第24話 素人尾行
「あ……」
突然立ち上がって叫んだ僕に、店中の人の視線が突き刺さる。男を見つけた興奮は一瞬で冷め、慌てて店を後にする。
外に出ると、真央と男が連れ立って歩く背中が見える。周りの人たちに紛れるように2人の後を追う。
近づきすぎると振り返られたときにバレるかもしれない。2人が信号待ちするたびに道の角を曲がって視界に入らないよう気をつける。
「……もしかして、仕事?」
2人の迷いのない足取りに、逢瀬ではなく仕事なのかという想像がよぎる。仕事であれば、今日は外れだったのかもしれないと不安になる。
駅に着き、電車に乗った2人を別の車両から観察する。話しているようだが、仕事か逢瀬かもわからない。
外れの日だったかと諦めかけたとき、2人は電車を降りていった。僕も慌てて電車を降りる。そこは、ラブホテル街として有名な駅だった。
「ここで、仕事?」
不安半分疑念半分といった気持ちで2人の後を追う。東口で出ればラブホテル街。西口で出れば繁華街。どちらに出るかで、ここで降りた目的が見えてくる。
「……ひがし、か」
改札を出て、東口へと歩いていく2人の背中。会社を出てから駅まで歩いていたときよりも距離が近い気がする。
定時前に会社を出て不倫をしているとは思いたくない。とはいえ、病欠と偽って妻の尾行をしている僕も似たようなものか。
離れたところから2人の背中を見ていると、とある建物の中に入っていった。足早に2人が入った建物に近づく。
「ああ、やっぱりか」
建物の前に置かれた看板には休憩の文字。不安と疑念では、疑念が的中。そこはラブホテルだった。
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