第13話 何じゃ、ありゃあ? でも・・・
「ところで、新大阪ホテルって、そんなに、敷居高いものですかね?」
「そこまでは言わんが、やっぱりナ、ホテルともなれば、信用問題あるから、如何に食堂車の大衆相手といえども、変なものは出せんのや。まあ言うなら、ホテルの「広告塔」みたいなものよ、あの手の業者にとっての列車食堂、言うのは」
「さよですか。しかし、この(鉄道)ピクトリアルの記事書いた人、ええ御身分ですな」
「まあな。今日先程、喫茶店で読ませてもらったが、何じゃありゃあ(苦笑)」
「そう言いながらも、私ら、同じことやろうとシテマスヤンか」
「それもそや。ドナイシヨ? 夕食の時間帯になったら混むから、早めに、新大阪ホテルの4号車のほうも、行ってみないかね。ここは二等車、ちごた、今や一等車やからな、通り抜け云々で睨まれることもあるまい」
「ほな、ぼちぼち、参りまっか」
というわけで、わしら、そうじゃ、食事済ませてちょっと休んで、また、寿司屋に行くことになってモタ。
というか初めからそれ目的やったというのは、公然の秘密や(苦笑)。
今度は、後ろに向かって1両超えて、4号車ね。
今でいう普通車を一切通らず、グリーン車ばかりを通って、再びビュフェや。
それなりの乗車率やったけど、あえて向うのビュフェになんて人は、私ら以外はいなかった。私が見ていた範囲の話では、あるけどな。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
白ワインが、岡山弁で言うところの「みてた」状態になった。
これは「満杯になった」ことを意味するようであるが、実は逆説的な言葉であって、もともと入っていたものがすべて使われるなどして「空(から)」になった状態のことを言う。
「白がミテマシタなぁ・・・。それじゃ、今度は、赤、行きますか」
岡原名誉教授が、どこかで聞いて覚えた岡山弁を披露する。
「確かに、ミテマシタな。折角です、赤、参りましょう」
元職業軍人の山藤氏が年長の教授の弁に同調する。彼は岡山出身なのでこの言葉の意味は幼少期よりわかっている。
最年少の堀田教授が気を利かせ、ウエイターを呼んだ。
最年長の名誉教授が、メニュー中では中程度の価格帯のフランス産ワインと、赤ワインに合う料理をいくつか注文した。
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