第21話 お前は誰だ?
なんとか仕事を終え、出張先のホテルに戻る。明日は10時にチェックアウトして、2件目のお客さん先に移動することになっている。そのため、今回の出張でこのホテルに泊まるのも今日が最後。
「買いすぎたかも。ま、呑まなきゃやってられないしな」
帰りがけに近くのコンビニで買ってきたお酒の缶を備え付けの冷蔵庫に入れる。備え付けの冷蔵庫の中がいっぱいになる。
すぐさま冷蔵庫から1缶取り出してプルタブを開ける。一気に半分ほど胃の中に流し込んだ。
「ふぅ、ぜんぜん酔える気がしないな」
ホテルの部屋に置いておいたカバンの中から私物のノートパソコンを取り出す。備え付けのテーブルの上に置き、電源ケーブルをつないでから起動する。
起動を待つ間に、1缶飲み切ってしまった。冷蔵庫か
2缶目を取り回したところで、ノートパソコンにはログオン画面が表示される。
パスワードを入力し、ノートパソコンのOSへのログオンに成功した。
「隠しカメラの録画ファイルを保存してるクラウドドライブに入って、と。よしよし、ぶっつけ本番だけど、ちゃんと撮れてるな」
酒の缶を片手に、録画された映像を確認していく。
まずソファに座り、キスをしたり服の上から体をまさぐったり、イチャついている。
先ほどリアルタイムで見たときはスマホを壊すほどの衝撃だった。しかし、今見るとショックではあるが、ノートパソコンを壊したくなるような衝撃はない。見慣れたのだろうか。
しばらくして、真央が男の手を優しく外して立ち上がる。男に待つよう声をかけ、キッチンの方へと歩いていった。
1人ソファに残る男の顔を見る。歳は40代から50代くらいだろうか。僕よりも年上に見える。男はソファからキッチンの方を見ている。
キッチンのカメラの録画を見ると、真央が料理の仕上げをしていた。オーブンレンジから取り出しているのはグラタンだろうか。昼からしっかりと作っているんだな、と何故か感心してしまった。
「ダイニングで向かい合って食事、か」
罠を張ったのはこちらとはいえ、のうのうと楽しんでいる姿を見ると少しずつ怒りが蓄積されていくような気がする。
食事を終えた2人は、再びソファに座った。今度は真央が男の足をまたがるように座り、2人は向き合っている。再び男の手が真央の体をまさぐり始める。今度は、真央が少しずつ服を脱ぎ始めた。そして、パンツだけになると、男の服を脱がし始めたようだ。
「ソファもう座りたくないな……」
見知らぬ男がパンツだけで座っている姿を見て、ソファが汚らしいものに見えてきてしまった。2人は下着だけになると、立ち上がって移動する。
「……マジか」
2人は寝室のベッドの上にいたのだ。寝室の録画に、ばっちりと2人が合体した姿が収められている。これで、罠を仕掛けた目的の1つはこれで達成された。
「お前、誰だよ」
5缶目を飲みながら、映像の中で妻と絡み合う男の顔を見つめる。
「お前は誰だ?」
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