなかった時間に、心が満たされるのを感じていた。


 そして、僕たちはビジネスホテル向かう。今はデイユースとして日帰り利用することができるのはありがたいものだ。感謝の気持ちを胸に、ビジネスホテルの部屋に入る。ドアを閉めた瞬間、カギのかかる音とともに空気が変わった。


「華凛」


 僕は彼女の名前を呼びながら、そっと手をとった。彼女の瞳が僕を見上げる。期待と緊張が入り混じった表情に、再び胸が高鳴る。


 ゆっくりと彼女を抱き寄せ、唇を重ねる。柔らかな感触に、全身の感覚が研ぎ澄まされていくようだ。


 華凛の体が、僕の腕の中で小さく震える。その反応に、さらに情熱が掻き立てられる。


「大丈夫?」


 華凛は小さく頷いた。


 軽い口付けを何度も重ねながら、僕の両手は華凛のワンピースのボタンを外していく。いくつか外したところで、ゆっくりとワンピースを脱がす。肩が露わになったところで手を離すと、重力に従ってワンピースが床に落ちる。


「ぁ……」


 ワンピースを脱がした華凛が身につけているのは、深みのある赤色の下着。上下で統一された下着は、艶やかなサテン生地に薔薇と蝶がモチーフになっているレースがあしらわれている。


 ブラジャーは、胸の中央にある黒のリボンがアクセントになっている。いつもよりサイドラインがすっきりとしており、ただでさえ大きい胸がさらにボリュームを主張している。Gカップと聞いているが、それよりも1つも2つもサイズ上がったように見える。カップの上部とサイドが薄手のレースで透け気味になっているのも、華凛の素晴らしい胸をアピールしているようだ。


 パンツに目を向けると、横の部分は紐にしか見えない。サテン生地よりもレースのほうが多く使われているようで、ほとんど透けている。前側がこんなに透けているのなら、お尻側はレースしかないというのが容易に想像がつく。


 今日はさらに同系統のガーターベルトもつけてきてくれていた。ガーターベルトが止めているストッキングは透けており、華凛の脚線美を一層際立たせている。


「今日の下着もかわいいね。華凛にとっても似合ってるよ」


「っ……恥ずかしいからあんまり見ないで」


 胸を持ち上げるように自らを抱きしめ、恥ずかしそうに目を伏せる華凛。そのかわいらしさに、理性が崩されていくのを感じる。


 彼女の背中に両手を回して抱き寄せると、耳元に口を寄せ、舌先を優しく這わせる。彼女の吐息、体の震え、時折溢れる小さな声。そのすべてを感じながら、ブラジャーのホックを外す。


「あっ……」


 華凛の耳元を舌と口で責めながら、ホックを外したブラジャーを脱がせる。ブラジャーをホテル備え付けの台の上におくと、次は華凛を後ろから抱きしめた。こちらはまだ服を着たままなのに、一方的に脱がしていくのは背徳感のようなものを感じる。


「勝巳さん……」


 後ろから抱きしめたまま、下から持ち上げるように華凛の胸に手を添える。両手にずっしりと感じる重量感に幸福感すら感じている。そのままゆっくりと胸を揉み始める。


「ああ……んっ」


 僕の手の動きに合わせて、自由自在に形を変える豊満な胸。以前、じっくりとほぐされるように揉まれるのが好きだと言っていた。その希望に合わせて、華凛の大きな双丘をじっくりともみほぐしていく。いつの間にか、大きくて柔らかな膨らみの頂は大きく自己主張をしていた。


「あ、か、勝巳さん……ね、待って。まだ、ダメ……んんっ!」


 僕は華凛に自らの頂が見えるよう動かすと、人差し指と親指でゆっくりと自己主張している部分をつまんでいく。それに気づいた華凛が制止を求めるが、僕はかまわずにつまむ。自己主張している部分が少し形を変える程度に力を込め、人差し指と親指の間で転がす。先ほどよりも華凛の口から声がもれる。つまんだまま少しだけひっぱったり、指の腹で胸の中に押し込むように押したりしつつ、華凛の首筋に顔をうずめる。首筋に口付けし、跡がつかない程度の強さで吸う。腕の中で小さく震える華凛に、征服欲が満たされていくのだ。


「あ、ああ……ダメ、ダメなの……勝巳、さん……ああっ!」


 胸と首、耳を責めること数分。華凛の体が弓なりに反ったあと、小刻みに震える。足の力が入らないようで崩れ落ちそうになった華凛を後ろから抱きしめたまましっかりと支える。


「ベッド、行く?」


「は、はい……」


 力なく頷く華凛を横抱きに持ち上げる。いわゆるお姫様だっこという状態だ。その状態でベッドまで運ぶと、優しく華凛を下ろす。先ほどよりも荒くなった息を隠すように大きく息を吸っている華凛を見ると、笑いが込み上げてくる。

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