第9話 笑いは、更なる笑いを誘発した。

 そのおっさんが調理室側から客室に戻るまで少し間をおいてから、私らも、席に行くことにした。

 そりゃそうでしょ。

 第一、あんなおっさんと同列同類その一味と見られてはねぇ、いくら三等車の客とは言ってもなぁ、恥ずかしい限りやで。


 ともあれ、列車が淀川を渡り切って大阪駅に着く前に、何とか会計を終わらせて座席に戻った次第ね。何といっても大阪からは、神戸や三ノ宮の比にならん程、お客が乗ってくるからな。

 

 その日はそんなに混雑してなかったと思う。

 あとは30分少々、客席で過ごして、京都まで乗った。

 菊政君はそのまま東京に行くから、彼を見送って、あとは、駅前でたまたまいた知合いの帝大生と一緒にタクシーに乗合せて、大学まで乗り付けた。


 そのときの経験やけど、菊政君の酒蔵会社の社内報に原稿を書いて載せてもらって、お陰様で好評だった。

 彼のお父さん、げらげら笑いながら読まれたそうな。

 菊政君も、鉄研の会誌にこの食堂車のルポルタージュを書いて載せて、好評を得ておられたな。

 今でも、彼と会った時にはその時の話が出ること、あるくらいだからねえ。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 ワインのボトルも半分を割ってきた。つまみも、幾分減っている。

「さあさあ、諸君、まあ飲みたまえ」

 岡原名誉教授は二人のグラスにワインを注ぎ、さらに、自分にも注ぐ。

 その注いだワインを半分ほど飲み、チェイサーの水を飲む。

 向いの元陸軍将校と元帝大生は、ワインを飲みながら残ったチーズとクラッカーをつまみつつ、次の話を心待ちにしている模様である。


 この調子なら、次は何の話になるのだろうか?

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