第4話 変なおじさん、登場!
いざ乗車ということで、列車が止まるや否や、ドア扉を開けて車内に突入しまして、その勢いのまま、幌を伝って調理室側の通路を通って、食堂に飛び込むように入りました。
朝の6時過ぎですから、たいして予約も入っておりませんようで、ま、大阪あたりまでには出ようってことですな。
私と菊政君は、真ん中あたりの2人掛けの席に案内されました。
メニューなんか見るまでもありまへん。早速、洋定食を頼みました。
かねて時刻表で、洋定食は75銭と存じていますけど、頼んでから、折角来たのならメニューも見なぁあかんわということで、彼と一緒に「MENU」と書かれた品書きをじっくりと眺めてみました。
見るのはただでしょ、見とかナ損や。
ただほど安いものはオマヘンでぇ~(苦笑)。
そうこうしておるうちに、列車は元町をするりと交わして、三ノ宮に到着です。
ここでまた、何人か客が乗ってきたみたいや。
ま、神戸あたりから東京まで、当時はほぼ1日がかり。
今みたいに、新大阪から3時間少々、あとは電車で移動して4時間もあれば行けるような、そんな時代やない。シャアないでしょう。
ほどなく、女給と申しますか、ウエイトレスのおねえさんが、約2名の私ら背伸びしまくった大学生のテーブルに、洋食用のフォークやナイフやスプーンをもってきて、世にも慇懃丁寧に御食事の準備ですわ。
せや。今時のホテルでもフィンガーボウルなんて持ってくるところはそうないけど、あの時は、私ら2人分ということで、2つ、来ましたぞ。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
それでな、三ノ宮を過ぎたあたりで、ちょっと、事件が起きたのね。
ネクタイもせんと麻の上着と開襟シャツの男性客と言えば聞こえはよろしいが、ええ年のおっさん、30代後半くらいの人が一人で食堂に来られた。この人も、調理室側からやったな。それで、開口一番、地声の大きさをしっかり御披露なさってくれよった。
「おー! そこのベッピンなネエチャン! 定食やぁ、定食くれへん?」
って、近くのウエイトレスに声かけて、そのままぼくらの前の2人掛けの席に座られた。
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