第23話 素人の尾行と張り込み
2週間弱の出張を終え、家に帰ってきた。出張に行く前と同じ態度をとるよう気をつけていたが、ちゃんと誤魔化せたといいんだけど。
そして、今日は出張から帰ってきて最初の火曜日。自分の職場には急な体調不良と連絡し、1日休みをとった。これで今日は自由に動ける。
普段、仕事に行くときと同じ時間に家を出た。しかし、駅には向かわず、通勤経路から離れたところになる公園の公衆トイレに向かう。
公衆トイレの誰でもトイレに入ると、用意してもらった私服に着替える。黒ぶちの伊達メガネをかけたら準備万端。真央と鉢合わせてしまっては、計画が頓挫してしまう。
「そろそろ家を出る時間だったよな」
スマホの時計を見てから、マンションの入り口に視線を戻す。行動パターンから、そろそろ真央が家を出る時間だ。
外に出てからの真央の動きはわからない。距離をあけ、真央の視界に入らないよう気をつけて尾行する。真央が電車に乗ったので、僕も電車に乗る。
10両に近い数の車両がつながっているとはいえ、近づきすぎるとすると目立う。遠すぎると真央が電車を降りることに気づかない。なかなか難しいことを要求されている気がする。
「あれ、ここって真央の職場の最寄駅じゃなかったっけ?」
過去に何度か通った橋を見て、今何しているかを思い出す。
「うーん、真央の職場に来ちゃったな。火曜日は仕事してないと思ってたんだけど、仕事してるのか?」
ビルの入り口が見えるけど、入り口からは見えづらい位置に立つ。しばらく待ってみたが、真央は出てこないようだ。
「とりあえず入り口が見えて、待機できるところを探さないと」
僕は人の流れを邪魔しないよう人の間を縫って移動する。
「お、ここにしよう。入り口見えるし、ビルからは見えづらいだろうし」
道路をはさんで斜向かいに立つビルの1階と2階に喫茶店を発見。時折、真央がビルの入り口から出てこないことを確かめながら喫茶店に入る。
窓に面した席に座ると、ビルの入り口が見えることを確かめる。
「よし、いいところ見っけた。ここで真央が出てくるまで待とう」
そのまましばらくビルの入り口を見ていると、早めのお昼休みになったと思われる人たちがビルから出てくる。その人の流れに、真央はいた。同僚と思しき2人の女性と、3人で連れ立ってビルから出てきたのだ。朝と違い、カバンを持っていなかったので、昼食を食べたら戻るだろう。と、思っていると、真央たち3人組が帰ってきた。
またしばらくした夕方、定時よりは少し早い時間に、真央はビルから出てきた。朝と同じカバンを持っている。
「普通に仕ご……」
今日は仕事なのかと思っているも、真央を追いかけるように出てくる人影。ビルに夕陽が反射して顔が見えづらいが、真央の横に並び、肩を叩いた瞬間、人影の顔が見える。
「みぃつぅけぇたあああぁぁぁ!!!」
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