最新のレストラン
「わたくしどものレストランは、最新式でありましテ」
森の小道を一緒に歩きながら、変な癖のある話し方でおおぎつねが話し出す。しっかり着いて来ているかと、私の顔をチラリと確認しつつ歩みを進める。
「この森の他のお店ではどこも、きのみなんかをみちしるべにするのでス。ですが、当店はなにせ最新式ですかラ。ほら、足元を見てください、しろくてまあるいものが道に沿ってあるでしょウ」
確かに、足元には点々としろくてまあるい何かがある。なんだろう、とりあえず踏まないように注意する。またきつねはこちらの様子をチラリと見た。相槌も何も打たないでいるせいか、ちゃんと聴いているのか心配しているようだった。
「これはですね、タマゴタケというのです。どんどん進んでいくにつれて、ほら、あかくてうつくしいきのこが顔を出すでしょウ。この美しさ、あなた様ならきっとお分かりになるはずでス」
私が不思議そうにそのみちしるべを見ていることに気づいたのか、説明を続けた。そしてくるりとこちらを振り向き、ふわふわとしっぽを揺らしながら目を細めた。残念ながら、私には木の実とタマゴタケとの間に胸を張れるほどの大きな差があるようには思えなかった。
そこからしばらくタマゴタケを辿ると、赤レンガを使った洋風の建物に着いた。きつねがまた目を細めて尻尾を揺らしながら、私の手を引いてエスコートした。まるで一国のお姫様にでもなったような気分のまま、広い個室に通された。
個室の中には大きな窓が付いていて、外に広がる森がいっぱいに見える。レストランだからか、開けることはできないようだった。また、中に入ってみて気づいたが、入って来た扉とは別にもう一つ扉があった。
出された料理は、見たこともないような食材も入っていたが、どれも美味しいものばかりで驚いた。シェフのおおねこはもともと人間に飼われていたらしく、人の料理の味を知っているからだと説明を受けた。
最後はたまごスープだった。温かくて、美味しいものをたくさん食べた満足感からか途端に眠くなってしまった。うとうとしていると、いつからか隣に立っていたきつねが、入って来た扉とは違う方へと手を引いてエスコートしてくれた。
そこにはふかふかとした、まるでおおきなねこのようなベッドが置いてあった。わたしはそこにゆっくりとたおれこんだ。ああ、ねむい。もう目をあけることもできない。
——よかっタ。幸せそうな顔をしていますよ、シェフ
——ああ、いい食材にストレスは大敵だからにゃあ
——ここいらでは、人間は珍しいですからネ
意識が途切れる直前、きつねと誰かの話し声が聞こえた。
これが夢であることを祈りつつ、穏やかな眠りに落ちた。
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