第31話 御手洗花子、イケメンに場所がバレる
もう何時間、経過しただろうか。私はまだ会社の便器に、お尻がはまって抜けないでいる。先ほど、ちょっと仮眠していたけれど。
そして、スマホにはメッセージがたくさん来ていた。私が通話に出ないものだから、彼はひたすら送信し続けている。既読にならないよう注意しながら、一応、内容は確認していた。
あるメッセージを見て、愕然となった。私が会社にいることがバレたのだ。しかも今、こっちへ向かっているらしい。どうしてここが分かったのか。
詳細を知ろうと、つい、本文を見てしまった。
佐村井武士は、走るタクシーの後部座席にいた。奇しくも、運転手はさっき乗せてもらった人物と同じだった。
イヤホンをしながら、スマホでネットテレビを見ていた。画面にはテレビショッピングが流れており、女性司会者が喋っている。
「これからは男女平等の時代。小便小僧があるのに、女性のがないのはおかしいですからね」
メッセージにやっと既読が付いた。佐村井武士は今、彼女のいるところに向かっていた。彼女のスマホの中に、位置情報共有アプリが入っており、どこにいるのか一目瞭然なのだ。
これまでは彼女を信用して、一度も使ったことはなかったのだが、こうなったら使うしかない。口を濁していただけに怪しい。本当に残業しているのか。それとも別のことをしているのか。とにかく会わなければいけない……。
私はメッセージを返信できずにいた。彼が来る、彼が来る、彼が来る。瞳からはポロポロと涙があふれ出ていた。
どうして、私だけがこんな目に遭うのだろう。そういえば昔からいつも不幸を背負ってきた。思えば高校一年の夏、初めてアレを体験した時からだった。
私はトイレの中で、遠くを見つめた……。
(続く)
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