第5話 謎のオカユ?! オートミールとウスターソース

 天下の特別急行列車の洋食堂車ともあろう場所で、ネエチャンはなかろう。

 このおっさん何考えてはるのやと思ったけど、まあ、言うのも難なので、ぼくらは黙って食事を待っておった。で、おっさんのほうにも、例によっておねえさん、恭しく食器を並べておられたわ。

 あんなもん「おっさん、ちょっと待っとれ」でホイホイ、くらいでちょうどよかろうと言いたいところやけど、食堂側がそれやっちゃあ終りやカラなぁ(苦笑)。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 まず最初は、オートミールや。

 これ、諸君も御存知と思われるが、ホットのミルクと粉砂糖を入れて食べるの。

 温めたミルクの匂いと甘みが食欲を増すのね。

 これで、小腹プラスアルファくらい満たせる。

 

 で、私らの前の、かのおっさんや。

 別にグラスで提供されておるにもかかわらず、この御仁のっけから、フィンガーボウルの水を大盃を飲む要領でもって、それこそ相撲取りが「ごっつぁんです」とばかりに酒を飲むのがありましょう。

 あんな調子で、ボウルの中の水を、一気に飲み干しよった。


 わしら、何か嫌な予感がしたなぁ(苦笑)。その期待、最後まで裏切られることなかったのがこの話のオチやけど、まあ、ぼちぼち話そう。


 おっさんのほうにも、ミルクと粉砂糖、それにオートミールが来たわ。

 よほど腹減っておられたのか、そのオートミールにミルクと粉砂糖だけじゃ飽き足らなかったのか、あるいは甘いものが得意じゃない酒飲みだったのか。

 ミルクと砂糖とオートミールをスプーンでガサガサ、よく言えば豪快に(苦笑)かき混ぜて一口食べて、なんか、渋そうな顔しておいでやったな。

 問題は、そこからや。

 おっさん、テーブル上のウスターソース取って、オートミールの上にさらにぶっかけてまた一丁かき混ぜて、スプーン片手に皿を左手に持って、がつがつとお召上りときたものよ。


 最後は皿こそなめなんだが、食べ終わるや否や、ウエイターのおにいさんを見つけて、呼び鈴代りにスプーンでチーンと皿をひと叩きして、こうよ。


「おいアンちゃん、この謎のオカユで終りのこれっきりかよ?」

 呆れるのも起るのも笑うのも通り越して、ちょっと気の毒やったな。

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