第18話 御手洗花子と緊急停止

 寒い。やはり下半身がすっぽんぽんだからか、全身が冷えてきた。

 もうすぐ夏も終わり、ひと肌が恋しくなる季節が来る。

 いまだに暖房便座のないところがある。今、私のお尻がはまって抜けない便器のように。そういう便座は真冬だと、恐る恐る腰かけるのだけれども、あの時のヒヤッとする感触が大嫌いだ。逆に、前に座った人のぬくもりがあると、とてもホッとする。

 でも、現在の私の状況、こういう極限状態に陥っても、トイレでよかったと心底思う。したい時にできるから。

 それが例えば……会社のエレベーターの中で、同僚たちと一緒に乗っている時に緊急停止したら。

 恋人とスキー場に行って、二人でリフトに乗っている最中に緊急停止したら。

 恋人と一緒にジェットコースターに乗っていて、逆さまの状態で緊急停止したら。

 よくニュースなんかでやっているけれど、そんな時はどうしているのだろう。何時間も耐えられるのか。それともやっぱり、我慢できずに……。


                (続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る