第22話 衝撃レポート、新種ドラッグの正体
テレビの画面に、ニュースキャスターがカメラ目線で話している。
「次は海外からの映像です。今、ロンドンでは新種のドラッグが若者たちのあいだで大流行しているそうです。しかも、体には一切、無害だというのです。その麻薬とは、いったい、どんなものなのでしょうか?」
ロンドンの映像に切り替わる。現地特派員が街角に立ち、報告している。
「ドラッグの名前は、ずばり『ナチュラル』。さっそく、街の人に聞いてみましょう」
路上にたむろする若者たちが、吹き替えで次々とインタビューに応えていく。
「ええ、知っています。一度、試したことがあるんです。いまだにあの感覚は忘れられませんよ」
「初めはものすごく抵抗があったんです。でも、今ではすっかり病みつきで、あれなしでは生きていけませんね」
「今まで、いろんなヤクをやってきたけど、ナチュラルが一番効くね。合法だし、金はかからないし、何よりヘルシーってことが最大の魅力だよ」
場面が変わり、ある男に付いていく特派員。
「どうやら実際に体験させてもらうことになりました。非常に緊張しています」
ボロアパートの一室。数人の怪しげな男たちがいる。
「今、彼らのうちの一人がバスルームにこもっています。薬の調合でもしているのでしょうか?」
男が特派員にストローを差し出す。
「これで鼻から吸うそうです。おっ、ようやく来ました。ナチュラルの登場です」
若者がある物体を皿に乗せて持ってくる。
「ちょ、ちょっと待ってください! これは……」
その物体はモザイクがかかっていて、何だか分からない。一斉にストローで吸い始める男たち。
「ご覧ください! 彼らが夢中になって吸い込んでいるものは……言ってよいのでしょうか? 放送可能なのでしょうか!」
次々とラリッていく男たち。特派員にも無理矢理、勧めてくる。
「い、いえ、私は……」
「遠慮しなくていい。暖かいうちが効き目、抜群なんだ」
「でも、これは人間の……そうでしょう? そうなんでしょう?」
「初めは牛や馬のでやっていたんだけどよ。やっぱり人間のが最高だよ。さあ、一緒にブッ飛ぼうぜ!」
男たちにがっちり押さえ込まれ、強引にストローで吸わされる特派員。必死に抵抗するが、次第に体の力が抜け、虚ろな目で自ら進んで吸い始める。
「さあ、皆さんも今日からご家庭でお試しを! 以上、ロンドンからでした!」
(続く)
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