嫌な

落ちている。数秒で地面に着くと思う。

最後に何を考えようか迷っていたけど、結局最後は何を考えるかについて考えている。


こういう場合の後処理は大変らしくて申し訳ないな。でも最後だしいいや。人生で一回くらい盛大に人に迷惑かけてみたかったんだよなぁ


昔観たアニメにリプレイって言うと数秒前に戻るやつあったよな、リプレイ、怖かったなぁ。今のこの状況似てるな。リプレイ、リプレイ……。

そういえば、家を出る時に電気を消したっけ。

思い出せないな、そもそも家を出た記憶すらない。



———おかしいな。そう思うと、一体自分がどこから落ちているのか、全く分からないことに気付いてしまった。














 目が覚めた。まだ暗い、六時十三分。アラームまであと十五分以上はあったのに。


 ここしばらく、ずっとこんな調子だ。アラームの前に起きるなんてもうお年寄りじゃん、と友人に言われたことを思い出す。

 二度寝もできず、ただ天井を見つめてぼーっとしていると、アラーム音とともに携帯が震えた。

 カーテンの隙間から見える空は、もう暗くはなかった。


 今日も七時には家を出ないと、集合時間に間に合わない。まぁ時間通りに着いたところで、本当に時間通りに来るのは全体の半分以下だ。こっちがわざわざ時間を守ったところで意味がない。きっと時間に近づくにつれ、謝罪の言葉と一緒に、どれだけ遅れるだの、その理由はこれで……といった内容のメッセージが送られてくるであろうグループチャットを開き、時間と集合場所の最終確認をして外へ出た。今日はいい天気だ。


 冷たい空気を吸いながら空を見上げると、眩しくて目の奥がキリキリと痛んだ。内容はよく思い出せないが、今日は嫌な夢を見ていた気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る