第27話 川屋勉、我が家で若い女が放尿中
やっと我がマンションにたどり着いた俺は、エレベーターの中で、ハッとした。自宅の鍵がない。水浸しとなって捨ててきた上着のポケットの中だ。
共有廊下をやってきて、ドアの前に立つ。みんな、もう眠ってしまっているだろうな。女房も小学生の息子たちも。
ドアチャイムを鳴らす前に、ためしにドアの取っ手を握ってみた。鍵がかかっていない。室内はまだ明るかった。
急いでトイレに駆け込んだ。絶叫が響き渡る。若い女が便器に腰掛けていた。
俺はびっくりして、廊下に尻もちをついた。中年の男女が奥から何ごとかと現れた。
「きさま、何やってる!」
「あなたたちこそ、誰ですか! 人ン家に勝手に上がって、いったい……」
俺の問いかけに、中年男がつかみかかってきた。
「それはこっちのセリフだ! ふざけるのもいい加減にしろ! 警察、呼べ!」
中年女が俺の顔を覗き込んできた。
「もしかして、三階の川屋さんのご主人じゃありませんか?」
「だから、この三〇二号室が私のウチです!」
「三〇二号室ならこの真下だ」
俺は間違えて、四階で降りてしまったらしい。
それにしても不用心だ。鍵をかけておけよ、玄関もトイレも。
(続く)
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