第23話 ニュース速報と便器投げと古代ローマ
テレビの映像がスタジオに戻り、ニュースキャスターが緊迫した表情で話し始める。
「たった今、入ったニュースです。つい先ほどの午後9時頃、都内のコンビニで強盗事件が発生しました。まずはその時の防犯カメラの映像がありますので、ご覧ください」
防犯カメラの映像が映し出される。カッターナイフ片手にレジに迫っていく男が映っている。さらに、刑事が拳銃を構えると、人質に店の外へ出ていく映像も。人質……川屋勉である。
「現在、犯人は都内を逃走中とのことで、警察が行方を追っているとのことです。さて、CMの後は俵投げならぬ便器投げ競技会の模様をお送りします」
競技会の映像の一部が映し出され、男たちが砲丸、円盤、ハンマー投げのごとく、思い切り便器を放り投げている。
場面は変わり、ここは古代ローマの公衆トイレ。サウナ風の一室で、半裸のローマ人たちが穴の開いた石のベンチに腰掛けている。
謎のナレーションが入る。
「この穴の下は水が流れているので、汚物は自然に流れていくのです。つまり古代ローマの時代から、水洗トイレはあったのです」
外国人に交じって、石のベンチに腰掛ける川屋勉。向かいの席では、あのタクシーの運転手も用を足している。
「しかし、ローマ以外のヨーロッパ各国では普及されず、十九世紀末まではおもに壷を使用し、道端に捨てていました。かのベルサイユ宮殿でも、庭のいたる所に奮尿がまかれていたというのです。その点、日本は肥料として利用していたので、都市は比較的清潔を保っておりました」
(続く)
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